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ロタとイリカ 独居老人、彼女を造る。  作者: KIZOOS
第二部 マノウ編(ロボット骨格の章)
11/83

11 町工場社長、マノウ登場。

  四十、


 翌日午前、ロタはホテルに荷物を置き、マノウの会社へ向かう。バスを二台乗り継ぐ。快晴。セミの声。

 今日も、イリカの電源はまだ一度も入れていない。昨日の会話の続きをするのが怖くて、ためらってしまう。

(もしイリカが、自分が機械であることを薄々わかってるのだとしたら、むしろはっきりそう告げた方がいいのか?

 イリカなりに、ロボットの仕組みを考えてくれるかも)

 とも思うものの、

(俺が今までだましてたことを、イリカはどう受け取るか。それに、自分は女子高生だと基本プログラムされてる以上、たとえ機械だろうと女子高生は女子高生、なのか?)

 座ってバスに揺られながら、頭が混乱する。

 また、こうも考えた。

(いや、待てよ。そもそも、イリカは人工知能だ。

 ハヤミさんによれば、人工知能に自意識はなく、会話も、単語をパズル状に組み合わせてるだけだ。つまり、単語一つずつの意味は理解していないのだから、だますという概念も成り立たないのか?)

 どんどん深みにはまりそうだった。

(いかんいかん。まあ、とにかくマノウさんに会って、何か解決策はないか考えよう。イリカの体が、ロボットとしてどの程度の機能になりそうかは、今日、大体見えてくるはずだしな。

 イリカに話しかけるのはそれからでもよかろう)

「逃げかなあ、先延ばしかなあ」

 最後だけは、声に出してつぶやいた。

 頭の片側を窓に寄りかからせていたロタは、わざと頭を振って、ゴンと軽くガラスに当てた。


 バスの窓越しには、いつしか木々や岩が増え、殺風景になってゆく。まるでロタの心境のようだった。



  四十一、


 バス停で降りたら、歩いてマノウの会社を探す。やや距離がある。

 事前にネットで周辺の風景写真も見ておいたので、道に迷う心配はあるまいが。

 革靴に草が絡み付く。バッタが跳ねる。辺りは畑や山で、人家はまばらだ。

 その、視界がひらけた一角に、ぽつりと町工場があった。

 二階建て。広めの一軒家を二つつなげたほどの大きさだ。

「見つけた。あれだ」


 建物の形状は四角く、端に煙突一本。周りを囲む高い防音壁と低めのフェンス。

 十数台用の駐車場には、トラック一台。隅には台車も。

 入り口に、年季の入った金属の大看板。見上げると、社名とロゴは間違いない。やはりここだ。


 汗を拭き、門をくぐると、一人の男とバッタリ会った。

「あっ、マノウさん」

 ロタは思わず大声になっていた。

 建物へ入る前に、早速会えるとは。

 メールなどで写真は見ていたため、一目で顔が分かった。

 相手も同じだったようで、

「ロタさんですね、ようこそいらっしゃいました。遠い所を」

 と、にこやかに、余り響かない静かな声で言った。柔和な物腰。

 そこは、工場の玄関前らしい。一階部分は、正面全体が開いていた。戸締まりをする際には、入り口全体に巨大なシャッター一枚を下ろす構造のようだ。

 マノウは何か作業中だったようで、エンジンみたいな機械の塊を抱えていたが、一旦地面へ置いた。

 年齢はロタよりやや若く、四十代半ば。身長はロタよりは低いが、小柄でもない。やせている。

 縮れ毛混じりのもしゃもしゃの黒髪は、耳を覆うくらいの長さ。ひげはなく、きれいにそられていた。

 服装は青い作業着。ツナギではなく、上下別。長袖ブルゾンとカーゴパンツ。手の指は太い。腕まくりの袖が暑そうだ。

 ロタも、よそ行きのワイシャツとネクタイだが、半袖。


「はい、ロタです。これまで電話やメールで情報をいただき、助かっております。これからもお世話になります」

 と、ロタもほほえんで頭を下げた。

 マノウも会釈を返し、答える。

「途中で知りましたが、この度のプロジェクトには、あのハヤミ先生が関わっておいでだそうで。大変光栄です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 想像していた通り、誠実そうな印象だった。

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