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ラブステップ  作者: 里兎
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ハバネロスナックマーチ

事は金曜日の夜。

彼と並んでテレビを見ていた時。

私は彼にそれとなく話してみる。


「……そういえばさ、私明日先輩に頼まれて合コン行くことになったんだ」


「………ふーん。」


と言い。彼はそのままパーティー開けしたスナックをつまみながらテレビを見ていた。


「…………よしっ…!」


私は小さくガッツポーズをとる。

やっぱりさりげなく言う作戦は良かった。言わないで行くのも気が引けるし。だからといって余計な心配させたくないし。

だが。


「…………………えっ?」


彼はやっと私の言葉の意味に気が付いたのか私を見る。


「えっ!?ちょっと待って!?何で!?ゆいには俺がいるのに!?俺先輩に認められてないの!?」


彼が焦ったように私に詰め寄る。

あぁだよね。。。

いくらぼぅっとしている彼でも流石に気が付くよね………。

でもこの人は先輩にも認めて欲しかったのかな。そう思うとなんだか呆れた気持ちも湧いてくる。


「違うの!先輩がどうしてもって!人数合わせで呼ばれただけだから!」


兎に角と。

私は必死に彼をなだめた。


「人数合わせ……そっか先輩の言うことだもんな…断りづらいよな……~~~でもっやっぱり嫌だ…」


自分の頭をくしゃくしゃとしながら、なんとか理解してくれようとしてくれる姿がなんだか嬉しくて、私は彼の手をとる。


「大丈夫だよ?合コンって言ってもきっと飲み会みたいなものだし」


なるべく優しく彼に言うと。


「……じゃあもし俺が女の子のいる飲み会に行ったらどうする?」


拗ねた子供の様な目で彼は私を見た。

私は彼の不安を無くしたくて、手を繋いだままぎゅうっと抱きしめた。


「嫌に決まってるよ?でも。無理やり先輩に誘われたならしょうがないとも思う。何よりも私はあなたの事全部ひっくるめて信じてるから」


彼が強く手を握り返してくれる。


「……うん。俺も信じてる……」


その言葉を聞いて安心した私は、彼から離れて頭を撫でた。

そして。今更ながら気がつく。

今すごく恥ずかしい事をしたような気がする。

足の爪先からどんどんと熱が上がっていく気がした。

それをまぎらわすために、ハバネロ味のスナックに手を伸ばした。

すると。

彼が私の膝に頭を乗せてグリグリと頭を振る。


「でもやっぱりいやだぁーー!」


「!?くすぐったいからっ!!!」


その日は1日彼をなだめる為に時間を使ったのだった。。。



―――――次の日。


居酒屋に着いて。

みんなが集まって。

合コンという飲み会が始まる。

自己紹介も終わり。

各々話している中で料理がどんどんと運ばれてくる。


「あっ、この野菜取り分けますね?」


私が人数分野菜を取り分け皿に入れていると。


「齊藤さんって気が利くんですね?」


っと斜め前の男の人が私に言う。

いや。

いつも彼の時はしないし。

そういう訳じゃないんだけど。

単に大きなお皿の上の料理を知らない人とつつき合いたくないだけだし。。

そんなひねくれた気持ちを持ちながら、時を過ごしていく。

その間皆程よく酔ってきたのか隣にきた男の人が私に料理を勧める。


「これ辛いけど美味しいんだよ?食べてみてー?」


そのお皿の上に乗せられていたのは。

昨日食べたハバネロスナック。

ひとつ取ってそのまま口に放り込むと、程よい辛さが。。。

………。

…………。


『ゆいこれ好きだよね!?最後の1個だったんだ!』


思い浮かぶのは彼の笑顔。

いつもなら美味しく感じるお菓子も。全然味が分からなかった。

その後誰かにアドレスを聞かれたが。

理由をつけて。

断って。

すぐに家路についた。


――――ガチャ。


「ただいまー」


「おかえりっ!!」


彼がすぐに私の所に笑顔で駆けつけてくれた。

その顔を見るとふいに力が抜けるようにその場に座り込んだ。


「えっ!?何!?………ってもしかして結構飲んだ?」


彼は私と目線を合わせるようにその場にしゃがむ。

………確かに。

早く時間が経って欲しくて。

結構な量お酒を飲んだ気がする。


「しょうがないなぁ……」


そのまま私を抱き寄せてなんとか立たせてくれた。


「そんなに楽しかっ…たの……?」


ぽそりと呟く彼の声が私に届く。


「……全然楽しくなかった…全然楽しくなかったぞーー!」


酔っていたせいもあってか私は大きな声で彼の言葉に返す。

その大きさに慌てて。


「!?ゆいっ!?ご近所迷惑だからっ!声落として!?」


「料理も……お菓子も!知らない人と食べるより彼氏と食べた方が美味しいんだぞーー!!」


彼がその言葉を聞いて驚く。

酔うに私を見て、すぐにふにゃんと笑った。


「はいはい。分かったから。取り敢えず静かにして?」


私をベット迄運んでくれて。

私の言う通りに化粧落としシートを探してくれる。

今だからわかる。

やっぱり私は彼じゃなきゃ駄目だと。

他の人じゃ駄目なんだと。


「ゆいー?あったよー?洗面所の所にあった」


私の寝ている横に座って化粧落としシートの袋を手渡してくれる。


「……んー…眠いから代わりによろしくー……」


だけど私はすぐにその袋を彼に手渡した。


「……もう。しょうがないなぁ…お酒に酔ったゆいは甘えただね?他の人の前こんなことしちゃダメだよ?」


そう少し呆れながら笑う彼は、私の頭を自分の膝に乗せて優しくシートで私の化粧を取っていく。

……そんなの言われなくてもあなた以外に頼めないし。。

頼まないし。

……………。

それにしても優しく触る彼の手が体温があたたかくて。気持ちよくて。

うつらうつらと、夢の中に誘い込んでいく。

そうだ。

明日は一緒にスーパーでも行こう。

そして新しいお菓子を買って。

並んでテレビを見て。

一緒に食べて………。

そんな楽しい1日を想像しながら。

私は夢の中に意識を落としていった………。



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