うん、現実って悲しいね
「ん…よく寝た」
結局、制服のまま寝てしまった翔。
「とりあえず着替える……と、窓から入ってきたハチに刺されて死ぬのか。
優雅にぶれっくふぁーすと……ノドに詰まって死ぬのか。
普通に学校行くしかないのかよ」
未来予知で学校に行かざるを得ないことを確認した翔。
「なんであんな未来しか見えないんだよ。
あれですか、厄日ってやつですかっ!」
翔に狙いを定めたかのように落ちてくる植木鉢。
横っ飛びした翔が見上げた先には有名なアパートが。
「未来予知出来なかったら直撃だろ……。
これが厄日の実力か。
なんだかワクワクすっぞ!」
「オレンジ色のボールを7個集める話ですね、分かります」
「お、やっぱり分かる……ってどちらさん?
俺の視力30.0の眼で見ても、誰一人いないんだけど」
「未来予知、
使ってみれば?」
「ほぉ、俺の未来予知を知っているとは……お主、何奴!」
「だからさ、未来予知使っちゃいなよYOU!」
「よし、使わない。
使っちゃダメな気がする。
お前悪い奴っぽいし。
どうせなんか変な作戦でも考えてるんだろ、この変なテンション野郎?」
「………」
「どうした、図星ってやつか?
あまりにも図星すぎて、返す言葉も無いのかよっと!」
後方宙返りで避けてみる翔。
今度は包丁が落ちてくる。
アスファルトにブスリと突き刺さる。
「あの高さからなら、包丁じゃなくても十分殺される気がする……。
っていうかあれだな、未来予知使うと身体能力も上がっちゃう感じか。
スゲェな、俺ってイケメンで頭も良くて運動も出来るじゃん!」
「翔、残念ながら初めの二つは夢だ。幻想だ」
「おぉ、その声は将斗!
悪いんだけど、宿題見せてくれ!」
「その必要はないだろ。
お前はもうすぐ、消えるんだから」
「いや、日本語でおk……お前、なんで浮いてんの?」
「ああ、これか。
未来の技術ってやつだ」
「うん、日本語でおk」
「とにかく、翔。
お前には消えてもらう」
(……ここで動くと変なレーザーみたいなやつに焼かれる。
こうなったら!)
「お巡りさん、ここに露出狂がいます!
早く早く!」
「この辺り一体の時間は止めてある。
誰も来やしないさ」
「厨二病なんですね、分かります」
「さあ、お喋りは終わりにしようか。
お前は良い奴だったよ……はじめから同じ時間軸上で存在出来ていればな!」
「どういうことだよっ!?」
将斗の手から直径1メートル程の火の玉が無数に飛んでくる。
(1つなら避けれるのに……。
さっき、このままだとジリ貧、っていう未来が見えちゃったしな……。
未来予知は1つのことにしか使えないし……。
とりあえず避けながら逃げる!)
そんな翔の目についたのは、工事現場。
「もしかしたら!」
そう呟いて工事現場に向けて駆け出した翔。
蜂にいじめられそうな色の看板を飛び越え、着地する。
「右、右、左っ!」
倒れる看板、散乱するコーン。
「氷刃」
「のわっ!?」
将斗の手の上で構成された氷の刃が翔に向けて飛んでくる。
「どうした翔、俺はどんな属性でも使えるんだぞ?」
(なんて厨二っぷりだ……。
っていうか、適当に攻撃してるように見えるけど、段々と逃げ道が無くなってきてる。
どうするか……)
「氷雷」
今度は翔に向けて、真上から氷柱のようにして氷の刃が降ってくる。
「ちくしょう!
ネーミングセンスを気にする暇が無い!」
「氷壁」
翔の周囲を取り囲むように発生する氷の壁。
「袋のネズミってやつだな」
「ああ、どうやらそのみたいだ」
と、振り返って翔。
「骨くらいは拾ってやるよ」
「それはどうも。
でもな、俺はこんなところでやられるわけにはいかないんだ。
家に嫁を待たせてるから!」
♪〜〜〜♪
近くの公園にある時計が7:00を知らせたその瞬間、
「……まあいい、これで終わりだ!
火波」
押し寄せる火の奥に、少し悲しげな将斗の表情が見えた。
あれ、何だか短くなった?
と、思ったそこのあなた、大正解です。
一話一話の長さは、そのときの気分とかで決まってますので……。
長かったり、短かったりですが、今後ともよろしくお願いします!