表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空間魔術師は一瞬で地の底まで逃げ出した  作者: 三毛猫ジョーラ
東の大陸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/61

第52話 土の精霊ボラタナ


 ドゥーカ達が美味しい夕餉ゆうげに舌鼓を打っていた頃、赤の宮殿と呼ばれる豪華絢爛な建物の一室では、第一王女のメラーの怒声が響き渡っていた。 


「どういう事じゃ! なぜ彼らはヒジャウのとこなんぞに行ったんじゃ!?」


「私共にはなんとも……」

 

 ずらりと整列した王女の家臣たちが平身頭低で立ち並び、最前列にいた筆頭家臣のバトーが冷や汗を垂らしていた。


「元はと言えばビルーの所為じゃ! あの馬鹿が我らに対抗などしよって!」


「まぁヒジャウ様の漁夫の利ってとこでしょうかねぇ。メラー様も一本取られましたな」


 そうほくそ笑んだのは第二家臣のルバンだった。メラーがむっとした表情で声の主を睨みつける。


「ふんっ! まあよい。どうせヒジャウの所じゃ碌なもてなしも出来まい。それよりルバン、あの件はどうなったのじゃ?」


「着々と。もう間もなく仕上がるかと……」


「ならばよい。はなからマジャラ・クジャハの出番はなかったということじゃな」


 メラー王女は不敵に笑い、その真っ赤に染めた唇を吊り上げた。



 


 一方緑の宮殿ではドゥーカ達が王子の執務室へと案内されていた。部屋の中では筆頭家臣のディンディングが大急ぎで椅子を並べていた。


 楕円形の細長いテーブルを囲むようにそれぞれが椅子に座る。ヒジャウはメシャムと呼ばれるパイプに火を点け煙をゆっくりとくゆらせた。


「まずは私の出自についてお話しましょう。すでに亡くなりましたが、私の母は国王の第三王妃でした。この宮殿も母からそのまま譲り受けたものです」


 どこか懐かしそうに目を細めながらヒジャウは微笑んだ。よく見ると部屋の中には女性用の鏡台や家具などが見受けられる。


「母は元々平民でした。王の城で働いているところを見初められ、側室に迎え入れられた。よくある話ですが、郷里には婚約者がいたそうです。きっとその人を愛していたんでしょうね。記憶の中の母はいつも寂しそうな顔をしていました」


 ドゥーカ達三人は王子の話に黙って耳を傾けていた。お腹がいっぱいになったからか、それとも王子の話に飽きたのか、クプクプはすでにアピの腕の中で眠りに落ちていた。


「おっと、話が逸れましたね。私は第三王妃の子。姉と兄はそれぞれ第一、第二王妃の子です。つまり私は王位継承権は一番低い。この国は女王も認められてますから。でももし、私の魔力が異常な程に高かったらどうでしょう?」


「王に推す声が高まるでしょうね」


 ドゥーカが王子の問い掛けに答えた。王子は軽く頷くと話を続けた。


「まさにそれを危惧したのが母でした。私の魔力が知れ渡れば他の王妃達に命を狙われる。そこで私が魔法を使わぬよう、小さい頃からお目付け役として仕えてきたのがそこにいるディンディングです」


 名前を出されディンディングがぺこりと頭を下げた。彼はどことなく照れたような顔をしていた。


「彼のお陰で私が間違って魔法を使っても誤魔化す事が出来た。私も彼と同じ土魔術師なので。けれど私が十歳の時、幸か不幸か精霊の護りが宿ってしまった。ある日私の前に同い年くらいの女の子が現れた。緑の髪に緑の目。最初は自分の妹かと思いましたよ」


「それが精霊ボラタナですか?」


 ドゥーカが尋ねると王子は再び頷いた。


「ええ。彼女が私の中に入った瞬間、凄まじい魔力が体から溢れ出した。ディンディングが慌てて土の結界を張りましたがあっさり壊れてしまいました。後は、みなさんが思い浮かべられる通りです。母は北の大陸から封印魔術師を数人呼び寄せ、ボラタナを封印させました」


「それで、どこに封印したんだ?」


 リリアイラが少し苛立った様子で言葉を発した。ドゥーカが代わりにそれを伝える。


「ボラタナはどこに封印されてるんですか?」


「こちらでございます」


 全員が声の方へと振り向くと、ディンディングがいつの間にか手にしていた王冠をテーブルの方へと運んできた。それを王子が受け取るとテーブルの上に置きながら言った。


「この王冠に飾り付けられているエメラルドの中に封印してます」


 精巧な研磨を施された美しいエメラルドがキラリと光る。装飾品としてもかなりの値打ちものだろう。


「わーじっくり見ると本当に綺麗ね」


 アピがその宝石を覗き込みながら目を輝かせた。その隣でドゥーカはセナンの翡翠色の瞳に似ているな、と密かに思っていた。すると王子が少し困った表情になりながら口を開いた。


「ただ封印を解く方法が分からないんです。封印を掛けた時、母は解く気がなかったんでしょう。解除の方法がどこにも残ってないんです」


「けっ! くだらん。こんなもの封印でもなんでもない」


 リリアイラはそう言うと、間髪入れずに宝石を指先で触れた。するとその宝石は砕け散り、パッとボラタナの姿が現れた。


「ほら起きろ! いつまで寝てんだ!」


 床に転がっていたボラタナをリリアイラが蹴り起こす。大きな欠伸と共にボラタナが上半身を起こした。


「ふぁ~だぁれ~? あっリリィじゃなーい。おはよー。ヒジャウもいるー久し振りー」


 突然姿を現したボラタナに王子は目を丸くしていた。その一方でリリアイラの声は聞こえても、ボラタナの姿が見えないドゥーカ達は、一体何が起きたのかと状況が掴めずにいた。


「おはよーじゃねぇ! おまえなんでずっと封印を解かずにいたんだ? こんなの簡単に解けるだろうが」


「えーだって私がいるとヒジャウが危ないって言うから。大きくなったら出てこようかなって」


「もう十分大きいだろが」


「ごめーん。寝過ごしちゃったね~」


 困惑して黙り込む人間達を余所に、目を覚ましたクプクプがボラタナに負けないくらいの大きな欠伸をしていた。




 第52話を読んで頂きありがとうございます。

だいぶ前に説明した設定なのでお忘れの方が多いと思いますので改めて補足を。

宿主は自分の守護精霊以外は認識できません。アピとラウタンはなぜかリリアイラの声を聞くことができます。姿は見れません。


 守護精霊同士は対の線を繋がないと会話できません。姿も見れません。対の線も一人の守護精霊としか繋げません。ただしリリアイラは全ての守護精霊と普通に会話もでき、姿も見る事ができます。対の線も全員と繋げれます。ちなみにクプクプも全ての精霊が見え、会話もできます。 

このややこしい設定をした事を作者はいまだに後悔しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ