#アンタたち、本気なのね(2/2)
「十五年くらい前かしらね。MNSが登場したのは」
不意に、レジーナさんは懐かしいものを思い出すみたいな口調になった。
「当時は貴族しかアカウントを持つことが許されなくて……。で、そこから五、六年もする頃には、全貴族に行き渡ってた。アタシがMNSの力で教会を建て直したのも、そのくらいだったわ」
あれ? レジーナさんの話し方、なんだかいつもと違わない?
でも、そんなことを聞ける雰囲気じゃなかったので、僕は黙っていた。
って言うか、貴族しかアカウントを持つことを許されない時代に、レジーナさんがMNSを使って教会を建て直したのなら、レジーナさんも貴族だったってことなのかな。
レジーナさん、事情があって教会にいるだけで、本当はどこかいいところのご令嬢なのかもしれない。
そう思ったら、目の前の聖女様が、急に遠い人みたいに感じられた。
「だから、アタシが教会に呼び込むターゲットにしたのも貴族だった。でも、今は事情が違う……」
レジーナさんは、僕たちをじっと見つめた。なんだか真剣な目つきだ。
「MNSは生き物なの。常に進化してる。平民にもアカウントの所持が認められるようになってからは、MNSは新しい段階に入った……」
突然、レジーナさんはニッコリ……って言うより、ニカッと笑った。
それで、こっちへ飛び込んできたかと思うと、僕とリタさんの肩を思い切り抱く。リタさんも僕も、びっくりして固まった。
「アンタたち、やるじゃない! よくそのちっちゃなオツムで考えて、答えを出したわ! アンタたち、本気なのね。アタシ、やる気と根性のある子は好きよ!」
レジーナさんは、元気いっぱいに僕たちの肩をバシバシ叩いている。
も、もしかして大人しい聖女様じゃなくて、これがこの人の本性だったりする……のかな?
ついさっきまで遠い人だと思っていたのに、今はレジーナさんに急接近したみたいな感覚がした。いや、物理的な距離は、実際にかなり縮まっていたんだけど。
「アタシがアンタたちのアドバイザーになったげるわ! その代わり、弱音、吐くんじゃないわよ?」
突然の展開に、僕もリタさんも何も言えないでいると、レジーナさんは不満そうな顔になって、僕の鼻を摘まんできた。
「ほら、返事!」
「ひゃ、ひゃい!」
「よろしくお願いします……」
リタさんも僕も、最後までレジーナさんの勢いに呑まれたまま、ほとんど機械的に頷いた。
でも、何はともあれ、僕たちは、八十万人のフォロワーを誇るインフルエンサー、聖女レジーナさんを味方に引き入れることに成功したみたいだった。




