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39.魔族と追放村

 午後14時。アマギを連れて村に到着すると巡回中のヴァンダムとコルルと早速遭遇しました。

 二人共頭に角を生やした私とアマギを見て心底驚いたような表情を浮かべ、


「ミルフィに角が!? 良い! 何だか小悪魔っ子みたいで可愛さ倍増じゃない!」


 なんてコルルが興奮した様子でそんな事を。

 というか驚いたのは私に角が似合うからですか? 隣のアマギは無視? 

 でも彼も彼でコルルの興奮振りに驚いてますし、結果的には良いのかなぁ。


「そちらの行商人は噂に聞く魔族と見受けるが、ワシが聞いた噂とはまた違った印象を受けるのう」


 ウェンダムが聞いた噂って一体なんでしょうか? 

 私が気になっているとアマギも気になっていたのか質問した。


「僕ら魔族はどのように噂で伝わっているのかな?」


「ワシが王都に居た頃に聞いた噂話しでは有るが、角と尻尾に鋭い牙と鋭利な爪。更に蝙蝠の翼を持つと」

 

 それは悪魔の類いじゃないの? 少なくとも私が見て来た魔族にそんな人は居なかった。

 というか魔族は角と尻尾が生えてますが、それ以外は人間と同じ容姿です。

 だから私が魔族なりきりセットで二年もバレなかった訳です。

 でも噂に関して魔族本人が聴いたらどう感じるのでしょうか? 私は気になってアマギに横目を向けると。


「……そんな風に伝わってたんだね。でも翼が有ると自由に飛べて楽しそうだね」


 彼は気にした様子も無く、楽しそうに微笑んでいました。

 

「ふーん、魔族もそんな風に笑えるのね。あれ? もしかしてこの村は初めて魔族と交流してる……?」


「人間との交流……確か魔王城の書庫の歴史書にも記載されてなかったと思います」


 魔族と人間の交流は追放村の村人が歴史ではじめて。事の重大性に気付いたコルルが、緊張から肩を強張せてウェンダムの背中に隠れた。


「……す、すごい経験をしてるのね」


「コルル殿。緊張するのも分かるがもう少ししゃきっとした方が良いぞ」


「ウェンダムの言うことも分かるけどぉ……ほら仕立屋の立場からして魔族が見たあたしの服は如何なのかなって」


 あぁ、コルルの心配も分かります。魔族にコルルが仕立てた衣服が受けるのか受けないのかは私も気になりますよ。


「そこはもっと自信を持って良いのだぞ? そなたが丹精込めた衣類は素晴らしい物だ。衣類に頓着が無いワシでも気に入っておるしな」


 おぉ! ここでウェンダムのベタ褒め! これには当人のコルルは顔から煙が出るほど真っ赤ですね!

 私がこのまま二人の距離が縮まれ! っと内心で応援してるとそっとアマギが、


「片方はほの字のようだね。けど彼が彼女を褒めるのも頷けるかな」


「ほほぅ? という事はアマギの眼から見てもコルルの衣服は素晴らしいと」


「えぇ、是非とも数着をディアボロ商会で扱いたい程にね。まぁ魔族向けに尻尾を通す穴が必要になるけど」


 私とアマギの話しを聞いていたコルルが一度一呼吸置いてから意を結したのか、アマギの前に立った。


「アマギと言ったかしら? 改めてあたしは【仕立屋コルル】の店主コルル。それでそっちの彼が自警団のウェンダムよ」


 改めて自己紹介を加えたコルルがアマギに握手を差し出しました。

 それにアマギは微笑んで応じ、続いてウェンダムとも握手を交わしました。


「それで貴方のディアボロ商会で私の商品を置いてくれるという話しだけど……生憎と多くの数は揃えられないわよ」


「おや? それまた如何して?」


「素材の量と人員が足りないのよ。あたし一人、一日で作れる衣類は八着が限界なの」


 コルル一人で一日八着の縫製……人員不足とは一体?

 いえ、素材不足は理解できますとも。


「ふむふむ。素材に関してはディアボロ商会と懇意にさせて頂いている商人を通じて提携できるけど……よっと!」


 彼は背負っていた荷物を下ろして中から縫製用と書かれた箱を取り出しました。

 アマギはコルルにそれを開けて見せると、一瞬でコルルの眼が輝きに満ち溢れっ!?

 

「これだけの量が有れば幾らでも作れるわね!」


「気に入って頂けて何より。ただ、僕は領主様から商売許可書を頂い無くて」


 アマギがそう言うとコルルは大きく肩を落としました。

 出鼻を挫くとはまさにこの事ですね!

 でもしょうがないですよ、この村の領主はジークですからね。


「こんな時にジークは出掛けてるのよねぇ……そういえばミルフィが留守番なんて珍しいわね」


 うーん? 言われてみればそうかも。


「ウルスラグナ団の指導時間と重なってましたからね。こればかりは村のためですから仕方ないことです」


「寂しいとかは?」


「えっ? 無いですよ」


 主人不在の屋敷で寂しいとか。私はうさぎじゃないんですよ。


「即答ね。……まあ良いわ! 交渉やらはジークが帰って来てからってことね!」


「えぇ、無事に許可を得しだい改めて伺うよ」


「じゃああたしとウェンダムは二人で! 見廻りが有るから!」


 おやおや、そんなに強調しなくとも邪魔なんてしませんよ。 

 そんな事を内心で浮かべ、ウェンダムを引っ張って行くコルルに生暖かい視線を送りしました。

 うん! 早く結婚しちゃえば良いのに! その時は私と先生とミントでウェディングケーキを作りますよっ!

 有るかもしれない無いかもしれない未来を浮かべた私は、アマギに振り向き、


「じゃあ次は何処に行きたいですか?」


 聴くと彼は、顎に手を添えながら周囲を見渡し……やがて石の塔に彼の視線が止まりました。


「……なにやら心惹かれる建物だね!」


 あの石の塔は魔族好みの外観でしたか。

 でもリオンとパイプ越しで話すようにはなりましたが、まだ会って無いんですよね。

 それに行きなりアマギを連れて行ったら応じてくれなさそうです。


「ごめんなさい。あそこに住んでる人は大変気難しくて、住んでる人とは会う事はできませんよ」


 そう伝えるとアマギがハッと眼を見開き、真紅の瞳が顕に!


「つまりユヒナ様と同じ引きこもりと! それじゃあ強引に行く訳にはいかないなぁ」


 あー、うーん。ユヒナとリオンを比べたらリオンが可哀想かなぁ? だってユヒナはちゃんと人前に出ますし。

 けど引きこもり具合だったらユヒナより上なのかも。

 でも裸族で魔王少女のユヒナと引きこもりリオン……何方が印象に残るかと問われれば圧倒的に前者ですね!

 私の中でリオンの敗北が決定したところで、


「石の塔以外でお願いします」


 アマギには悪いと思いつつ案内先の変更をお願いしました。


「それじゃああそこに見える農家かな。その後は向こうの丘の牧場に行って最後は鍛冶屋にしよう」


「丘の上は牧場というよりは動物園ですが、先生は薬の調合もしてますからきっとアマギの眼に止まる物も有るでしょう」


 例えば万能薬とかマヒマヒチョウの鱗粉とか。

 私はそんな事を思い浮かべながらノーム農場を案内するのでした。

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