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Eclipse  作者: 楪美
【2】-Ⅲ
41/41

【Ⅱ】XX







「馬鹿だなあ、手放しちゃうなんて」



呆れと落胆で、声に出さずにはいられなかった。



ホームボタンで画面を落とし、スマートフォンを枕元に放ってベッドから身体を起こす。



カーテンのない窓の向こうの夜景をひっそりと見下ろしながら、まだ低い位置で満月がぼんやりと浮かんでいる。眩く明るい電灯やネオンに負けて、雲もないのに霞んでいるように見えた。



つけっぱなしだったパソコンで画像ファイルを呼び出し、ディスプレイいっぱいに表示させる。灯りのない部屋で、その長方形の中で笑う彼女だけが、光を発していた。指に触れるのは、無機質な温度を持った硬いプラスチックだけ。柔らかな肌には、程遠い。



「今頃、どうしてるのかな」



綺麗に弧を描いている唇をなぞってから、画面の隅で実行中のプログラムのウィンドウを操作する。動物のうなり声に似たモーター音が、勢いを増しながら加速していく。



―――Whole data and programs, everything will be erased.



Execute?



「Why not?」



エンターキーが下した指令を合図に、モーター音が加速する。




不安定で不実なこんな世界は、指一本で簡単に壊せる。




大事な箱を開けずにはいられなかったパンドラのように



怒りと嘆きのうねりに流される大地を見届けたノアのように



壊れて狂ったその先に、何が残って、何が産まれるのか。



胸に巣食い疼く穴が、その答えを欲している。



誰かの気紛れで定められた道筋を運命と呼ぶのなら、別の誰かが、待ち受けるその未来を書き換えたっていいはずだ。



「今度は、僕の番だ」




宿命も、摂理も関係ない。




太陽も、月も、この手で操ってみせる。




Part 1 Fin





今度こそPart1終わりです。



少しでも読んでくれたみなさま、ありがとう。

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