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最強になった高校生、不良冒険者を叩き伏せる

 玲人は森を抜け、ようやく街にたどり着いた。

 看板に書かれている文字や人の話し声を聞く限り、文字も言葉も玲人の世界と同じものであり、玲人は少し安心した。

 

「とはいえ、もうちょっとこの世界の情報が欲しいんだよな。下調べも何もしないで旅行に来ちゃったようなもんだし。」

 

 そう思って歩くと、

 

「だからさっきから言ってるじゃないですか!今日は別の用事があるって!」

 

 女の子の甲高い声が聞こえる。

 

「何だ?」

 

 声が聞こえた方へ行くと、店や建物から少し離れた人通りの少ない場所で少女、セレアと男二人が押し問答をしていた。

 

「大丈夫大丈夫、すぐ終わるよ。ちょっとだけ、セレアちゃんとお話ししたいだけだから。」

 

 男のうち一人は金髪のいかにも軽そうな男だった。

 

「期待のルーキーのセレアちゃんと、もっと仲良くなりたいと思って声をかけただけさ。ほら、俺も武闘家だからさ。先輩としてアドバイスしてあげるよ。」

 

 もう一人の茶髪の男も硬派にはとても見えなかった。

 見るからにセレアは迷惑そうな顔をしている。

 

「うわ、いるよな。人の話を聞かないで自分中心の奴。よ~し。」

 

 玲人はつかつかと歩き、セレアの前に盾になるように割り込んだ。

 

「そういうの、良くないと思うよ。嫌がってるじゃないか。」

 

 玲人の唐突な出現に、セレアも男二人も一瞬呆気にとられた。

 

「何だお前は?関係ない奴は引っ込んでろよ。」

 

 男の一人が凄味を利かす。

 

「そうはいかないよ。困ってる人を見つけたら助けるよう、親から聞かなかったかな?」


 玲人は余裕の表情を崩さない。

 

「へえ?俺達とやり合おうっていうのか?いいぜ、決闘だ。」

「ああ、いいとも。」


 茶髪の男の提案に玲人はあっさりと頷く。

 セレアは焦った。

 

「ちょっと、どこの誰か分かんないけど、自分が何言ってるか分かってるの!?決闘っていうのは冒険者同士がお互い同意をとってやるもので、もし負けたら相手の命令を絶対に聞かないといけないのよ!?」

「そうなんだ。じゃあ、僕が勝てば万事解決だね。」


 玲人はあくまでも余裕の笑みを絶やさない。

 

「それだけじゃない!あいつら、ライルとレジーはそれぞれ武闘家と盗賊のクラスで、かなりの腕利きの奴らよ!決闘なんてやめた方がいいわ!」

「大丈夫だって。」


 玲人は胸を張って言う。

 

「よし、こんなひょろい奴、俺一人であっという間さ。」


 金髪の男、ライルが即座に殴り掛かった。

 

「あれ?全然遅いぞ?魔法を使ったらあっさり勝てるかと思ったけど、これじゃ魔法を使うまでもなさそうだ。」

 

 玲人は相手の腕をつかむと、そのまま地面に投げ飛ばした。

 

「ぐあっ!?」


 ライルは背中に走る激痛で悲鳴を上げた。

 

「ちっ、喰らえ!」


 レジーは短刀を抜いて玲人に襲い掛かる。

 

「こんなノロい攻撃、怖くもなんともないよ。」


 レジーの腕をあっさり掴んだ玲人は、相手の鳩尾に拳を入れ、怯んだ直後に回転脚で蹴り飛ばした。


「うわあああっ!」


 レジーは吹き飛ばされ、地面の上を滑っていった。

 いつの間にか集まってきていた周囲から歓声が上がる。


「す、凄い。この二人に勝っちゃうなんて。」


 セレアも目を丸くして驚いていた。

 

「さあ、確か決闘で勝ったら、何でも言うことを聞いてもらえるんだよね?これ以上怪我をしないうちに立ち去ってもらおう。それともまだやる?」


 玲人はライルとレジーに詰め寄る。

 二人は苦痛に顔を歪めながら、もはや玲人に勝てないと悟り、

 

「くそ、覚えてろ!」


 捨て台詞を残して走り去っていった。


「あんた、強いのね!助かったわ!」

「いやあ、力で相手を思い通りにさせようとする奴ってどうしても許せないんでね。ところで、君は?」

「自己紹介がまだだったわね。私はセレア。セレア・エレン・ティリーっていうの。宜しくね。」

「俺は天府玲人。こっちこそ宜しく。」


 セレアは手を差し出し、玲人もそれに応じて握手した。

 

「天府玲人?変わった名前ね。どこの国から来たの?」

「日本って国だけど、分かんないよね。」


 玲人はここが異世界である以上、言っても分からないと思ったが、


「えっ!?あの日本!?」


 セレアからは意外な反応が返ってきた。


「知ってるの?」


 玲人は思わず聞き返した。

 

「ええ。私達の世界のパラレルワールドみたいなものだって聞いたことがあるわ。たまに結界が破れて向こうの世界の地図やら文献が流れ出てくるみたいで、それで存在を知ったの。向こうの世界には、魔物や魔法がないっていう大きな違いがあるようだけどね。」

「言われてみれば、俺が来てる制服とセレアが来てる制服って似てるよね。」


 セレアの話から、この世界の文化がある程度日本に近いものだと、玲人には想像がついた。

 

「といっても、この街のどこに何があるかなんて分かんないわよね?助けてもらったお礼にこの街を案内するわ。」

「それは助かる。お願いしようかな。」


 玲人はセレアに付いていくことにした。

 そんな二人のことを、物陰からゼオンが眺めていた。

 

「僕はギルド長に散々怒られて、一方であそこの彼は順風満帆か。不公平だなんて思うのは、性格が捻じ曲がっているかな。」


 そう呟いてその場を後にした。

 しかし、玲人のことを羨む一方で疑問があった。

 

 玲人の体内にマジックコアが埋め込まれていることが、魔力の反応で分かった。

 マジックコアは魔力のエネルギーが詰まった結晶である。


 マジックコアが何かに埋め込まれている場合、普通は外部からは分からないが、ゼオンは生まれつきその反応を感知できる特殊な体質を持っていた。

 しかし、マジックコアは本来人間の体内に埋め込まれるようなものではない。

 そのようなことをすれば、たちまち人体が拒絶反応を起こすためである。

 

 ゼオンが振り返った際には、既に玲人の姿はなかった。

 



 玲人はセレアに案内してもらい、銀行、冒険者協会、教会、市場と主要な施設を見て回った。

 

「ふう、疲れた。」


 一通り回って宿屋に来た玲人はベッドに倒れこむ。

 この世界に来たばかりの玲人に家などあるわけはなく、セレアの案内で宿屋に泊まることにしたのだった。


「それにしても驚いたな。電気も水道も使えるなんて。」

 

 トイレも水洗、電気が付いて、お風呂もある等、玲人が元いた日本と生活様式は大差なかった。

 

「マジックコアのおかげね。」

「マジックコア?」

 

 耳慣れない言葉に玲人はセレアの方に向き直る。

 

「魔法のエネルギーが詰まった結晶よ。街の数か所にマジックコアのエネルギーを送り出す施設があってね。それがあるから、こうして電気を使うことができるわけ。水を浄化する施設にも、マジックコアが動力源に使われてるそうよ。」

「便利なものだね。でも、マジックコアが不足したらどうするんだろう?」

「その心配はないわ。使われた魔力は消えるわけじゃなく、その土地に溶け込んでいくからね。その魔力を吸った魔物を倒すことで、新しいマジックコアは手に入るの。魔物を倒すのは、私達冒険者の仕事だけどね。」

「なるほどね。」


 玲人は部屋の中の電気を見上げる。

 

「ところでさ、あんたはこれからどうするの?」

「そうだなぁ。特に決めてないんだけど。」

 

 セレアに尋ねられ、玲人は考えてみる。

 そして閃いた。

 

「この国に魔王っているのかな?」

「ええ、いるわ。部下の魔物達を使って周辺の街を支配して住人達を奴隷にしてるようなとんでもない奴らよ。冒険者が何度も挑んだけど、まだ誰も勝てたことがないわ。」

「じゃあ、俺、そいつの討伐に行くよ。」

「冗談でしょ!?いや、あんたの力が強いのはさっきの活躍で分かったけど、やめといた方がいいわよ。魔王は本当に強いんだから。行くにしても、せめて冒険者養成学校で訓練を積んでからの方がいいわ。」

「冒険者養成学校?」

「各地にある、冒険者を育てるための学校よ。冒険者になりたい人は、そこで術式の勉強とか戦闘の実習経験を積むの。冒険者として仕事をしている人の中にも、もう一度勉強しなおすために学校に戻ってくる人がいるのよ。」

「そっか。じゃあ、俺、まず学校に行くことにするよ。」

「それがいいと思うわ。」

 

 セレアが外を見ると、もう日が暮れかけていた。

 

「じゃあ、私はもう帰るわ。明日の朝、宿屋まで迎えに行くから。」

「一人で大丈夫?」

「大丈夫だって。私の家、ここから近いから。じゃあね、また明日。」

 

 セレアが手を振って部屋を出ていくのを、玲人も手を振り返して見送った。

 

「しかしなぁ。」

 

 玲人は部屋の中を見回した。

 大きなベッドにソファ。

 窓のそばの観葉植物。

 部屋の中にはトイレも入浴室もある。

 

「異世界に来たっていう実感がわかないんだよな。どこかのホテルに泊まってるって感じだ。まあ、いいか。明日は異世界の学校を楽しむとしよう。」

 

 玲人はベッドに寝転がり、その日は休むことにした。

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