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ラブステップ  作者: 里兎
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とろけるアイスクリームドリーマー

頭が痛い。

ズキズキする。

喉も痛い。

イガイガする。

目を覚ますが体が怠くて動かない。

隣を見ても。そこには誰も居なかった。

当たり前だ。

彼は仕事に行っている。


―――――――実は私が風邪をひいたのは昨日の事。

昨日はまだ頭痛と咳と鼻水程度だった。

仕事から帰って熱を計ると案の定というか。


『37・8℃』


その数字を見るだけで全ての体の力が抜けそうになる。

せめてもと、シャワーだけなんとか入りベットに倒れこむ。

少したつと玄関の扉の開く音がかすかに聞こえた気がした。


「ただいまー……あれっ?ゆい?………ゆい!どうしたの!?」


私の顔色の悪さを見たのかすぐに彼の手が私のおでこに触れる。


「あっつ!えっ!?熱!?どうして!?」


それにしても………。

彼は風邪に慣れてなさすぎじゃないだろうか?

どうしてって……私が聞きたいくらいだし!

頭が痛い筈なのにこういうことは冷静になれるんだなと自分に頷いた。


「だいじょう………ぶなわけないか……明日は金曜日……~~~~俺休もうか!?」


明日が休みじゃないのがそんなに焦れったいのか、顔が私より苦しそうだ。


「……いー…寝てれば直るから…ごめんね……?今日はソファで寝てもらってもいいかな?」


「えっ……それ…寂しくない?」


………寂しいか寂しくないかではなくてこの場合、うつるかうつらないかで考えてほしい。

彼はそのままうーん。と考えて良い案が出たのであろう、手をぽんっと打ちタンスから何かを探しだしそれをおもむろに私に渡した。


「じゃあゆい!これ!俺のパジャマ!」


「……………はいっ?」


これは風邪で頭がまわらないせいでない。普通の状態でも意味がわからない。。。


「明日ゆいが起きた時、俺たぶん仕事行っちゃってるし風邪だとやっぱり心許ないよね?でも俺のパジャマ着てれば俺と一緒な気がする!!……はず!!」


えっ…どうしよう。

なんかもうそっとしておいてほしい。

だけどこんなに瞳を輝かせながら彼は此方を見ていて………。

…………。

もぅ………しょうがないなぁ…。


「分かった……」


そう答えると、彼はにっこり笑って頭をくしゅくしゅと撫でる。

一瞬にして私の頭はボサボサになって。


「ゆいの仕事場には俺が連絡しておくから!明日の事なんて気にせずに寝てよ?」


そう言ってトンと優しく彼が扉を閉めた。


ふぅっと息をついて彼の言う通り、自分のパジャマを脱いで彼のパジャマに袖を通す。

…………。

……………。

確かに。。。

彼のパジャマを着ると彼の匂いが私を包む。

一緒に洗ってる筈なのに……。


「……ばーか。」


さっきまですごく辛かった筈なのに。

なんか安心する。

彼の言った通りになった気がして少し悔しい気もしたが。

取り敢えず。

今は目を瞑って風邪を治すことに専念しよう。



――――――現在に戻る。


お昼に1度、目を覚ました時は辛かったのに、2度目に目を覚ました夕方過ぎには、沢山寝たお陰か体が楽になっていた。

お腹が空いた。

何か食べよう。そう思い大きめなパジャマの裾を踏みながら冷蔵庫の前に行く。

すると冷蔵庫に貼ってある紙を見付けた。


『食欲無いなら冷凍庫を見て!』


そしてその下には変な絵らしきものが描かれている。


「………へび……?」


彼の絵はめちゃめちゃ下手で。

私には何が描いてあるのか全く分からなかった。

取り敢えずと、冷凍庫を開けてみる。

するとそこにはモウのバニラアイスが山のように入っていた。

…………。

………………。

……………………。


「ぷっっっ!!アイス買いすぎ!!」


きっと昨日私が寝た後コンビニでモウを買い占めたのだろう。

その姿を想像するだけで、面白くてしょうがなかった。

ひとまず山盛りのモウを1つ手に取って、ソファに座る。

蓋を開けて中蓋をびりびりと剥がすと、真っ白で雪のようなバニラアイスがカップいっぱいに敷き詰められていた。

そのアイスをスプーンで掬う。

少し固いが、スプーンが入らないほどではない。

そしてそのまま口へと運んだ。

口の中いっぱいに広がる甘いミルク味。

そしてアイスの持つ冷たさが火照った体をじんわりと冷やしてくれる。


「うーん!美味し!」


そこにはアイスだけでは決して満たされない何かが心を満たしていた。

1人だけど1人じゃない。

そんな気がするのはやっぱり彼のパジャマのせいなのか。


「……それでもやっぱり物足りないな…」


自然と出た言葉と共に、そのままアイスを食べ進めた。



―――――――ガチャッ。


家に帰ると電気が点いてて。

思わず早足でリビングに行く。


「ゆいっ!?」


彼女の名前を呼んでみるが、声が返って来ない。その代わりに返ってきたのは彼女の寝息だった。

ソファに近づくと毛布にくるまってゆいが寝ていた。

テーブルの上には昨日コンビニで買ってきたモウの空のカップが3個置いてあった。これも冷凍庫に貼ってある紙に描いたソフトクリームの絵の効果なのかな。


「いっきに食べたらお腹壊すよ?」


そんな事を言いつつも嬉しい自分がいる。

買ってきて良かった。

純粋にそう思えた。

だが。

今日は声を交わせないのか。

そう思うと寂しい気持ちも押し寄せた。

幸い彼女は座って寝ててくれたので、俺は隣に座る。

ゆいが起きていたら、うつるからと怒られそうだ。

それでも。

今日話せない分側にくっついていたかった。

そして熱を測るために、前髪をめくる。

近くで見ると、ゆいの白い頬が淡く朱色に染まっていた。

それからそのまま静かにおでこに唇を落とす。

おでこから唇にじんわりと伝わる熱は、少しながらもゆいに熱があることを教えてくれた。

だから。

温める意味も込めてぎゅうっと抱きしめる。


「早く風邪治して、スターウォーズ借りに行こうね?」


その言葉を言うと。

ゆいがほんのり笑った気がした。

うぅっ。。

かわいすぎる………。

我慢出来なくなりそうだ。。。

……………。

……………そうだ。

今日はこのまま寝てしまおう。

きっとゆいが目を覚ましたら怒るんだろうな。

それでも。

それでも今日はこの体温から離れたくないから。

俺はそのまま目を閉じる。


「おやすみなさい。」


それだけを小さな声で言って。

そこで眠りついた。



――次の日ゆいに怒られたのは又別のお話し。。。



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