#根性で乗り切る(2/2)
「どうしてもインフルエンサーの力を借りてバズりたいなら、自力で別のインフルエンサーの目にとまるように努力しなさい」
「別の?」
「ええ。アタシの弟子なら、こんなことくらい、気合いで乗り切りなさいよ! お店に思ったより客が来なかったとか、作ったコースターが予想以上にウケなかったとか、そんなことで落ち込まないの!」
レジーナさんは、フォークの先っぽをこっちへ向けてきた。あ、危ない……。
「アタシはアンタたちの師匠だけど、根性のつけ方まで教えないといけないのかしら?」
その言葉を最後に、僕たちは外につまみ出された。やっぱりスパルタだ。
「飲み物が紅茶だったのがいけなかったのかな?」
僕はちょっとガックリきていたけど、リタさんは、あんまりダメージを受けてないみたいだった。リタさん、負けず嫌いだもんね。レジーナさんの好きな『気合い』とか『根性』なら、僕よりありそう。
「それとも、コースターもつけるべきだったのかな?」
あれ、リタさん、もしかしてレジーナさんに『コースターがウケなかった』って言われたこと、気にしてる? 僕はあれ、結構好きだけどなあ。
「次に来る時は、飲み物は、はちみつラテにしようよ。あれ、すごく美味しいもん」
その組み合わせは、リタさん買収セットって感じだから、レジーナさんには効かないんじゃないかな。
レジーナさんが何が好きなのか知らないけど、絶対に食べ物に釣られるタイプじゃないってことは今日で分かったからね。
「やっぱりここは、レジーナさんの言うように、『根性で乗り切る』しかないですね」
中央聖教会の敷地を歩きながら、僕たちは今後のことを相談する。
「あれって要するに、自分の頭で考えろってことでしょう? 『汝、思考せよ』ですよ。もし僕たちが八方ふさがりって感じの状態なら、レジーナさんもあんなアドバイスはしないんじゃないでしょうか?」
レジーナさんは厳しいけど、投げやりな人じゃないから、これは間違いないと思う。
「まだ改良の余地があるってこと?」
リタさんが唸る。
「やっぱり、コースターには『新しさ』がなかったからかな?」
僕たちは『王道の中に新しさを入れる』のに失敗した。だからいいねが伸びない。いつもの結論だった。
「でも、良さそうなお土産の案って、もう出尽くしたよね……」
リタさんは、持参していた『聖女先生のMNS講座』のノートをパラパラとめくった。
「……はあ、ダメだ。ちょっと木陰に行こう?」
でもすぐにリタさんは、ノートを扇子みたいにして、顔をあおぎ始めた。
今日は、ずっと日向にいると、ちょっと汗ばむくらいの気温だった。僕とリタさんは、大きな木の傍にあるベンチに腰を下ろす。
「なんか飲みたいなー。私も、レジーナさんの部屋で紅茶飲んでくれば良かったかも」
「確かに喉、乾きましたね」
帰ったらお茶の時間にしようかな。でも、飲みたいのは今なんだよね。
……そう、今。
今、お茶を飲んで、ほっと一息つきたい。
僕の頭の中で、さっきのレジーナさんの私室での様子が浮かんできた。僕が持ってきたケーキに喜ぶ顔。紅茶をすする仕草。
「リタさん……」
確かにケーキなら、お持ち帰り用として置いてるお店もある。でも、飲み物は……。
「帰りましょう! はちみつキッチンへ!」
「えっ、何で?」
僕の大声に、リタさんは目を丸くしていた。そんなリタさんに、僕は大げさな身振り手振りで、考えついたことを伝える。
「コースターに代わる、『戦利品』を思いついたからです! これなら、いつでもどこでも『落ち着いたカフェ』が味わえます!」




