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空間魔術師は一瞬で地の底まで逃げ出した  作者: 三毛猫ジョーラ
東の大陸編

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第56話 波状の攻撃


 其処彼処そこかしこから阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてきた。まるで獰猛な海魚が小魚を一気に呑み込むように、兵士達は成す術もなく獣王ヴリトラナの餌食となっていた。


「これはどういう事じゃ! ルバン!!」


 メラーの激しい叱責にルバンは顔を青褪めながら震えている。五人の呪術師達は我先にと逃げ惑っていた。その時、一旦砂海に潜っていたヴリトラナが突然メラー達の一団に向かって飛び掛かってきた。既に多く兵士達は逃げ出し王女を守る者など残っていない。メラー王女は腰を抜かし絶望した表情を浮かべていた。


 

不落の砂城(タックタルタン)!」


 座り込む王女の前にヒジャウが飛び出し土魔法を放った。巨大で分厚い砂の壁が地鳴りと共に砂海から突き出すと、勢いよく向かってきていたヴリトラナを弾き返しその行く手を阻んだ。


「ヒジャウ……なぜおまえが魔法を……?」


 へたり込んでいたメラーが唖然としながらヒジャウを仰ぎ見る。そんな彼女に一瞥いちべつもくれずにヒジャウは叫んだ。


「ディンディング! 姉上を避難させてくれ!」


「はっ! メラー王女、ご無礼お許しください!」


 ディングディングは王女を抱きかかえラクダの背に乗せると、大急ぎで禿山を駆け下りて行く。その後を追うようにルバン達も転がるようにして逃げて行った。



 砂海へと落ちたヴリトラナの巨体が再びその姿を覗かせた。再び飛び上がり襲い掛かろうというのか、砂海の砂がうねるように波打つと、砂煙を上げながらこちらへ向かって突進してきた。


「ちっ! まったく余計な事してくれる。行くぞ! ドゥーカ!」


 リリアイラの一声でドゥーカがヴリトラナの正面へ回り込むように移動した。宙に浮いたドゥーカの体に地響きのような爆音がビリビリと伝わる。


切り裂け(レータルカント)!」


 それを跳ね返すかのように空を引き裂く斬撃が獣王目掛け次々と放たれる。だがそれらは硬い外皮にことごとく弾かれ消散していった。


「なんて硬さだっ! 傷ひとつ負ってねぇ!」


 珍しくリリイアラが驚きの声を上げた。その速度は弱まる事なく、ヴリトラナは岸へと向かって突き進んだ。



「うちらに任せて~。行くよ、ヒジャウ」


 リリアイラの耳にボラタナの声が届いた。崖の上ではヒジャウが迫り来る敵を待ち受けるかのように立っていた。そして両手を前に突き出すとヴリトラナ目掛け魔法を放った。


巨象の大掴み(バラライガジャ)!」


 巨大な砂の鞭がヴリトラナの胴体へと巻き付く。一本、二本とその数は増え、やがて獣王の巨体を砂の中から引っ張り出した。ヴリトラナが藻掻くようにして空中で体をくねらせる。


「はっ! やるじゃねえか! おいジャイラン! あいつを吹っ飛ばせ!」


「無茶言いますね! ラウタン! 行きますよ!」


 砂海を滑るように走っていたパンバルが砂の大波を利用して大空へと舞い上がった。ラウタンはパンバルの背中の上で立ち上がると、片手に魔力を集中させ魔法を放った。


水竜の息吹(リダ・ラジャナガ)!!」


 渦を巻きながら一本の水流がラウタンの右手から噴出した。範囲を狭めた事でいつもよりも激しい勢いの水の龍がヴリトラナにぶつかる。それと同時に砂の鞭は消え去り、支えを失った獣王が遠くへと吹き飛ばされた。



 飛ばされた先にいたのは魔神ラクタパクシャだった。魔神は好機とばかりに魔法放つ。


angin(アンギン) nyala(ニャラ)


 魔神の羽ばたきと共に、砂海の上でひっくり返っていたヴリトラナの身体が瞬時に燃え上がる。炎の勢いを増加させようというのか、ガルルの群れから一斉に風魔法も放たれた。


「グガァァァーーー!!!」


 空を切り裂くような咆哮を上げる獣王ヴリトラナ。暴れ狂うように体を起こしながら再び砂海へと潜ろうと頭を下げた。


「加勢するようで癪だけど行くわよ! ラダカン!」


「やれやれ……損な役回りじゃわい」


 飛ばされた獣王の後を追尾していたアピが至近距離まで接近する。辺り一面に立ち込める炎の中で彼女は特大の魔法をぶっ放した。


爆ぜ咲く薔薇(マカルティバティバ)!!!」



 更なる業火がヴリトラナの身体を包み込んだ。天まで届かんばかりの火柱が砂海の真上にそびえ立った。







現在書き終えているのはこの回までとなります。

かなり前に書いた作品ですので、作者自身忘れてしまっている所が多々あります。おそらく続きを書くとすれば改訂版として1話目から書くことになるかと思います。評価ポイントが低いので続きが気になる方がいらっしゃるかどうかは微妙ですが……

ひとまず「空間魔術師は一瞬で地の底まで逃げ出した」を最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
古代インド風味で設定も独特、評価の件もあるのでしょうが続きを期待しています。
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