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夜空に瞬く星に向かって  作者: 松由実行
第四章 ベイシティ・ブルース (Bay City Blues)
101/264

27. 貨物船レベドレア


■ 4.27.1

 

 

 集まった廃ビルの中で、ジャキョセクションの本部を襲撃する計画を立てようという所で、レジーナから通信が入った。

 

「ジャキョセクションと繋がりがあると思われる旧式の貨物船が入港してきます。通信内容から、ドーピサローク同様にジャキョセクションと友好関係にある組織所有の船であると考えられます。こちらの方が良くは無いですか?」

 

 一瞬考えて、そしてレジーナが言いたいことを理解した。

 ドーピサローク同様の船であるというならば、ドーピサローク同様に狂言海賊を行って積み荷を受け渡す手順を知っている可能性がある。

 しかもレジーナは、その船が旧型だと言った。旧型の船であれば行方不明にしてしまうのもそれ程惜しくはないだろうし、バラして組み替えて新たに登録し直すのも惜しげが無いだろう。

 狂言海賊の対象の船である可能性は相当高いものと考えられる。

 

 では狂言海賊をやるとしても、幾らお互い示し合わせてジャンプしたとしても、お互いのジャンプアウト地点が数光日程度ずれることは十分にあり得る。

 どこかの太陽系の外縁などの座標設定が容易な場所ならばともかく、絶対他人に知られたくない後ろ暗い荷物の受け渡しなど、どこか彼方の何も無い太陽系間宙域で行うに決まっている。そのような座標基準点の無いところで、正確にお互いすぐ近くにジャンプアウトなどできるはずが無いのだ。

 そんなとき、お互いが認識できるまでただ待ち惚けするのはいかにも効率が悪い。当然、量子通信で連絡を取り合うだろう。

 であるならば、相手先、つまり海賊船の量子通信用IDとキーを知っているという事であり、これを奪取できればレジーナから海賊船に通信を繋げることが可能となる。

 公共の量子通信局でなければ、通信データ内容に制限を掛けていない可能性が高く、取り分けランデブーが必要な船同士の間であれば、航法データをやりとりするためにデータ通信も開いている可能性が非常に高い。

 データ通信さえ開いていれば、あとはブラソンとノバグに任せればどうとでもなる。海賊の本拠地データを抜くことも可能だろうし、ことによるとその船を乗っ取ることもできるだろう。

 

 ジャキョセクションが複数の海賊船団を擁しており、エイフェを手に入れた海賊船団とは別の海賊を引き当てる可能性も考えたが、それはあまりありそうでは無い話だった。

 本業の海賊をやらせるにしても、軍隊と同じ事で少数分散するよりもひとまとまりの大きな集団になっている方が戦力として強化される。

 ただの違法商品の納品先として機能させるだけであるならば、多数の集団を抱えるのはそれだけ維持コストがかさむ。

 絶対に発見されない場所で取引を行うのであれば、商人がそんなムダを認めるはずは無かった。

 

「目標変更だな。」

 

「だな。」

 

 ブラソンが同意する。

 

「情報がそこに無いという不安要因が同じなら、目標は小さい方が良いだろう。それに多分、推測は合っている。情報はあるだろう。目標変更だ。」

 

 アデールも同意する。

 

「いったんレジーナに戻るぞ。」

 

「良いだろう。その方が柔軟性のある対応が取れる。」

 

 腰を下ろしていた、俺を含めた三人が立ち上がる。ルナは立ったままだった。ニュクスも、多分ルナと同じ理由でずっと立っていた。

 やっぱりこいつらのこだわりは良く分からん。

 

「ダミーIDとの会合地点を示します。近づいたらダミーの方から適当に吸着させます。」

 

 毎度ながら、ノバグRが俺達全員分のダミーIDを操作してくれている。正確には彼女のコピーの一人が担当しているのだろうが。

 

 俺達は、作戦会議を開いていた廃ビルを出た。

 

 

■ 4.27.2

 

 

 レジーナに戻るビークルに乗っている間に襲撃らしきものは無かった。

 俺とルナを襲ってきたのが、所詮ジャキョセクションの末端組織のチンピラであった事から、俺達の存在は認識されているものの、脅威としては認識されていないのかも知れない。

 殆ど小国と言っても良い規模を持つ組織からみれば、貨物船の一隻とそのクルーなどそのようなものかも知れなかった。

 こちらとしては都合が良い。下手に真剣に相手をされて、ヤクザの集団や私兵の部隊を向けられては堪らない。

 

 目標としている貨物船は、レベドレアという名のナザフン船籍の船である事が確認出来ている。

 船が接岸したところで、ブラソンとノバグのコンビが攻略を開始しており、ネットワーク上ではすでに突入一歩手前、つまりいつでも貨物船の内部ネットワークに侵入できる所まで攻略が進んでいた。

 あとは実際の物理的侵入を行うだけだ。突入部隊は、俺、アデール、ルナとニュクスの四人に決まった。

 

 全身を次々と強化材料に置換して、武闘派ボディになっているニュクスはともかくとして、このような荒事にはルナは向かないのではないかと思ったのだが、どうもそうではないらしい。武闘派の「武官」であるニュクスが、ルナの戦闘力についてこの程度の事であれば問題無いと太鼓判を押していた。

 確かに、ジャキョシティでチンピラどもに絡まれたときにも、船内管理用生義体とは思えない体術を披露していた。本人に聞くと、修行の成果です、とよく分からない答えが返ってきた。

 どうやら、アデールからもらった新兵教育プログラムを改造して活用したりすることで、仮想空間でニュクス達とトレーニングをしているらしかった。

 最近ルナが良く口にする「修行」とは、どうやらそういうことらしい。

 ルナに戦闘技術を磨けと指示した覚えはないのだが、少人数で運用する貨物船の乗務員が色々なことが出来る様になるのは悪いことではない。そのまま黙認することにした。

 

 AEXSSを身につけた俺とアデール、そして相変わらず戦闘に向かうのかどこかの仮装パーティーに行くのか分からない様な格好をしたルナとニュクスの四人が、重武装でレジーナを出てレベドレアに向かう。

 幾ら無法地帯のフドブシュステーションとは言え、大量の武器を持って歩けば当然目立つ。

 ましてや俺達はジャキョセクションに目を付けられている身の上だ。そんな俺達が大量の武器を持って歩いていれば、さすがに連中も黙っては居ないだろう。

 俺達はそれぞれ少し大きめのバッグを背負い、武器をバッグに満載して目的の貨物船レベドレアを目指した。

 ゴスロリと黒メイドを連れている時点でかなり無理はあるが、商人が取引する品物を持って移動する風に見えないこともないだろう。

 誤魔化しきれなくてもいい。目的地に着けさえすれば良い。

 

 レベドレアはレジーナから五百kmほど離れたピアに接岸していた。

 当初は、アデールだけレジーナから外に出て、ステーション外空間を移動し、俺とルナとニュクスがステーション側から襲撃すると同時に、アデールは船体後方から侵入して攪乱挟撃する、もしくは乗員の目が俺達の方に向いている間に目的の情報を抜き取る事を考えていた。

 しかし、フドブシュステーション近傍空間はデブリと突起物だらけで移動に困難を伴うこと、だからといってジェネレータを使って移動してしまえば探知に引っかかって一瞬でバレてしまうことから、この案は採用されず別案で行く事にした。

 

 いずれにしても、貨物船の乗員数などたかが知れている。余り手の込んだ策を張り巡らさずとも、俺を合わせて実行部隊四人、ブラソンとノバグ達のネットワーク部隊、さらにレジーナによるサポートで十分に対応出来るだろう。

 レジーナやルナなどのAIが働いているため、レジーナの乗員数は他の貨物船に較べて極端に少ない。しかし世間で噂されている様に、荒事に対処する能力が異常に高いのも確かだった。

 

 

■ 4.27.3

 

 

 貨物船レベドレアが接岸しているピアの辺りは、都合の良いことに人通りが少なかった。

 ジャキョシティからはかなり離れている上に、ジャキョセクションに貨物を揚げ降ろしするステーションからも離れていることが理由だろう。

 レベドレアを目立たせたくない、という意思も働いているのかも知れない。

 

 人目に付かないのは都合が良いが、余りに人通りが少なく、下手にうろうろしていると目立ってしまうという不利な点もあった。

 ただでさえゴスロリと黒メイドを連れており目立ちやすい俺達だ。

 襲撃後はどのみち目立ってしまうことを考えれば、襲撃開始時にジェネレータを全開にするのは問題無いだろう。俺達はピアから少し離れたところに立ち止まり、レベドレアには関心のない風を装って路上で立ち話をしている振りをする。

 

「配置に着いた。周辺に問題は無い。いつでもいける。」

 

 音声で連絡する。

 

「こちらも大丈夫だ。いつでも良いぞ。」

 

 ブラソンの声が響く。

 

「こっちも配置についている。いつでも大丈夫だ。」

 

 アデールの声がする。

 

「カウントダウン。5秒前、4、3、2、1、ゼロ。作戦開始。終了まで900秒。カウントダウン開始します。」

 

 レジーナの声がゼロをカウントした瞬間、俺の前に立っていたニュクスが黒い残像となって消える。

 目で追うと、既に遥か先の地上を小さな黒いドレス姿がすさまじい速度で疾走しているのが見えた。

 レジーナスカジャンを脱いでAEXSSむき出しの格好になる。

 スカジャンをバッグに押し込み、代わりにSMGを取り出す。

 ジェネレータを全開にし、地上2mでニュクスの後を追う。

 後方をルナが同様に付いてくる。ルナの位置情報は視野の端にAARで表示される。

 

「障壁突破。船内ネットワークに侵入。構造解析。完了。ノバグR001からR100にて基幹を占拠。完了。基幹サーバを攻撃。障壁突破。掌握。IDサーバを攻撃。掌握。管理権限を奪取し、レベドレアネットワーク全権掌握しました。警報機能停止。リアクタをアイドルで固定。ジェネレータをアイドルで固定。センサー情報現状でダミー固定。火器管制グリーンにて固定。ノバグR101をI/Fゲートに設置。ゴーストサーバ確立。貨物船レベドレア定常状態で無力化しました。」

 

 ノバグ達は貨物船一隻をすさまじい速度で占拠し、無力化した。

 ノバグコピーが五体あれば十分だとブラソンが言っていたところを、百体ものノバグコピーを叩き付けて一気に占領したのだった。

 

「量子通信局を発見しました。キー情報の存在は認められません。船内ネットワークから独立した量子通信局の存在が予想されます。予想を補強する情報を船内ネットワークに発見しました。

「目標は、船内ネットワークから独立した量子通信端末です。当該端末のIDを特定の後、データを全て取得して下さい。」

 

 空中を五百km/hという速度でレベドレアが接岸しているピアに接近する間、ノバグからの状況報告が届く。

 俺とルナが先行したニュクスに追いつくのと、ピアに到着するのはほぼ同時だった。

 

「ピアに到着。このまま突入する。」

 

 さすがにこの速度でそのままピアの狭い通路に突入する訳にも行かなかった。

 いったん地上に降り、ジェネレータを使わずピアの中に飛び込む。

 ニュクスも合わせ三人ひとかたまりになって、レベドレアへと続くゲートに向けて突っ込んでいく。

 ゲート前には、さすがに数人の乗員らしき男達が立っていた。

 男達はこちらに気付くと、何かを叫びながらこちらを指差している。

 速度を落とすことなく、男達に体当たりして吹き飛ばし、ゲート前の空間を空ける。

 先ほどよりも遅いとは言え、AEXSSで強化された脚力で全力で走ってきて体当たりされたのだ。無事では済まないだろう。

 

 そのままニュクスを先頭にしてゲート内に突入した。

 数十mのゲート通路を一瞬で通り抜け、ニュクスは船内通路の壁に両足で横向きに立って速度を殺した後、床に降り立った。

 俺とルナはジェネレータの慣性制御を使い、通路中央で一瞬で停止する。

 

「船内に侵入した。分散して探索を開始する。」

 

 視野の左側にレベドレアの船内通路マップが開き、三人の位置が緑の輝点で表示される。

 俺は船首方向に向けて移動を開始した。

 事前の打ち合わせ通り、ニュクスは船尾方向、ルナは貨物室に向けて移動する。

 

「ノバグR023です。サポートします。左手に最初の部屋があります。資材室です。中に乗員が一人いますが状況に気付いていません。無力化して下さい。ドア開きます。」

 

 ノバグの声が目標を告げると同時に、左側の壁の黄色い枠線で囲まれていた部分が音もなく開いた。

 この船は自動ドアを採用している様だった。

 部屋の中は、色々な資材が置かれた棚で埋まっており、棚に遮られて部屋の反対側は見えなかった。

 左側に少し広いスペースが有り、一人の男がこちらに背を向けて備え付けのモニタ画面に向かって作業を行っている。

 男がこちらに気付くよりも前に背後に近づき、首筋に手刀を叩き付けて意識を刈り取る。

 男の身体が椅子から滑り落ち、床の上に伸びた。

 資材の積み上がった棚の間を縫う様に通路を歩き、部屋の中を一通り検める。

 

「この部屋の中には目標は確認出来ませんでした。次の部屋に移動して下さい。」

 

 歩いて部屋の入口に戻り、部屋を出た。

 左から歩いてきた男にぶつかりそうになった。

 

「!」

 

 全身黒ずくめの見慣れない人間に突然出くわした男が、目を見開いてこちらを見ている。

 声を上げられるより前に、鳩尾に右手を突き入れる。

 男は妙な声で呻き、身体を二つに折った。

 左手を首筋に向けて打ち下ろすと、意識を失った男が床に崩れ落ちた。

 

「ノバグ、資材室のドアをもう一度開けてくれ。」

 

 要求と同時に開いた資材室のドアの中に、襟首を掴んで持ち上げた男の身体を放り込んだ。

 重い音を立てて男の身体が部屋の中に転がると同時に、ドアが閉まる。

 軽く息をついて船首方向に向き直った。

 俺の前には、かなりの長さの船内通路が続き、所々にドアがあると思しき黄色い枠が見える。

 これを一つずつ検めていかなければならない。

 

「残り800秒です。」

 

 視野に入っている部屋の数に少しうんざりして溜息をつくのと、ノバグが少し減った残り時間を読み上げるのがほぼ同時だった。

 

 

 

遅くなり申し訳ありません。

仕事の関係でまた赤い旗の国に来ており、連日会議と会議メンバーとの飲み会で昼夜埋まってしまったお陰で、全然時間が取れませんでした。(言い訳)


今回ふとしたことから、悪評高いかの国のタクシーに乗る機会がありました。

ホテルマンがスマホアプリでタクシーを呼んでくれて、実際に来るまで40分。待ち惚けです。

いったん乗った後は、他の国のタクシーと変わらず、料金は日本の数分の一程度でしたが。

しかし、その国のローカル言語が殆ど喋れないというのは、色々な場面で面倒なことになります。

本作中では、脳内チップを利用してライブラリから言語セットをDLして利用できる様な設定にしていますが、その機能が自分にも欲しいと本気で思ったりしました。

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