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 もう何年だろうか


 俺が宮島を恨み続けていたのは。


「‥どうしたの?藤田から話しかけるなんて」

今だけ、宮島神に山より高く海より深く感謝するね。

・・・まあ、目の前の彼女はそんな俺なんて見ていないのだけど。

「さん付け希望。あたし用がないのに話しかける程暇じゃないから」

「これはまた一段と、冷たさに磨きが掛かったね。」

ふん、と鼻を鳴らす藤田。こんな行動、他の女子じゃ見れないよ。

「・・・あいつはいつになったら気づくわけ?」

それ俺に聞いちゃうー?と苦笑した。宮島はいつもこれを、嘘くさい爽やかスマイルと呼ぶ。

「湯鷹くらいにしか聞けないっつのこんなこと。・・・だってあんなこと言われたらさぁ」

あぁ、本当に彼女は俺を見ていない―――というか、あいつしか見ていない。

あんな愚痴で言っても聞き流しそうな言葉でさえ、藤田は聞き逃さない。

本当に単純である。当の本人は特に意味がないと思っているのだから。

「・・・知りたい?」

「何のためにあんたんとこに来てると思ってんだ」

「だよねー」

今まで何度我慢して、こんな爽やかに笑っていると思ってんだ君たちは。

二度くらい本音で困らせても罰は当たらないよな。

「藤田は・・・」

「藤田さん、は?」

「はいはい。藤田さんはさ、なんで宮島にあんなご執心なの?」

「面白いから」

清々しいほど間髪入れずに答えた。・・・困らせていないからノーカウントにして欲しい。

藤田の言うことが相手に迷いや困惑など見せることはない。いつも直球の台詞だ、宮島と話すとき以外は。

そして俺にだけ、いや俺だから気づくこともある。時にこれはものすごく残酷だ。


「・・・あと、あいつはあたしがいないとダメだから」

宮島のことを話しているときでなければ、彼女から極上の笑みを拝むことはできない。


「・・・はい降参です。あなたには敵いません」

「今頃気づいたの?おっそ」

毒舌だからというわけじゃないが、やっぱり藤田と話すのは胸が痛む。

じゃあ・・・これが最後の頼みかな。

「分かった、今度宮島に聞いてあげるよ。その代わり、今日一緒に帰らない?」

藤田は表情変えず淡々と返す。

「なんであんたと帰んなきゃなんないのくたばれ」

「容赦ないね、率直に傷つくわー。・・・でも、どうせ今は一緒に帰る人いないでしょ?」

 藤田の顔のパーツが険しく寄る。心の中では、意地悪言ってごめんと呟く。

「・・・くたばれ宮島」

「追い討ちのような返答だけど、まぁ了解を得たということで・・・いいかな」

俺は久しぶりに心の底から笑みが零れた。

単純なのは俺も、か。一緒に帰れるだけなのにこんな舞い上がっちゃって・・・これをいつも何も言わずして出来ちゃうお前を、心底憎まずにはいられないよ。

藤田はまた違う意味で眉間にしわを寄らせた。

「あ、もう一人のバカな友人連れて来ないでよね。あいついると馬鹿が移りそう」

「本居ドンマイ」

宮島・・・親友の悪あがき、しかと目に焼き付けたほうがいいんじゃない?






 藤田のスパルタ制作作業のおかげで、なんとか学年誌は終わることが出来た。

 そして、やっぱり俺には藤田がいないとなんも役に立たない、という現実を改めて突きつけられた。

三橋さんだって顔やスタイルでは勝っていても、能力でいったらやはり藤田には敵わないのだ・・・いや、褒めてるよ藤田のこと。

 三橋さんが先生に出来あがった学年誌を提出している間に、教室にいたのだが藤田はそのまま先に帰ってしまった。俺に奢れとも言わないで、全く珍しいったらありゃしない。

「いや、勿論いつも奢りたいわけじゃないさ。ただこう、たまには二ミリ程度の手助けに感謝くらいしてやってもいいかなーとか・・・」

「あ、宮島君待っててくれたの?良かったのに先に帰ってても」

 内側からドキドキと音がする。こ、この胸の高鳴る音は・・・どうみても俺の独り言が聞こえていないか心配になったせいだ。

「あ、いえ別にそんなんじゃ・・・いや、そうなんです」

 あぁ、なんて俺はスマートじゃないというか素直じゃないというか。こういうところがとろ臭くて嫌なんだよねー・・・あいつがよく言ってる台詞だ。

 別に・・・藤田といつも一緒にいる理由が、幼なじみだからってだけなわけじゃない。

 向こうがそうとしか思っていなくても、気になんかしてないさ。うん、別にもうしょうがないさ。一緒にいられるならそれでいいさ・・・今いられてないけど。

 ふと教室の窓を見る。校門には生徒がちらほらいたりいなかったり。あぁもう総下校の五時は過ぎていたんだな。

 すると、軽く門にもたれかかっている爽やかくんが目に引っ掛かった。誰かと思えば俺の友人湯鷹くんではないか。こんな時間まで、あいつ部活動に入ってる奴だったっけ?


「―――あ、そういえば明日暇かしら―――」


 誰か、待ってんのか?本居と遊ぶ日は今日じゃねぇよな。


「―――学級委員の皆が集まってお疲れ様会でもやろうかなって―――」


 ここで俺は窓に思わず手を貼り付けた。

 校舎から出てきたそいつに向かって、爽やかスマイルで手を上げる湯鷹。


「―――多分坂の下のお好みやだと思うんだけど―――」


 そいつに手を差し出すと、いとも簡単に繋がれた双方の手。

 そして湯鷹は、それを俺が三階から口を開けて見ているのに気がついた。


「―――参加する人はそんなに多くなさそうだから―――」


 そいつはほとんど後ろ姿で表情が確認できない。

 湯鷹はいつもの五倍くらい嘘くさい爽やかスマイルを俺に魅せて、端整な口をゆっくりと動かす。


「―――あと、出来たら未央ちゃんも誘って欲しいんだけど―――」



「・・・りだ」

「えっ、もしかして喧嘩中?」

「無理だ」

「あ、ごめん、なんかその日予定あったの?」

 隣で三橋さんが困惑しながら俺を見ている。


 もう藤田と湯鷹は学校の塀を曲がったのか、かろうじて見えるのは伸びた二人の影。


 俺は哀しくもそれを目で追いながら、小さく言葉を吐き出した。


「んだよ・・・お前、今までなんも言わなかったじゃねぇか・・・」




『―――俺と藤田、どっちとる?』



続きはまだ執筆中です。はい。お分かりかと思いますが不定期連載です。まとめて短編でいいじゃねぇかこのやろうとお思いだろうと思いますがまあ気にせず、どうせこんなグダグダ小説、略してグダマンなので気長にお待ちください。

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