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命の重さ



 そんな風に、この世界で生活を始めて1ヶ月。



「今日の稼ぎは1500Cちょい。うんうん、いい感じ〜」


 私はタッセ村の隣、ロンド町に移動していた。何せタッセは小さな村で、宿とか1軒も無いからねー。

 ロンドもゲームでは宿屋、武器屋、雑貨屋、家3軒程しか無い小さな町だったけど。実際は人の営みがある訳だから、田舎の都市くらいには賑わっているよ。

 ここで私は1泊2食付きで1000Cという宿に滞在している。もちろんお金はモンスター退治で稼いでいるのだ。

 たまーに素材を落とす事もあって、そういうのは専門業者で買い取ってもらえる。




 あれから検証を重ね、大体システムは把握出来た。

 ついでにこの世界で魔力(MP)を持つ者は、標準装備として収納魔法(アイテムボックス)を使える事も知った。お陰で私も手ぶらでモンスター狩りに行けるのさ。お金だって財布要らず、すっごい便利!!

 更に更に!攻撃魔法以外にちょっと火をつける、水を出すとかも可能だった。MPは減るけど、1とかそんなモン。


 つまり魔力持ちである私の人生はイージーモード。いやー、私も人並みに苦労ってのしてみたいわ〜なんてね!



 なのでやはり私は…勇者のパーティには合流しない道を選ぶ。



「今のレベルは8。もっと戦ってもっとレベルを上げれば…強いモンスターも倒せるようになる。

 そうすれば経験値も多く貰えて、レベルアップも容易になる。まあ、段々レベルアップ時に必要な経験値も、多く要求される訳だけど…」



 ベッドにゴロンと転がる。

 いつまでも宿屋暮らしは出来ないから…私は時間をかけて、どこか大きな街で家を購入するつもり。今はちまちま貯金をしている。

 そうしたら生活に必要な分だけお金を稼ぎ、ほっそり静かに暮らせるのだ。


 私なんていなくても、勇者さえいれば魔王は倒せる。裏を返せば、勇者にしか魔王は倒せないのだが。


「それこそが称号の効果。私の「異世界から来た乙女」は…この世界のあらゆる言語を理解出来る効果がある。便利すぎる…。

 で「勇者」の称号は魔王を消滅させる事が出来る。例えば私が超強くなっていくら魔王を圧倒しても、倒すには至らない」


 その場では勝利しても、すぐ魔王は復活しちゃうのさ。だから最低限トドメは勇者が刺さねばならない。彼らには頑張ってもらおう。

 でもまあ現時点では、勇者もただの村人にすぎない。これから2年後のイベントで覚醒して、魔王を倒すと決意し旅に出るのだ。




 そのイベントとは…勇者の両親と姉が、魔王の側近に殺される——というもの。


「魔王と勇者は共鳴している。2年後に魔王が生まれ、勇者も覚醒の兆しを見せるんだ。だけどそれを感じ取った側近が、完全に目覚める前に主人公を殺そうとするんだよな…。

 彼は訳も分からず命を狙われるけど…まず目の前で家族を殺される。そして勇者はその怒りや哀しみを糧に、覚醒する…王道だね」


 ちなみにその側近は覚醒した勇者に倒される。なのでまあ、残念だけど。


「そうやって覚醒してくれないと、世界が滅びかねない。可哀想だけど、勇者の家族には()()()()()()()()()()


 

 だってこの世界はゲームの世界だから。それがストーリー、システムだから。

 大丈夫。家族が死んで暫くは苦しい思いをするけど、後に出会う私以外の仲間達が慰めてくれるから!



 この時の私は、本気でそう思っていたのだった。

 





「ユウさーん、お風呂の準備が完了したですよー」


「あ!ありがとう、今行くねー!」


 今日も疲れたのでウトウトしていたら、部屋の外から声が聞こえる。

 その正体はこの宿の娘、アイスちゃんだ。まだ10歳だが、家のお手伝いを頑張っている。

 

 ちっさくてよく働いているこの子を見ていると…前世の妹を思い出して、つい甘やかしてしまう。


「はい、アイスちゃん。美味しそうな飴が売ってたんだ、仕事が終わったらお食べ」


「わあい!ありがとうですユウさん!」


 ただの小さい飴玉だけど、本当に嬉しそうにしてくれるから、私もつられて笑顔になってしまうのであった。

 いつかは大きな街で暮らすつもりだったけど…この町に定住するのも悪くないかな〜、と思う今日この頃。




 次の日私は、いつも通りモンスター狩りに行く。モンスターってのは狩っても狩っても湧いてくる、お金には困らないね!


「……お、レベルアップ!」


 早くもレベル9か。こうしてレベルアップすると、HPとMPが全快する。

 もうMPが切れそうだったから帰ろうと思ったけど…これならもう少し稼げるな!そうしたら、アイスちゃんにお高い美味しいスイーツでも買ってあげようっと。




 だが…私はここで欲を出した事を、死ぬほど後悔するのである…

 



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