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くっ殺女騎士は魔王の執愛から逃れられない  作者: 藤烏あや@『ヤンデレ皇王のつがい様』発売中


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第二十六話

 いつの間にか閉じられていたカーテンの隙間から朝日が漏れる。

 アイビーが身じろぎをすると、すみきった空気が僅かに震えた。

 動かしにくい体に違和感を覚え、徐々に意識が覚醒していく。


(ん、なんか重いような……?)


 しぱしぱとする目で辺りを見ると、間に挟んだテディベアごとアイビーを抱きしめて眠るライが見えた。

 大きな手は腰に、長い脚はアイビーの足に絡められて身動きが取れない。

 テディベアに顔を寄せているせいで、アイビーの頬に寝息がかかる。


「な、え、は!?」


 体は後退ろうとするが、がっちりと掴まれていて離れられなかった。

 それどころか近すぎる距離に、アイビーの顔がぼっと一瞬で沸騰してしまったかのように赤くなってしまう。

 何度か体を捻ってみたり、足をずらしてみたりと奮闘するが、ライの体は全くと言っていいほどぴくりとも動かない。


「お、起きろっ!」

「んん……」

「頼むから起きてくれっ……!」

「ん~……どうしたの、大声出して……」


 うっすらと目を開けたライは悩ましげに眉を寄せた。

 少しはだけた寝間着から見える鎖骨が妙に色っぽく、アイビーは視線を泳がせる。

 アイビーが言葉に詰まると、問題なしと判断したのか、ライの瞼はゆるゆると閉じられていく。


「寝るなっ!」

「だって……まだ起きるには早いよ……?」

「せめて手を離してくれ」

「ん~?」

「そしたら二度寝でもすればいいだろう」

「え~?」


 話が通じているのか分からない返事をするライに、熱くなっていた体も気にならなくなってきた。

 羞恥心よりも苛立ちに比重が傾きかけたのを感じ取ったのか、ライは自然な動作でアイビーから手を離した。

 肘をついてアイビーを見たライが、はたと動きを止める。

 ようやく自分の体が青年姿になっていると気がついたらしい。

 ライは間に挟まっていたテディベアが少し潰れているのを二度見し、気まずそうに視線を下げた。


「えっと、なんかごめんね?」

「まったくだ」


 アイビーは腹筋だけで起き上がり、布団からでようと寝台の外へ足を投げ出す。

 立ち上がろうと床に足裏を下ろしたが、力を入れる前に腕を引かれた。

 予想外の力にアイビーは後ろへと倒れそうになるが、いつの間にか傍にいたライに受け止められる。

 背中に伝わる体温に、アイビーの心臓が跳ねた。


「どこいくの?」

「朝のトレーニングだ」

「そっか。じゃあ戻ってきたらこの間の魔石、加工しようか」


 耳元で囁かれた声に、ぴくりとアイビーが反応する。


「……覚えてたのか」

「もちろん。あー、ちょっと忙しくてすぐに時間がとれなかったのは謝るよ。ごめんね」

「……いや、いい。ひとまずトレーニングに行ってくる」

「うん。帰ってくるの待ってるね」


 名残惜しそうに手を離されると、アイビーはすくっと立ち上がる。

 足早に寝室の扉へと向かい、ドアノブに手をかけて振り向いた。


「行ってくる」


 ほんのりと色づいた頬を隠すようにアイビーは寝室を飛び出した。

 ライはばたんと勢いよく閉まる扉を見つめる。

 そして我に返ったあと、思わず吹き出してしまった。


「ふふっ、可愛いなぁ。君もそう思うでしょ?」


 いまだ寝台で横になっていたテディベアを抱き上げる。

 片手で抱くには少し大きなそれをサイドテーブルにそっと置いた。

 流れるような手つきでサイドテーブルの引き出しを開けると、そこにはまだ短剣が鎮座している。


「不用心だよ、アイビー」


 ライはあまりにも杜撰な管理に苦い笑いを零すと、何事もなかったかのように引き出しを閉めた。

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