~序~
処女作っ!
「隊長~っ」
そう呼ばれた男は城壁の上でぼんやりと空を見上げていた。 ただ何を考える訳でもなく抜けるような蒼天に流れる白い雲を眺めていた。 そのせいもあって一瞬間が空いてしまっていた。
「呼ばれたら返事……」
そういいながらやって来た男は手の平を前に出してきた。 その手の平を放けたまま見つめた後、ようやく目を合わせ
「おぅザーク、どした?」
と笑顔で応えた。
「お金入ったんでしょ? 返してくださいよ今回の分」
そう言うやさらに手の平を前に突き出してくる。
隊長と呼ばれた男の笑顔は苦笑いに変わりながらも呆れ半分、諦め半分に
「いちいち細かい男だな、そんなんじゃ女にモテんぞ?」
などとぼやきながらも、懐から布の小袋を取り出し金貨を一枚その手の平に乗せてやった。
「余計なお世話ですよ。それに隊長と違って一人だけにモテればいいんですよ、僕は。」
そう言って笑いながら男は金貨をしまった。
隊長と呼ばれた男はそれを聞き流し苦笑いを嫌らしい笑顔に変えながらザークの首に腕を回し
「ザーク君の懐も温かくなったし今夜はザーク君の奢りで皆で飲みに行くかっ!」
そんなふざけた事を言い出した。 苦笑しながらも、ザークはそれを解こうともがいてみたが黒く焼けた無駄もなく柔らい太い腕はびくともしない。諦めと呆れ、半々の表情でため息をつきながら
「わかりましたよっ! だから腕っ、離してくださいっ」
隊長と呼ばれた男は、ニヤリと笑いながら腕を離し
「よしっ 善は急げだ 行くぞっ!」
言うやいなやまた首に腕を回しながら頭を撫で回した。
「うざいっ!」
ザークは涙目になりながら騒いでいた。 そんな様子を城壁の階段を下りながらニヤニヤとしながらみつめ、ふと振り返った。
そこにはさっきと変わらない、蒼天…… しかし遥か山並みには暗雲が広がろうとしていた………
大陸の西にある半島…… こぶの様に突き出たそこには二つの国が在った。
大海に面したザクラスは航路の中継地点として賑わう国であった。他の国の文化、道具、技術、なんでも柔軟に取り入れ栄えた国だ。
もう一つはガメントス。三方を山脈に囲まれた大陸に面した国。 面した山々には多くの鉱物がありそれを主な産業とし栄えていた。
時は戦乱の時代であり、大陸では戦争が絶えなかった……
二つとも王の治める土地 当然二人の王も類に洩れず、大陸に打って出ようとする野心を持ち合わせていた。
そうなるとまずは半島の統一……
ザクラスはガメントスを飲み込まなければ大陸へはでれず 逆は後顧の憂いを断ちたかった。
そんなわけで二つの国はもうすでに20年もの永きに渡り半島統一を目指し争い続けていた。
「いい空ですね~」その女性は書物から目を上げ、窓から見える景色を眺めて一人ごちた。
放けているとドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
そう言うと一人の女性が入ってきた。
「リトス……」
姿を確認するやいなや額を手で押さえながら激しくため息をはいた。
「……? あまりため息ばかりついてると幸せが逃げますよ、サラ。」
サラと呼ばれた女性は額からこめかみへと手を滑らせ押さえながら近づきリトスの両方のこめかみに拳を押し付け、ぐりぐりしながら
「だ・れ・の・せ・い・だぁぁぁ?」
と、歯を食いしばりながら呟いた。
「はぁうぅ…… ごめんなさひぃぃ」涙目になりながらサラの拳を押さえるリトス。
「なんで謝るのかな? リトスは?」
さらに拳に力をこめ尋ねるサラ。
「……? …………っ? はぁいぃ?」
涙目でパニクるリトスを眺め、苦笑しながらサラは拳を下ろし
「クリストファー様との約束の時間です。」
そう言うと
涙目で非難めいた視線を向けていたリトスが
「あっ、クリちゃんと約束してたんだ 忘れてた……」
と、言うやサラはこめかみに青筋を浮かばせながらリトスの頭を鷲掴みにし
「……あんだって?」
と呟くと
「ヒィッ、 ……くっ、クリストファー……様。」
リトスは冷や汗を流しながら訂正した。
「よろしい…… んじゃ行くよ。」
言うやいなやサラはリトスの襟首をもって引きずり歩きだした。
「まだ準備してないよぉ!?」
「かまわん、時間がない。」
「そんなぁぁぁ」
引きずられたままのリトスが最後に見た部屋からの景色はまどの外の青い空だった。
時間はかかると思いますけど……
完結させたいなぁ……