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冒険者養成学校への入学

 翌日、玲人とセレアは冒険者養成学校の事務所に来ていた。

 今朝はここで、玲人の入学手続きをしていた。

 

「えっと、名前は天府玲人、住所は今の宿屋っと。」

 

 玲人は書類に一通り必要事項を記入した。

 

「宜しい、それではクラスの適正検査をしよう。」

 

 白い髭を生やした年配の男性職員が慣れた様子で説明する。

 

「クラスの適正?自分で選ぶことはできないの?」

 

 玲人は隣にいたセレアに尋ねる。

 

「勿論強制ではないわ。世の中には剣士の才能があっても、武闘家になる人だっているんだし。ただ、検査で出た結果の信憑性は確かだから、よっぽど他にやりたいことがないなら、従った方がいいと思う。」

「そうか。」

 

 二人の前に、男性職員が透き通ったオーブを置く。

 

「さあ、これに手を触れるのじゃ。さすればそなたに相応しいクラスが分かるじゃろう。」

「それじゃ、さっそく。」

 

 玲人がオーブに手を触れた途端、オーブが強く光り輝く。

 たちまちオーブは様々な色が混ざったカラフルなものになった。

 

「あの、これはいったいどういう結果なんでしょう?」

 

 玲人が尋ねると、男性職員は目を見張って口をわなわなさせる。

 

「そ、そんな、馬鹿な…いや、このオーブの調査結果は確かなもののはず…!?」

 

 少しの間をおいて、冷静さを取り戻した男性職員は話し始める。

 

「いや、失礼。そなたに相応しいクラスじゃが……、全部じゃ。」

「ぜ、全部!?」

 

 今度は玲人の後ろにいたセレアが驚く番だった。

 

「それだけではない。魔法も全属性使い放題で魔力も計測しきれんぐらいにある。これほどの逸材、我が校始まって以来じゃ。」

「ただ者じゃないと思ってたけど、これほどだなんて。」

 

 セレアが玲人を見上げる。

 

「全部に適性があるって言っても迷うな。あ、かっこ良さそうだから剣士はどうかな。」

「良いと思うぞ。しかし、さっきも言った通りそなたはどんなクラスのスキルでも使える。剣を持ちながら、白魔導士や黒魔導士と同じスキルを使うという、本来ならあり得んこともできるじゃろう。」

 

 特に驚くでもなく、普通に職員と話す玲人を見てセレアはため息をつく。

 

「まったく、大した奴が来たわね。」

 

 そう呟きながらも、セレアはどこか面白そうだった。

 


 

 冒険者養成学校の午前中は、再び上級生と下級生の合同の実戦訓練だった。

 

「えっと、これより、その、昨日と同じように、グループを組んで魔物の討伐を……」

「リアム先生、やっぱり私が説明します。」

 

 しどろもどろになるリアムと、それをフォローするスピアを尻目に、生徒達は皆グループを組んで討伐対象の魔物を探していた。

 

「アイリスにティアちゃんだね。宜しく。」

 

 セレアは自分の友人のアイリスと後輩のティアを玲人に紹介していた。

 

「腕利きのライルとレジーをあっさり倒してしまうなんて、流石は期待のルーキーね。」

 

 アイリスはにっこり笑って話す。

 

「す、凄いです!冒険者養成学校に通う前からそんなことができるなんて!」

 

 ティアもしきりに感心していた。

 

「いや、そんな。相手が弱すぎただけだよ。」

 

 玲人は頭を搔いて照れる。その時、

 

「来たぞ!デスコンドルだ!」

 

 別グループの生徒達の声が聞こえた。

 空を見上げると、人間の背丈ほどもある獰猛そうな怪鳥が向かってきている。

 一番近い位置にいるのは玲人達のグループだった。

 

「よし、私達の力を皆にも見せてあげましょう。ティアちゃん!」

「はい、アイリス先輩!」

 

 アイリス、ティアは杖を取り出す。

 それを掲げて光が差したかと思うと、二人の服装は白くぴったりしたコスチュームに早変わりしていた。

 膝丈より少し短めのスカートから太腿が覗く。

 

「変身、した?」

 

 玲人は二人の姿をまじまじと見る。

 

「あ、あの、玲人先輩。そんなにじっと見られると恥ずかしいです。」

 

 ティアがもじもじする。

 

「この服装動きやすくていいけど、他の人の目につきやすいから、戦うときだけ変身するようにしてるのよね。」

 

 アイリスも頬を赤らめる。

 

「こら、いつまで見てるの。」

「いてっ。」

 

 セレアのチョップが玲人の頭を直撃した。

 

「じゃあ、ティアちゃん!今日もいつものようにいくわよ!」

「はい!」

 

 アイリスとティアが駆け出す。

 

「シューティングスター!」

 

 アイリスが杖をかざすと、空中から星形の魔法弾が表れてデスコンドルを直撃した。

 

「凄いな。あれが魔法戦士のスキル?」

「そうよ。アイリスは光の魔法を使う専門。あんなふうに魔力をエネルギーに変換して敵にダメージを与える。」

 

 玲人とセレアは並んで様子を見ている。

 デスコンドルは攻撃を受けて大きくバランスを崩す。

 

「射程距離に入るわよ!ティアちゃん!」


 アイリスの合図で、ティアが掌に魔法銃を出現させる。

 

「スパイラルマグナム!」


 アイリスが銃の先から白く光る弾丸を発射し、それは敵の体を貫いた。

 見る間に敵は蒸発するように消えていった。

 

「ナイス、ティアちゃん!」


 アイリスが笑顔でティアを褒めたたえる。


「そんな、アイリス先輩の攻撃で既に弱った敵を倒しただけですから。」

 

 ティアは照れ臭そうにはにかむ。

 

「二人とも仲が良いんだね。」

 

 玲人は微笑ましそうに見る。

 

「そうね。あの二人が初めて会ったのは今日と同じような合同実習よ。ティアは人見知りする性格だったけど、世話焼きなアイリスが魔法戦士の先輩として指導するうちにすっかり打ち解けて、今ではすっかり息もぴったりね。」

 

 セレアは当時を振り返る。

 アイリスとティアが談笑している中、ティアの背後の土が盛り上がっていく。

 

「危ない!」

 

 セレアが気付いて声を上げたが、一瞬遅かった。

 

「きゃっ!何、これ!?」

 

 ティアが振り向くころには、土から伸びてきた触手に捕まってしまっていた。

 次の瞬間には、地面から巨大な植物が勢いよく飛び出した。

 植物型の魔物、アルラウネである。

 

「リアム先生!あれはこのエリアで最も手強い魔物、私達のクラスでは厳しすぎます!加勢を!」

 

 スピアがリアムに呼びかける。

 

「えっと、あいつの弱点は……」

 

 教師は言われて初めて魔導書で調べ始める。

 そうこうしているうちに、アルラウネはティアを丸呑みにしようと頭部に引き寄せる。

 

「いやああっ!やめてぇ!!」

 

 ティアはもがくが、触手は少女の力では振り払えるものではなかった。

 

「ティアちゃん!」

 

 アイリスは杖を構える。

 

「スターライトビーム!」

 

 アイリスはエネルギーを局所に絞り、杖の先からビームを放つ。ビームはアルラウネの茎に直撃した。

 

「や、やった!?」

 

 煙に包まれるアルラウネを見て、セレアはこれで勝ったと思った。

 だが、煙の奥からアルラウネはアイリスの方に鞭のようにうねる触手を放ってきた。

 

「えっ!?」

 

 アイリスがそれに気付いた時には、既に避けるのは絶望的だった。

 その時、玲人が間に割って入って、触手を剣で切り払った。

 

「玲人…君?」

 

 アイリスはすぐには何が起こったか分からない様子だったが、すぐに玲人が助けてくれたことに気付く。

 

「大丈夫。今、ティアちゃんも助けるよ。」

 

 玲人を前にして、アルラウネは触手を複数本集結させて鋭い槍を作り出す。そのまま玲人に向かって一直線に襲い掛かった。

 

「植物ってことは火に弱いよな。炎のスキルなら試したことあるし、使える。」

 

 玲人は迫りくる触手に向かって片手を向ける。

 

「ファイアーボール!」

 

 手の先から燃え盛る炎の球を放つ。

 火球は触手を焼き尽くしながら貫通していき、アルラウネの顔に命中した。

 アルラウネはもがき苦しみ、捕まえていたティアを手放した。

 

「よっと。」

 

 玲人はティアが落ちる先に走り寄り、彼女を抱きとめた。

 同時に、アルラウネは消滅していった。

 

「怪我はない?」

「は、はい。ありがとうございます。」

 

 玲人に抱えられながら、ティアは頬を赤く染め、礼を言った。

 

「あんた、本当に凄いわね!」

「助かったわ!ティアちゃんのことも助けてくれてありがとう!」

 

 セレアとアイリスも走り寄る。

 

「いやあ、俺の力を役立てることができて嬉しいよ。」

 

 そういって笑う玲人だった。

 そしてそこで、すっかりクラスの女子達に囲まれていることに気が付いた。

 

「ねえねえ、どうやったらあんな火力出せるの!?」

「どこで勉強したの!?」

「教えてよ!何でもするから!」

「良かったら、私ともパーティー組んで!」

 

 いきなりの大人気っぷりに玲人は苦笑した。

 

「あはは、ちょっとした女難だな、これは。」

 

 その様子をリアムとスピアが眺めていた。

 

「ううん、期待のルーキーはやっぱり違うな。」

 

 リアムもしきりに感心していた。

 

「しっかりしてください。生徒の一大事を救うのは、本当なら先生の役目ですよ。」

「で、ですよね。」

 

 スピアに指摘され、リアムは肩を落とした。

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