異世界転移?転生?
のんびり書きます
その日、私は寝過ごしてしまった。
寝惚けてアラームを止めてしまい、目を覚ませば朝8時半。始業は9時、職場は徒歩と電車で30分先。今から支度をして家を出て…はい無理!!!
寝坊して遅刻しました!なんて言うのは恥ずかしいし…となれば手はひとつのみ。
「げほ…はい、すみません…今日は休ませてください…。
ええ、熱は大したことないんですが。明日は行けると思います…」
仮病で休む!!!幸い普段真面目な私は、このような電話をしても怪しまれない。
ただ…「大丈夫か?こっちは心配要らないから、しっかり寝なさい」という上司の言葉が良心に突き刺さる…。明日からバリバリ働くので、今日だけは勘弁してください…!!
さて、急に1日暇になっちゃった。でも出歩いて、知り合いに見つかったら面倒だし…いいや、寝よう!と布団に戻る。
新卒で就職出来た会社はホワイト企業の類に入るだろう。世間ではブラック企業がどうたらいう話を聞くが…そういう人達は、どうして仕事を辞めないんだろう?と本気で不思議に思っていた。
そもそも、辞めたい人を引き止めるのって法律違反じゃないの?辞めたかったら、きっちり調べて論破すればいいのに。ねー?
次の仕事が見つかるまで?そんなの…実家で暮らせばいいのに。
私は幼い頃から、あまり苦労をしたことがない。
裕福ではないが貧乏でもない、中の上くらいの家に生まれ。まともな両親と可愛い妹がいて。
容姿も人並みかちょっと上だったので、高望みをしなければ彼氏だって普通に出来た。
高校も大学も、自分の学力に見合った所を選んだので、必死こいて受験勉強をした記憶も無い。
小学生時代はミニバスのチームに入り。
中学校はテニス部に入り。
高校でソフトボールを始め…大学でも続けた。
部活はいずれも強豪ではないが弱小でもないという、微妙なチームだった。それでも仲間達と合宿をしたり、力を合わせて1つの目標に向かうというのは…中々に充実していた。
それもまあ、絶対優勝!!みたいな情熱も無かったけど。相手が強豪だったら「負けちゃったか〜」でハイ終わり。監督もチームメイトも皆そうなので、気楽に楽しくやっていた。
そして今、結婚を考えている男性もいる。特別格好いいとかでは無いけれど、2つ上で優しい普通の人。
私はこの人と結婚して普通の家庭を築いていくんだな〜と、ぼんやりと人生設計を建てていた。
そんな風に苦労知らず努力知らずの私は、他人を見下すような真似もしないが…「普通」というものが、当たり前になっていた。
例えば親兄弟に恵まれているのは「当たり前」。親が嫌いだという人間の心情を、本気で理解出来なかった。
他人の悪意を感じた事も、死に物狂いで何かに取り組んだ事も無い。でも、いいじゃないそれで。
物語のように、特別な何かなんて望まない。
空から女の子なんて降って来なくていい。
異世界転生して無双とかどうでもいい。
超絶イケメンに溺愛なんてされなくてもいい(されたら嬉しいが)。
宝くじが当たって、死ぬまで働かなくていい!とも言わないよ。
平凡に暮らして、お婆ちゃんになって…孫に囲まれて大往生。私の人生そんなモンでいいから、のんびり生きていきましょう!
つまり…完全に、人生を舐めきっていたのだ。それに気付いたのは…
「ひいいいいぃぃぃ!!!!死ぬ、マジ死ぬううううう!!!」
「ガアアオアアァッ!!!」
「ぎいやあああああーーー!!!」
やばいやばいやばい!!何処へ向かえばいいかも分からないけど、ひたすら私は走った!
何せ後ろから棍棒を振り回す…ゲームとかでお馴染みの、オークっぽい何かが追い掛けてくるんだものお!!!
「いーーーやーーー!!誰か助けて、ヘルプミーーー!!!」
走る走る!だだっ広く遮蔽物の無い草原を走る!!
ああ…神様。私は何かしたでしょうか…?