出番が短いっていうのは悲しいこと
大体200メートルくらい進んだかしら、本当に分かれ道に遭遇した。
「これは右だったよね」
「そうだな」
いつの間にか、タカシが先頭に立っている。
その次に翔、ジルバ、私の順。
……なんでか弱い乙女がしんがりなの?
「ミカは別にか弱くないだろ」
「……なんですって?」
「いや、未来予知してみたら、"なんでか弱い乙女がしんがりなの?"って聞かれる未来が見えたから」
恐るべし、未来予知。
「そんな事より早く先に進もうぜ。
今ならモンスターも少ないみたいだし、ミカもその方が良いだろ?」
「ジルバ、アンタって案外良い奴なのね」
「案外は余計だろ」
「さ、早く進もう!」
「「そうね(だな)」」
「全速前進だっ☆」
……主人公はまともなジルバの方が良いんじゃないかしら?
下らないやりとりから五分、私達は早速次の分かれ道にたどり着いた。
「ここは左だな?」
「ああ、左だ」
歩くこと十分、また分かれ道に遭遇した。
ひ、ふ、み……全部で十本くらいの道があるけど、こういうときだけ便利な翔のおかげで、どの道に進むべきかは分かってる。
「右から3番目よね?」
「…………」
「翔?」
「…………」
「翔、聞いてるの?」
「……やっぱり気が変わった。
左から3番目だ」
「どうして?」
いつもなら、魔法の一発でも叩き込んでやるところだけと、やけに深刻そうな顔をしてたから、それはやめておいた。
「それはジルバに聞いてみたらどうだ?」
「「え?」」
私ももちろんだけど、タカシも驚いている。
「翔君、どういうこと?」
「……来るぞっ!」
それは、突然にやってきた。
荒れ狂う炎の波。
「最終奥義、ブ○ーハ!」
熱……くない?
「翔のおかげでなんとか炎は防いだけどジルバは?」
この流れからして聞くまでもないことだけど、聞いてみることにした。
「俺はここだよ」
「っ!?」
いつの間にか後ろに回られていた。
急いで翔達の方に飛び退く。
「未来予知にも間違いがあるのかと期待したんだけどな……残念だ」
「残念だと?
何が残念なんだ?」
「俺はな、ジルバ。
無益な殺生が嫌いなんだ」
な、なんなの、この殺気は。
魔識なんて使わなくても分かるくらいの殺気が、翔を取り囲んでいる。
「……言ってくれるじゃねえか」
ジルバの方の殺気もかなりのものだけど、翔のそれには全然かなわない。
「我、敵を氷とす力を求む。
発動、ユリウスの魔法陣」
「属性付与、氷」
「なあ、やめにしないか、こんな無駄な争い」
「そんな気はしないな!」
「そうか……」
「ハアッ!」
地面を蹴ったジルバが、翔に向けて一直線に突き進む。
翔は魔法を使おうとするわけでもなく、ただ、ジルバに向けて右手をかざしただけだった。
「死ねえっ!」
氷の剣を振りかぶったジルバが翔に向けて斬りかかる。
「翔!」
「翔君!」
ヒュッ
私に聞こえたのは、小さな小さな風切り音。
でも分かったことが二つある。
一つ、翔がその右手から、尋常じゃない量の魔力を直接打ち出したってこと。
二つ、そんなものを食らったジルバが生きているはずがない、ということ。
「……さ、左から3番目だ」
「「…………」」
無言の私達は、翔の後を追う他に、何も出来なかった。
何だかよく分からないことになってますが、それはまた次のお話……のはず。