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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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もう一つの姿

 杏那が目を覚ますと自室のベッドだった。

(あ、昨日すごく眠くて、あのまま寝ちゃったのね…。はっ!白虎様は!?)

杏那は慌てて起き上がり白虎を探して隣を見下ろす。

「えっ…!?」

杏那は硬直した。

(ここ、私の部屋じゃなかった!?いや、ベッドも家具もなにもかも私の部屋で間違いないはず…この人、誰!?)


 杏那の隣にはとても美しい青年が眠っていたのだ。とても静かに寝息を立てている。月光に照らされ、白銀の髪はより美しく輝いている。肌はとても滑らかで色素の薄い感じがする。彫りの深い顔立ちは月光に照らされ、殊更に神秘的な魅力を醸し出しているようだった。

「この神聖な気、もしかして白虎様?白い肌に白銀の髪、このかぐわしい香り、やっぱり白虎様ね。」

杏那は答えにたどり着いたが疑問が頭を駆け巡った。

(爺や、人の姿を持っているなんて言ってなかったじゃない。爺やったら、何だかまだまだ隠しているようなのよね。まぁ、先代とのことはちょっと聞きづらいんだけど。えーっと、それにしても気づいた以上、このまま隣で寝ているなんてできないわ。もうすぐ世が明けるし、もう起きてしまいましょう。)

杏那は白虎を起こさないように、そっとベッドから降りようとしたが、突然ベッドの中に引き戻された。

「え!?」

杏那は思わず小声を上げた。気づくと、白虎の両腕に包まれ、ベッドの中で抱きしめられている。杏那は白虎が寝ぼけているのかと思いながらも戸惑い身動き一つとれない。


「まだ早い。もう少し休んで。僕もまだ休みたいから。」


聴覚の奥にまっすぐ届く、透き通るような声。白虎の吐息が杏那の耳をくすぐった。白虎は優しく杏那の頭をなでると安心したようにまた眠った。杏那もまた守られているような温かい気持ちになり、自然と眠りに落ちていった。


 朝日が昇り、杏那が二度寝から目を覚ますと今度は隣に先ほどの青年の姿はなく、虎の姿の白虎もいない。

(夢だったのかしら…。)

杏那はそう思いながらも心のどこかで白虎は大丈夫、と感じていた。杏那はベッドから降りると顔を洗い身支度を整える。今日は夕方には観月祭があるが、日中は特に予定もなかったので、クローゼットからお気に入りのワンピースを選んだ。白地の柔らかいシフォン素材が重ねられた軽くて、でも暖かい、この時期にちょうど良いワンピースだ。杏那の好きな花の刺繍が入っている。着替えを終えると杏那の部屋から見える広々とした中庭に気配を感じた。

「…白虎様。」

杏那は走って階段を降り、急いで中庭に出た。白虎はさきほどの青年の姿で長い白銀の髪を風になびかせている。とても上質な白地に青の刺繍の入った服に外側は濃紺、内側は白のマントを纏っている。まるで中世の騎士のような出で立ちだ。陽光に照らされたその姿は神秘的でありながら、洗練と勇猛の共存を感じさせる。白虎は朝日を十分に浴びながら空を見上げ気持ちよさそうに深呼吸をしている。

「あの…。」

杏那は声をかけた。すると白虎が杏那の方を振り向いた。虎の白虎と同じ、サファイアの瞳が二つ、杏那を捉えた。白虎は静かに杏那の方に歩み寄ると、杏那の前で片膝をついた。


「私は太陽神より遣わされた神獣・白虎、名はレオ。当代の太陽の乙女をお守りします。」


そういうと白虎は杏那の手をとり、膝をついたまま手の甲にキスをした。レオは杏那を見上げると優しく微笑み、立ち上がった。今度は杏那がレオを見上げる形になる。レオは人の姿の時は背が高く、杏那の身長を40㎝は優に超えている。杏那の心臓はドキッと音を立てた。杏那が返事をできずにいると、レオが続ける。

「当代の乙女の名は杏那といいましたね。私のことはレオとお呼びください。杏那にはとても助けられました。あの時は私を見つけ、闇から救ってくれて本当にありがとうございました。昨日もずっと貴女のそばで神気を満たせたおかげで、ようやくこの姿に戻ることができました。」

杏那はその言葉を聞いて我に返った。

(そうよ、何があったのか聞かなくちゃね。)

「レオ様、改めてご挨拶をさせてください。神城杏那と申します。お察しの通り、当代、太陽神様のお力の一部を受け継ぐ者でございます。神獣様とは知らず、今日までのご無礼をどうかお許しくださいませ。」

「杏那、顔を上げて。君が謝ることなんて何もないよ。僕は神獣で君を守り導く立場なのに、逆に僕が助けられてしまった。謝るのはこちらの方だよ。誕生日の日に間に合わずすまなかった。」

「いえいえ、そんな謝らないでくださいませ!それよりも何があったのか聞かせてくださいますか?」

「あぁ、もちろん。でもその前に執事の彼が何か用事があるみたいだよ。」

レオはそういって杏那の後方を促した。

「お話し中、申し訳ございません。お二方とも朝食の準備ができましたので、もしよろしければ朝食をお召し上がりになられ、ゆっくりご歓談されてはいかがでしょうか?」

「爺や、おはよう。それもそうよね。レオ様に立ち話をさせるわけにはいかないものね。レオ様、朝食にご案内いたしますわ。」

「あぁ、ありがとう。」

レオは返事をして杏那に微笑みかけた。杏那の心臓はレオの甘い笑顔にまたドキッと音を立てるのだった。一方、豪は杏那には聞こえないくらいの声でレオに話しかける。


「レオ様、お嬢様をお認めになったのですね。」

「勿論だ。彼女には助けられたからね。受け継いだ力とは言え、あれだけの使い手は歴代の中でも目を見張るものがあるよ。もしかしたら、”彼女”のことも助けられるかもしれないね。」

「レオ様。いえ、私はそんなことは…。」

なにやらレオと豪だけの秘密があるようだ。


 ダイニングルームでの朝食はレオの好みに合わせて、新鮮なフルーツにアボカドトースト、目玉焼き、サラダ、紅茶、と健康的なメニューが並んだ。レオの好みを熟知しているらしい豪の配慮だった。レオから褒められた豪は「当然のことでございます。」と言い、驕らずも嬉しそうだった。

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