表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/72

35.メイドと釣り

 最早恒例となったノーム農場の畑仕事を終えた私とジークは、穏やかに流れる川辺で釣糸を垂らしてました。

 

「まだ返答が来ないな」


「そうですね。でもウェンダムの話では南の関所から騎士団が撤退したんですよね」


 ジークがアラメドルク伯爵に財宝を贈ってからもう五日。

 何かしら返答が来ると思っていましたが、南の関所から騎士団が撤退したという話しが私とジークに密かに齎された。

 

「うむ。だが安心していいものか」

 

「判断に困りますよね。何せ贈ったのは黄金のパンツですよ? 向こうも価値を見定めるのに時間がかかってるんじゃないですかね」


 そう、贈ったのは黄金のパンツ。それがどれだけの価値が有るのかはちょっと私とジークには分かりません。

 というかそんなに価値は無いじゃないんですかね。一応金の塊ですけど。

 むしろ名声とかその他諸々が落ちたり、使用人から蔑まれるそうです。

 と、そんな事を思っていると竿がぐいぐい引っ張られるではありませんか!

 私はゆっくりと竿を動かしつつ、掛かった魚が疲れるのを待つ。

 そして疲れた瞬間! 一気に竿を引っ張る。

 すると見事なイワナが釣れました!


「旦那さま! 塩焼きが良いですか? ムニエルが良いですか?」


 意気揚々と昼食に付いて質問すると、彼は苦笑を浮かべていた。

 まぁ、不安だなぁって話をしてた矢先にイワナに話題を持っていかれたらそうなりますよね。


「今日は塩焼きの気分だが……ん?」


 質問に答えたジークは何かを見付けたのか、空を見上げていました。

 何でしょうか? 私も気になって空を見上げるとそこには白い大鷲──ハヤテが立派な嘴に一通の手紙を咥えながらこちらに向かって来るのが見えました。


「手紙でしょうか?」


「宣戦布告かも知れんが、どうなるか」


 私と同じぐらいの大きさを誇るハヤテが、私の前に降り立つと頬に顔を擦り寄せ、愛嬌の有る鳴き声を鳴らした。

 だから私も抱き付いてハヤテの身体を撫で始める。

 この子は愛嬌が有って可愛いんですね! それに羽根がふわふわで気持ちいい!

 昔はこの子の背中に乗って飛んだことも有りますが、流石に成長した私を乗せてもらうのは無理ですかね。

 なんて感想を浮かべながら手紙を受け取り、ナイフで封を切ってからジークに差出す。

 彼は受け取った手紙を読み始め……次第に凶悪な笑みを浮かべました!


「おや、旦那さまのその笑みは良いことが有ったと判断して良いですか?」


「うむ。簡単に説明するとわたし達に賊を鎮圧する能力が有ると判断し騎士を撤退させたこと。贈られた財宝は歴史的価値が高い物としてそれに対する感謝の言葉だな」


 あんなのに歴史的価値が有ったんですか。

 まさか領土戦争の回避が黄金のパンツだなんて誰も想像しないでしょうねぇ。

 

「ひとまずは領土戦争に展開することも無さそうですね」


「あぁ、あとは村の発展に集中したいものだな」


「そうですね。先ずは宿屋を完成させないとですね」


 商人が泊まるための宿屋の建築。まだ設計段階ですが、建材は充分にあります。

 あとは私が直々にウルスラグナ団に接客業を仕込むだけですね。


「旦那さま、宿屋完成までの間はウルスラグナ団を屋敷で指導しても大丈夫でしょうか?」


「それは構わないが、何を指導するのだ?」


「そりゃあ接客術に料理、掃除や洗濯など家事全般ですよ」


 そう伝えるとジークは納得した表情を浮かべ、


「君の負担が増えるな」


 おや? まさかジークから私を案じる言葉が出るなんて。

 でも負担には感じて無いんですよねぇ〜。


「負担では無いですね」


「そうなのかね?」


「今の生活は結構楽しいですから」


「そうか」


 そんな穏やかなやり取りをしてるとジークの竿が引っ張られてるじゃないですかぁ!

 何か思い耽っているのか、まだ気付かないジークに私は慌てて。


「旦那さま! 引いてますよ!」


 声を出して伝えた。

 するとジークは軽く竿を引き上げ、見事なイワナを釣り上げました。

 でも引き上げる際に加減を誤ったのか、イワナは石の塔まで飛んで行っちゃいましたが……って! なんでですかぁ!


「あの旦那さま? もう少し力加減をしてください」


「……すまない。次は気を付けるとしよう」


「そうしてくださいよ。ハヤテも驚いて震えちゃってますからね」


 私はハヤテの頭を撫でながら仕方ない人と息を吐く。


キュー(魚が空を舞うなんて)


「あとでハヤテに詫びとしてイワナを一匹やるか」


キュイ(いらない)


 ハヤテはジークの言葉にひと鳴きしてからそっぽを向いちゃいました。

 これは……どうやら他人からエサを貰うのは嫌なようですね。


「どうやら拒否られたようですね」


「そのようだな」


 若干肩を落とすジークの様子に、何故かそれが可笑しく感じた私は思わず小さく笑っちゃいました。

 すると吊られてジークも笑い出して、それに反応する様にハヤテまで笑うように鳴いた。

 これも安心を得た影響なんですかね? それはそうと今は釣りに集中! 多く釣れたら村のみんなにお裾分けです!


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ