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44.メイドと森の変態

 アマギが追放村に来てたから早くも四日が経過しました!

 四日の間でアマギはノームとコルル。それからダイクンとマデュラと先生から商品を仕入れました。

 そして商品を荷台に詰め込んだ彼は村人全員の見送りを受けて魔界に帰って行きました。

 こうして私はいつも通りの業務に戻り、屋敷の清掃を終わらせた頃。


「うむむ。旦那さまは山脈に行っちゃいましたし、地下通路の工事でも進めようかな?」


 ぶっちゃけやる事やった私は暇してました。

 村に行ってリオンとお喋りも良いですが、畑の手伝い終わりに毎日通ってますから流石にリオンも疲れちゃうかな。

 シュラウドはシュラウドでハヤテと空の散歩に出掛けちゃいましたし……というかシュラウドは鶏なのに大鷲に付いて行けるのが、もう鶏じゃないような気がします。

 何をするにしても部屋から出ない事には始まらないです。

 そうして部屋から出た瞬間……む? 何やら視線が……っ!?

 私は窓を開け、外に向かってナイフを三本投げた。


「うわっ!? ちょっと中を様子見したらナイフが額に刺さった!」


 ナイフを投げた先には一本のナイフが額に刺さった妖精の姿が有りました。

 投げた私が言うのも何ですが、額に刺さって大丈夫なのでしょうか?

 なんて思っていたら妖精は平気そうにナイフを抜き取りました。

 あっ、平気なんですか。そうですかぁ。


「覗き見なんてせずに玄関ホールから訪ねて来てくださいよ」


 私は心配と罪悪感を明後日の方向に投棄て、咎めると妖精は笑みを浮かべました。


「暇してるかなって来たんだけど」


「えぇ、夕飯前までは暇ですよ」


「なら森に遊びに来る? キミはよく森で果物やハチミツを持って帰ってるけど」


 暇を潰せる保証はないと言いたげな視線を向けてきました。

 折角の妖精からの誘い。これは無碍にする訳にはいきませんね。


「良いですよ。ユニコーンの角も欲しいですから」


「……最近、キミに会いたがるユニコーンが沢山増えて来てるよ」


 おや、私はユニコーンにモテモテですねぇ……微塵も嬉しくないですけど!

 なんて事を敢えて口に出さず、森に出掛ける事を決め、果物やら入れる籠を背負って行きました。


 ▽ ▽ ▽


 北方の寒冷地とは言え、春も深まり梅雨時期が近付くとなると森もだいぶ穏やかな気候になりました。

 季節の変わり目を肌で感じながら妖精と一緒に森の中を進みつつ、食べられるキノコと薬草を摘み取っていく。


「あとはリンゴとハチミツを持ち帰ってアップルパイにしても良さそうですね」


「キミって熱心だよね。メイドって楽しいの?」


 妖精が突然そんな事を聞いてくる。

 楽しかと言われると……。


「楽しいですよ! まあ、私の人生というのも有りますけどね」


 そもそもメイド以外の職業に就こうなんて今更思えないです。

 あと解雇されるなら責めてジークの幸せを見届けてからにしたいってのも有りますけどね。

 まあジークは既に私に胃袋を掴まれ、生活の大半も支えられている状態にありますから? 簡単に解雇なんてできないでしょう!


「今のキミは、凶悪犯が全て計画通りに進んだ時に浮かべる悪い顔してるよ」


「なんて人聞きが悪い事を言うんですかぁ!?」


 私が妖精に対して叫ぶ。

 そしてふと思った。


「そう言えば、妖精には固有名称が無いんですか?」


 個体ごとに見分けて呼ぶのは正直大変です。

  

「無いよ。ぼくらは産まれてずっと妖精さ、そもそもキミらのように名前を付ける概念が無いからね」


「うーむ。確かに名付けるのは人間の都合ですね」


 妙案かと一瞬だけ思いましたが、人間の都合を押し付けるのも悪いですね。

 不憫ですが仕方ないこと!

 なんて思いつつ、妖精を肩に乗せて森を進む。

 ついでに遭遇したユニコーンから角の少々……嘘です。十頭は少々じゃないですね。

 まあ、ユニコーンの角の頂いて目的のリンゴの木まで到着!


「今日も美味しそうなリンゴが成ってますねぇ」


「今日のリンゴはハチミツたっぷりで濃厚な甘味が詰まってたよ」


「ほほう! それは村の子供達のお土産にもなりますね!」


 っと、私が早速リンゴを摂るべく手を伸ばすと……足元にコツンっと何かを蹴る音がしました。

 何でしょうか? 気になって下を向くとそこに有ったのは……いっ!?


「生首っ!? 遂に森の熊さんが人を襲ってしまったんですかぁ?」


 額に傷の有る熊は私を見るなり、抱き着いて上下に振り回してきますからね。

 結果危ないですし、おまけに顔をぺろぺろと舐めてもきます。

 いつか私はがぶりと食べられちゃうじゃないかと心配。

 って! 今は首を……あれ? そういえば森にはデュラハンが生息してましたね。

 森に棲む幻想生物を思い出した私は、一瞬で冷静になる。

 そして改めて下を向いて気が付いた……なんか、コイツ目が血走ってね? なんか鼻息荒くない?

 

「首投げ遊びに興じればまさか、少女のスカートの中身を覗ける日が来るとは!!」


 あー、この首の位置からだとがっつり覗けちゃってますよね。

 って! 何を冷静になってるんですか私は! 

 私は不埒で変態生首を思い切り踏み付け、


「美少女のスカートを覗くなんてどんだ変態ですね! ここで頭を潰して差し上げましょう!」


「るぇ!?」


 足に力を込めて押し潰そうとすると、


「だ、ダメだって! そんな事をしたら変態の血やらでリンゴの木と大地が痛んじゃうよ!」


「!!??」


 デュラハンが何かを叫ぼうとしてますが、妖精の言う事も一理有りますね。

 だから私は踏み潰す事を諦めて足を退けてあげました。


「これに懲りたらもう覗きなんてしちゃダメですよ」


「許された?」


 別に許しちゃあいませんよ。

 スカート覗くのは絶対ダメ!

 私は近寄るデュラハンの胴体に視線を向け、


「身体の方が来ましたね。ささ、私の気が変わらない内に立ち去るといいですよ」


「どうせなら黒タイツ越しから見える紫をもう少しだけ拝み……っ!?」


 よーし! 変態は明日の空に向かってシュートぉぉぉ!!

 私はデュラハンの生首を山脈方面に問答無用の全力で蹴り飛ばしました!

 空に星となって消えた生首を見届けた私は、額の汗を拭いって。


「ふぅ、成敗!」


 満面の笑みを浮かべました!


「デュラハンは……まあ、自業自得だね。というか首を失って凄くおろおろしてるね」


 妖精に言われてデュラハンの身体の方に振り向くと、確かに挙動不審で慌てふためいてますね。

 でも私の知るところじゃあないです。

 それにもたもたしてるとハチミツに惹かれた熊が来ちゃいますね。


「摂る物は摂ったので私は帰りますよ」


「うん、ちょっとした事件も有ったけど今日は楽しかったよ……デュラハンはアレでも死なないんだよねぇ」


 えぇ〜成敗できないんですかぁ? いえ、元々首と身体が別れてますから死なないんでしょうか?

 それともアレですか? 変態は死なないってヤツですかね。

 まあ今日の所は忘れて、夕飯の用意と食後に出すアップルパイでも作りましょう。

 そう決めた私は妖精と別れ、その道中でばったり遭遇してしまった熊から屋敷まで逃げ帰るのでした!

 今度からは鑑定して判明した聖剣ディアウスを担いで来ましょうかね!!

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