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【書籍化】朱太后秘録〜お前を愛することはないと皇帝に宣言された妃が溺愛されるまで【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第四章:皇帝との邂逅。

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第38話:朱妃、反撃する。

 エンなる女官は拱手のまま跪き、袖が床に広がるようにして頭を垂れた。拝の形である。


朱妃しゅひ様、お許しください!」


「何を許さなくてはならないのかしら?」


 朱妃は空惚そらとぼけてみせた。自分でも性格の悪い言い方であると思わなくもないが、ここで許すと言うことはできない。朱妃は言葉上、彼女を責めていないためである。

 朱妃が讃え、彼女の上司にあたる蛾楊ガヨウがそれを受け入れたため、燕が許されるためには自ら罪を告白せねばならないのだ。

 果たして彼女はそれを告解し謝罪した。


「なるほど、なるほど」


 朱妃はそう言って靴を鳴らす。びくり、と燕の身体が揺れた。


「許しましょう。此度の件、本宮から特に罰を求めることはありません。ただし、二度目はないものと心得なさい」


「は、はいっ! 寛大なお言葉、感謝いたします!」


 そう言って額を床につける。


「宜しいのですか?」


 蛾楊が問い、朱妃は頷いた。


「貴方達が尚功局としての本分を果たしている限りはね」


 ––ふむ、甘いと言えば甘い。そうねえ。


免礼めんれい


 礼はもう良いというその言葉に燕が顔を上げ、ゆるゆると立ち上がる。朱妃は彼女の瞳をじっと覗き込んで言う。


「ねえ、燕」


「はい……」


「本宮に恥をかかせようとするその考え。誰にそそのかされましたか?」


 燕の顔から血の気が引き、色が失われた。


「そ、それだけは……」


 朱妃は笑みを浮かべる。その反応が答えのようなものである。


「まあ良いわ。次はありませんからね」


「は、はいっ」


 結局のところ引っ掛けの問いではある。つまり、燕が冷静に自分の考えでやったと言えばそれで終わりだったのだ。朱妃は尋問などする気がないので。

 しかし彼女は雰囲気に呑まれたか、怯えてしまった。それが釘を刺すことになるだろう。


 ただ、これから分かることがある。西八宮せいはっきゅうにいたような常在じょうざいなど下位の妃嬪の命令であれば、彼女はそこまで怯える必要はない。極端な話、朱妃の庇護下に寝返ることも可能なのだから。

 つまりは妃よりも上、貴妃きひか皇后か太皇太后たいこうたいごうの命であるか、あるいは職務上の関係性が強く逃れられぬ、女官達の上位からの命であるということだ。

 つまり尚功か尚宮ということになる。


 娥楊にちらりと視線をやる。


 ––彼女から敵意は感じないけど。


 朱妃に流れる巫覡ふげきの血は、相対するものの感情を読み取らせる。ただし、朱妃自身はそれを認識していないし、その技を磨いてもいない。

 自分では多少勘が良いかと思うこともある程度で、精度も低く、その直観に身を任せる事もなかった。


 改めて服を仕立てていく。


「何かお好みの色や石などはありますか?」


 燕は黙りこくってしまったため、他の、司珍や司綵の女官達が錦や玉を当てながら問い、朱妃は答える。


「肌の色が貴女達と違うから難しいでしょう」


 瓏帝国人の肌の色は黄色がかった白、薄橙うすだいだい色である。朱妃や羅羅などロプノール人の肌はそれよりも暗く、褐色に近い丁子ちょうじ色だ。

 似合う色合いも変わってくる。


「肌の色を白くする薬や白粉おしろいなどをお取り寄せされてはいかがでしょう?」


「皇帝陛下も好まれますよ?」


 彼女らはそう言うが、朱妃はその言葉になぜか危険を感じた。

 しばし考えて答える。


「本宮らの肌は日焼けにより色が黒くなっているのではないの。薬などで白くするのは難しいと思うわ」


 そう言いながら袖をめくって見せる。丁子色の肌が手の甲から二の腕、肘まで続いていた。


「たとえ白粉をはたくにしても、身体全部に使うわけにはいかないでしょう?」


「そう……ですわねえ」


「それにね。もし武甲ウージァ皇帝陛下が白い肌を好まれるのだとしたら、どうにもならないわよ」


「何がでしょうか?」


 女官らは首を傾げる。


「おそらくこの後宮の全ての后妃の方々より、光輝嬪こうきひんの肌が白いわ。今はまだ少し日に焼けているけど、来年の春先には雲の如き白さになるでしょう」


 西方人、それも北方の一族の血が入っていることが明らかな容姿である。彼女自身が馬上にあって草原を駆けていたため、日に焼けて肌が赤くなっているところもあるが、後宮にあって一冬を越せば間違いなく白さを取り戻すだろう。


 娥楊はうんうんと頷いた。なるほど、彼女は光輝嬪を目にしているようだ。

 彼女達が持ってきた布、昨日皇后殿下から賜った布、ロプノールからの進貢であった布を氏がこちらに回したもの。それら生地を広げながら話す。


「やはり、純白やそれに近い白は似合わないというか浮いてしまうわね」


「そうですね、商皇后殿下は白を好まれるのですが」


 丁子色の肌には同じ白でも生成きなりは似合うが、純白は少し浮いてしまう。だが、生成は染めを行えないほど下位の宦官たちの色であり、妃嬪の色に相応しくないらしい。


「青などの冷たい色も似合わないかしら」

「暖かい色の方が健康的に見えるかしら」

「はっきりした色がお似合いだけど、ちょっと秋色ではないわ」


 彼女たちが相談を続け、朱妃は言う。


「やはり、赤はいれて欲しいわ」


 ぴたりと彼女らの声が止まった。

ξ˚⊿˚)ξ【悲報】ストックなくなる。


だいたい2冊分の書籍化作業のせい。

少なくともひと段落つくまで更新は乱れるかと思います。申し訳ない……。

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『朱太后秘録①』


9月1日発売


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― 新着の感想 ―
[良い点] 書籍化作業を優先してください( ˘ω˘ ) (その隙に私も自作書くから)
[一言] 書籍化作業を優先してください( ˘ω˘ )
[一言] 寝返りをうたせられないほどの大物の仕掛け? 書籍化作業優先は当然なので無理のない形で再開してください。
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