#犯人の正体は?(3/4)
「ねえケントさん、ちょっといい?」
犯人が聖職者かもしれないってことに驚いて固まってるターナー家の人たちの中から、私はケントさんだけに声をかけた。
「実はね、私、今朝、厨房でこんなものを拾ってたの」
私はケントさんを物陰に連れていくと、ポケットから金の髪飾りを出した。
もうこれ以上は隠しておけないと思った。私は、全部を話してしまう覚悟を決めていた。
「これ、レジーナさんのなんだよ。それで……ケントさんの念写に写ってた白い服も、聖職者用のローブだと思うの」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ケントさんは顔を引きつらせた。
「リタさん……まさか……、こ、こんなことをしたのが、レジーナさんだって……?」
「だって、他に考えられないじゃん」
私だって認めたくない。でも、こんなに色々と証拠が揃ってるのに、他に犯人がいるなんて思えなかった。
「そんな……レジーナさん……」
ケントさんはショックを受けたような顔だった。
「どうして……どうしてですか……?」
「分かんない」
私はやるせない思いで首を振った。
「……ねえケントさん、明日、レジーナさんに会いに行かない?」
「……会いに?」
「うん。やっぱり、本人の口から色々聞きたいから……」
一体何を言われるんだろう。信頼していた人に裏切られてたっていう衝撃で、私は気分が沈んでいた。
「……分かりました。行きましょう」
ケントさんも暗い顔で頷いた。
「父さんや母さんたちには、僕とリタさんが、犯人の目星をつけるために中央聖教会へ向かうって言っておきます」
ケントさん、まだレジーナさんが犯人だってことは言いたくなかったみたい。
それからしばらくして、私はお父様たちに挨拶して、ターナー家を後にした。明日のことを考えると気が重い。
でも、今夜の騒動はこれで終わりじゃなかった。
次の日の朝、ろくに眠れなかった私がMNSの書をぼんやりしながら開くと、とんでもない数の通知が届いているのが目に入った。
『昨日から体のあちこちが痛いんですけど、どうしてくれるんですか?』
『ドリンク代、弁償してください』
『店閉めろ』
……え? 何? 何が起こってるの?
届いてたのは、ほとんどがコメントで、しかも悪口だらけだった。これ、炎上してる?
何となく、私が悪役令嬢Rだって誤解が広まった日を思い出させるような光景だ。混乱しながらコメント欄を遡ってると、ある言葉が目に飛び込んできた。
『悪役令嬢Rの投稿見たよ。売り上げのためなら、何してもいいって思ってんの?』
悪役令嬢Rの投稿……?
私は冷や汗が出る思いで、悪役令嬢Rのタイムラインに飛んだ。
『最近ちょっと話題になっている、『はちみつキッチン』とかいうカフェの真の姿、ご存じでして? このお店、お客様を自分たちのドリンクの中毒にさせるために、違法な薬物を入れて販売しているんですのよ。こんなこと、許されるとお思いなのかしら? ふざけるのも大概になさって欲しいですわね。わたくしが懲らしめてさしあげましょう!』
念写に写っていたのは、荒らされた厨房だった。
う、嘘でしょう!? 犯人を撃退したと思ったら、次は悪役令嬢Rに目をつけられちゃったの!? 一晩で二回も被害に遭うなんて、びっくりするくらい運が悪いじゃん!
私は取るものも取りあえず、開店前のはちみつキッチンへ駆け込んだ。




