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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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サファイアの瞳

 翌朝、杏那が目を覚ますと子虎の姿がない。杏那は慌てて起き上がると、窓のそばで朝日を浴びて伸びをしている子虎の姿があった。その姿に杏那は胸を撫で下ろした。杏那に気づいた子虎はこちらを振り向き、宝石のように美しい青い瞳でこちらを見ている。その青は太陽に照らされキラキラと輝き揺れる海の水面のようでありながら、美しい夜空を思わせるサファイアのような強さをも秘めている。杏那はゆっくりベッドから降り、子虎のそばに歩み寄る。そばに膝をつき、子虎の瞳を見つめて話しかける。

「小さな虎さん、おはようございます。ようやく目を覚ましたのね。体調はいかがですか?」

 杏那の瞳からはどこか懐かしむような、同時に慈しみと安堵の色が見て取れた。気持ちが伝わったのか、子虎は警戒することなく杏那の膝の上によじ登り、膝の上で丸くなった。

(か、かわいい!!私に甘えてくれている!あぁでもやっぱりすごく神聖な気を纏っているし、おそらく相当高貴な存在。いくら小さくてふわふわでかわいくても失礼のないように接するべきよね。)


杏那は子虎を抱きしめたい気持ちを自制しつつ、そっと抱きかかえて立ち上がった。

「ねぇ虎さん、おなかはすいている?…そういえば言葉は分かるのかしら?」

「・・・・・。」

子虎はなにも言わない…が、杏那から離れようとせず、のどをゴロゴロならしている。

杏那は着替えるために子虎をソファに座らせた。

「着替えたら朝ご飯を食べに行きましょう。少しお待ちくださいね。」

子虎は言葉が分かるかのように大人しくソファで待っている。

杏那は着替えをしながらふと思った。

(ん?もしかして昨日より少し大きくなっている?重さも若干重くなったような…私が寝起きのせいで重めに感じたのかしらね。)

着替えを終え、身支度を整えると子虎を連れてダイニングに向かった。


 ダイニングに入ると豪と理世が待っていた。

「おはようございます、お嬢様。良くお休みになれましたか?」

「おはようございます、杏那様。」

「爺や、理世さん、おはよう。おかげさまでしっかり回復したわ。それに見てちょうだい。かわいい虎さんが目を覚まして、なぜかずっと私から離れようとしないのよ。」

杏那は嬉しそうに抱えている子虎を見せる。

「虎さんが食べられそうなものは何かあるかしら?」

「虎でしたら本来肉食のはずですので生肉か、幼い間はミルクを飲むかと思われますわ。両方ご用意して参りますね。」

そういって理世はキッチンの方に虎用のご飯を探しに行った。

杏那はダイニングテーブルの椅子に腰かけるが、この時も子虎は離れようとしない。

「お嬢様に大変懐いておられますね。ですがお食事の間は少し離れていただきましょう。」

豪はそういうと杏那の隣の椅子二つを隙間なく並べ、子虎が座れるように整えた。

「ありがとう、爺や。虎さん、少しの間だけ、こちらにいてくださいね。」

杏那は子虎に話かけながら、隣の椅子に子虎を置いた。子虎は大人しく椅子の上で丸くなっている。


「杏那様、虎様用の生肉とミルクをご用意いたしましたわ。」

理世が持ってきた子虎用の食事を受け取ると、杏那はそれらを子虎の近くにもっていき尋ねる。

「虎さん、お肉とミルク、何か食べられますか?」

子虎はサファイアの瞳で杏那を見上げると、少しだけ首を横に振り、少女の膝の上に戻って丸くなった。


「どちらも嫌いなのかしら。うーん…せっかく用意していただいたのだけど…。」

食べそうにない様子を三人で見守っていた。すると杏那が言う。

「この虎さん、とても神力が強いの。だから本来は私たちと言葉で意思疎通ができるはずなのよね。でもあれだけのことがあったから、まだ回復に時間がかかるのか、嫌われてはいないと思うけど私たちとはお話してくれないのか…」

杏那が少し落ち込んでいると豪が声をかける。

「神力が強いとお嬢様がお感じになるのなら、それは回復してきている兆しではありませぬか。まずはお嬢様が朝食を摂られてから、神官に話を聞きに行くとしましょう。」

「えぇ、そうね。」

「……。はっ!」

「爺や、なに!?どうかしたの?」

「いえ、今ふと思い出したのですが、昔、虎の姿を持つ異界の知り合いがいまして、その方は新鮮なオレンジが好きだったのです。ですので、もしかしたらと…。」

新鮮なオレンジと聞いて子虎の耳がピクっと反応した。その様子を見逃さなかった三人は早速新鮮なオレンジを剥いて子虎に差し出してみる。すると子虎は少しずつ新鮮なオレンジを食べ始めた。

「爺や、お手柄だわ!よく思い出してくれたわ!本当にありがとう!!」

「月城様、さすがでございますわ!」

杏那と理世は豪に賛辞を贈った。

そして杏那と子虎が朝食を食べ終えると、三人は子虎を連れて屋敷の隣にある神殿へと向かった。

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