あとがき、その一。
公開開始から、なろう移籍前のガラケーブログ時代を含めれば、約二年間の週刊連載。
ふう。とにかく終わらせました。
とりあえずは、ひと息。
一、
漫画やアニメ、映画や小説では、当たり前のように仮想彼女が登場し、しかもそれらは大抵が生身の女の子そっくりときてる。ロボットにせよ何にせよ。
で、主人公の非モテ男性は、その女の子を連れて御機嫌な毎日というわけ。
だけど、それはちょっと都合が良過ぎるんじゃないのかと。
現実の女性、生身の人間とのコミュニケーションを放棄しておきながら、その代償がないのは、やっぱり何かおかしい。
例えば、それがロボットなら。
会話は、うまく通じないかもしれない。動作も、ぎこちないかもしれない。外見も、一目で作り物だと分かってしまうレベルかもしれない。
完成まで、お金も手間も掛かるだろう。製作中も、完成後も、周囲や世間の目が気になることもあるに違いない。
それでも、自分はロボットを彼女にしたいのか。
そこまでして彼女が欲しいのか。
こういった覚悟や葛藤を、丁寧に書いてみたいなと思いました。
冒頭に述べたような、既存のアニメや小説においては、前提として最初からそこにある物。
あえて、そこへ至るまでを。いや、そこへ「至らないまで」をも含めて。逃げずに書き連ねてみたい。そう思ったのでした。
二、
執筆の際、特に留意した点が幾つかあり、まずは、読者の気持ちをむやみに揺さぶらないように心がけました。要は、刺激的な場面を書かないこと。
本作品には、お色気も暴力も出てきません。病気も事故も、人が死ぬこともない。登場人物が大声を上げる場面すら、極めて少ないです。
できるだけ穏やかな日常において、常識人が冷静な対話を重ねてゆく中で、少しずつ浮かび上がる感動や幸せ。
それを書いていきたかったのです。私自身の人生を見つめ直しながら。
その方針の延長として、突拍子もない展開も控えめにしたつもりです。
本作品中で完成してゆく美少女ロボットのイリカにしても、現代の科学技術で造ろうと思えば、どうにか実現可能なレベルではないかなと考えています。
イリカの性能的な描写についても、その都度、ロボット関連の書籍などに目を通し、現実離れをし過ぎた物はなるべく書かないよう注意しました。
夢を持たせた部分としては、たかが一個人の所有する恋人ロボットを造るためだけに、果たしてあれだけ大がかりな産官学の連携が出来るのか、という点ですかね。
もっとも、この点にしても、それなりの社会的地位を持った人物が、順番に人間関係をつないでゆくというストーリー展開にすることによって、実社会でも「あり得なくはない」話にとどめたつもりです。
主人公のロタが、人工知能分野の権威であるハヤミに会えたのも、あくまで、大学教授のドワキの仲介があったからこそ。
そして、ドワキとロタが友人関係を保てたのは、ロタ自身にもそこそこの社会的地位があったから。
ここら辺はドライです。
基本的に、大人は、レベルの合った者同士で付き合っていきますので。
物語中の科学者や技術者たちにしても、イリカ製作を通して開発した新技術等は、波及効果として自らの利益としているわけです。また、他分野の専門家と人脈も広げています。
恐らくは、依頼人のロタ以上にメリットはあったはずで、そこら辺の損得についても、社会人同士としての帳尻はシビアに合わせたつもりです。