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エピソード4:残されたのは、命の縁に揺れる記憶だけ

その夜、扉が閉まったあと――

部屋の壁から静けさが家全体に染み込んでいった。

それは昨日の余韻ではなく、

世界が息をやめたかのような、重く冷たい沈黙だった。


カイトはゆっくり立ち上がった。

言葉も、涙も、表情さえもなかった。


庭に出ると、風が木の葉を優しく揺らしていた。

だが、胸の奥では嵐が全てを引き裂いていた。


――生きる意味なんて、もうあるのか?


視線が庭の片隅に向かう。

そこには古びた花掛け用のロープがあった。

冷たく粗い感触が手から胸へと染み込み、

その重みが足元を引きずるようだった。


誰にも見られず家に戻る。

階段を上る足音が、やけに長く響いた。

部屋に入り、静かに扉を閉める。


その時――

階下でレンタロウが扉を見上げていた。

胸の奥で何かが叫んでいた。


「まさか…カイト、自分を――」


決意とともに駆け上がり、

扉を叩きながら声を震わせた。


「カイト、何してるんだ!?」


返事はない。

足元から漏れるわずかな光。

その向こうで、目の光を失った弟が佇んでいる。


「終わらせたいのか?

俺はどうなる?

妹は?

あの子まで見捨てるのか?」


沈黙。

そのとき――小さな声が響いた。

それは妹の声。

生まれて初めて、彼の名を呼んだ。


心が一瞬止まる。

だが別の声が囁く。

「レンタロウがいれば…僕なんて、いらない。」


レンタロウは膝から崩れ落ちた。

力なく、静かに。


…その瞬間だった。


足元の世界が遠のき、視界の端で光が揺れた。

やがてその光は――母の姿になった。

優しく笑む母の隣には、幼い自分。

小さな手を握り、見上げている。


胸の奥で、熱があふれた。

笑わせてくれた日々、病の夜に感じた温もり、

忘れられない声と、あの笑顔が甦る。


母は扉の前で微笑み、少しずつ薄れていった。

手の震え、冷たい空気、

そして堰を切ったように流れ出す涙。


レンタロウの低い声が響く。

「母さんの想い…全部捨てるのか?」


時間が止まり――

カイトは扉へ歩き出す。

扉を開け、兄の胸に飛び込んだ。


「お前、バカか…

妹の面倒を全部押し付ける気かよ。」

震えを隠すように冗談めかして言い、

静かな声で続けた。

「母さんは言ってた。

人の別れは避けられない…

大事なのは、心に残し続けることだ。」


涙に滲む視界の中、

カイトは窓の外に人影を見た。

街灯の下、うつむいて歩くその背中。


――このとき誰も知らなかった。

その影が、カイトの運命を再び揺るがす存在になることを。


ترجمه كده



私の小説を読んでくれている人がいるのか分からない。

でも、たとえ一人だけでも…心から感謝します。

この物語に込めた想いが、あなたの心に届きますように。

どうか私のことを忘れないで…

次の章で、また来週お会いしましょう。

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