#バズりたい人たちのお手伝いをするだけの、簡単なお仕事です(2/2)
「お待たせしました」
そんなことを考えていると、レジーナさんがやって来た。
……やっぱり地味な格好だ。聖職者用の白いロング丈のローブには、フリルなんて一つもついてない。
「初めまして」
私は、ぎこちなく挨拶した。
レジーナさんは、きらめくストロベリーブロンドの髪をすっきりと束ねて、頭の後ろで三つ編みを編み込んだお団子を作っていた。それを飾っているのは、金の髪留めだ。
でも、そのアクセサリーも、バラを象った赤い石がついているくらいで、全然派手なものじゃない。どっちかっていうと、お上品って感じだ。
それにしてもレジーナさん、背が高いなあ。
そこら辺の男性と、ほとんど変わらないじゃないかな。少なくとも、ケントさんよりはずっと大きい。私が背伸びしても、頭のてっぺんに全然届かなさそう。スタイルも良くて顔立ちもキリッとした美人だし、なんだか迫力がある。
「わたくしにご用とお伺いいたしました。どういった内容でしょうか?」
レジーナさんは、綺麗な顔に穏やかな笑みを浮かべて聞いてきた。それだけで、ぐっと親しみやすさがアップして、知らず知らずの内に背筋を伸ばしていた私は、ちょっとほっとした。
「あの、実は私たち、インフルエンサーを探しているんです」
私はレジーナさんの濃い緑の目を見ながら、自分の身に起きたことを包み隠さずに話した。この人になら、全部打ち明けてしまっても大丈夫かなって思ったから。
「……というわけで、私たち、どうしてもレジーナさんの助けがいるんです」
私は話を締めくくった。
「なるほど……」
レジーナさんは、何かを考え込むみたいな顔になった。畳みかけるように、ケントさんが口を開く。
「僕たち、レジーナさんの業績を思い出してここに来ました。レジーナさんがいれば安心だって、そう思ったんです」
「レジーナさん、どうか私たちに協力してくれませんか? 教会を盛って盛って派手にして、たくさんの信者さんを作った時みたいに、私たちにもフォトジェニックで、たくさんいいねが取れるような方法を教えて欲しいんです!」
「レジーナさんなら、一万いいねくらい余裕ですよね? だから……」
「神はおっしゃいました」
にこやかな顔で話を聞いていたレジーナさんが、不意にケントさんの言葉を遮って口を開いた。
「汝、思考せよ。さすれば、助け賜わん」
レジーナさんは厳かな声でそう言うと、あっという間に去っていった。
「……えっ?」
私もケントさんも、顔を見合わせてポカンとした。
「今のってどういう意味でしょう?」
ケントさんが尋ねてくる。私は腕を組んだ。
「やんわりお断りされた……のかな?」
「そ、そんな!」
ケントさんは、目の前で命綱が切れた登山者みたいな顔になった。
「うーん、でも……」
けれど、私はまだ希望を捨ててなかった。
「もしかしたら……だけど。『助言ばっかり求めていないで、少しは自分の頭で考えなさい。そうしたら助けてあげます』って意味にも取れたような気がする」
「助言……」
ケントさんは、額を強く擦った。
「確かに、言われてみれば、ちょっと他力本願すぎる言い方をしてたかもしれませんね」
「それにしても、『自分で考えろ』か……」
そんなこと言われてもねえ……。
私とケントさんは、家庭教師から問題集の山を見せられた生徒みたいな顔で、同時に唸り声を上げた。