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恋の助言者③

 階段から廊下に顔を出し、リオの悲鳴がした方向を覗き見るゴウシロウとトシキ。2年A組の教室の前でリオが腰を抜かしていた。彼女の正面、教室の入口から巨大な怪異が這い出てきた。上半身は髪の長い裸の女だが、下半身は巨大なアリの尻になっており、尻から左右に3本つず人間の足が生えている。



リオ「なに……コイツ……?」


怪異「私は|Queen Of Ants《アリの女王》。略してQOA(キューオーエー)と呼んでくれていいわよ。この学校にいる女はほぼ全員見てきたけど、アナタ抜群にかわいいわねぇ。唯一、私以上にかわいい女よ」



 QOAは前屈みになり、リオに顔を近づける。



QOA「でも女王よりかわいい女は巣に必要ないの。男が私に魅了されなくなってしまうでしょ? 一方で私よりかわいくない女なら大量に必要。働きアリになってもらうから」


リオ「えっ」


QOA「というわけでアナタをぶっ殺すわ。どうやって殺そうかしら……」



 対話するリオとQOAから目を離し、廊下に出した頭を引っ込め階段を2段下るゴウシロウとトシキ。



トシキ「まずいですよゴウシロウさん! あれ間違いなく怪異ですって! 何とかできませんか!?」


ゴウシロウ「無理だ……私に戦闘能力はない。ただの中年男性だ」


トシキ「シゲミちゃんのお父さんなのに!?」


ゴウシロウ「怪異との戦いは妻や娘たちに全て任せているのでね」


トシキ「ならシゲミちゃんを呼ぶしか……」



 スボンの左ポケットからスマートフォンを取り出そうとするトシキ。その手をゴウシロウがつかんで止める。



ゴウシロウ「待つんだ。たしかに危険な状況だが、これはチャンスでもある。リオちゃんの前でキミがあの怪異を駆除したら彼女はどう思うだろうか?」


トシキ「……僕のことを見直し……惚れる!」


ゴウシロウ「そう、 Love is started。恋は始まったも同然!」


トシキ「なるほど! やる気が出てきました! 僕が駆除してやる! ……でもどうすれば」



 ゴウシロウはジャケットの内ポケットから四角くて黒いデバイスを取り出し、トシキの左腕に近づける。突如トシキの腕が痺れ、激痛が走った。



トシキ「痛ぁ! 何するんですか!?」


ゴウシロウ「私が護身用に所持しているスタンガン。スイッチを押せば高圧電流が流れる。これで戦うんだ」



 ゴウシロウはトシキにスタンガンを手渡す。



トシキ「……わかりました。けど何で僕の腕を痺れさせたんですか?」


ゴウシロウ「グズグズするなこのグズ! こんな話にもう3話も使ってるんだ! 早くリオちゃんを助けに行ってモテて来い!」



 トシキの尻を思い切り叩くゴウシロウ。引っ叩かれた勢いでトシキは廊下に飛び出る。


 立ち上がり廊下の奥へと逃げるリオと、「待ちやがれぇ」と叫びながら追いかけるQOAの姿が見えた。トシキはスタンガンを右手でぎゅっと握りしめ、駆け出す。



−−−−−−−−−−−



 走るリオの後ろを、廊下に貼り出された掲示物や窓ガラス、ロッカーを壊しながら追跡するQOA。リオは左に曲がり、2年F組の教室の中に飛び込む。QOAは足で急ブレーキをかけると、F組の壁を突き破って中に入った。


 教室の後ろ側、窓際まで後退するリオにQOAが迫る。



QOA「さぁどうする? もう逃げ場はないわよ。窓から転落死してくれたら殺す手間が省けるんだけど」



 微笑むリオ。



リオ「アンタ、勘違いしているようだなぁ。アタシは逃げていたんじゃない。この場所にアンタを誘き出したかったんだぜ」



 リオは右横にある背の低い金属製のロッカーを開く。そして中からチェーンソーを取り出した。けたたましいエンジン音を鳴らし、チェーンソーの刃が回転する。



QOA「なにぃぃぃっ!?」


リオ「アンタなんかちっとも怖くない。この忘れ物(チェーンソー)さえあれば、アンタなんかアリ未満の存在……『リオ the チェーンソー』、それがアタシの異名だ。地獄で反芻(はんすう)しろぉ!」



 大きくジャンプし体を回転させながらチェーンソーを振り抜くリオ。QOAの両腕と首を切断する。


 20秒後、トシキがF組の教室に入ってきた。



トシキ「リオさん! 僕が来たからにはもう」



 トシキの顔に真っ赤な鮮血が飛び散る。リオがバラバラに切断したQOAの血。胴体から切り離されたQOAの肢体は、床にできた血溜まりの中でピクピクと動いている。


 アリの形をしたQOAの尻の上に乗り、血が滴るチェーンソーを見つめるリオ。



リオ「相変わらず良い切れ味だぜ……だが血がついたままだと(にぶ)っちまう。帰って磨かないと」



 リオは尻から飛び降りるとトシキを無視してその横を通り抜け、教室を後にした。



−−−−−−−−−−



翌日 PM 3:55

市目鯖(しめさば)高校 化学実験室

 実験用の黒い机を囲んで座るカズヒロ、サエ、シゲミ、トシキ。トシキが意気揚々とスマートフォンの画面を3人に見せる。畑の作物を押し倒して作った模様の画像が表示されていた。



トシキ「今週末、ミステリーサークルの調査に行こうよ! 最近、市目鯖区内でも発見されたんだって!」


カズヒロ「怪異には何歳になっても会えるから今は恋を優先するんじゃなかったのかよー?」


トシキ「恋なんて昆虫に生まれ変わってもできるんだから、人間であるうちしかできないオカルト調査こそ最優先でしょ!」


カズヒロ「言ってることコロコロ変わり過ぎだろー」


サエ「まぁいいじゃん。元のトシキに戻ったんだし〜。もしかしたらシゲミパパのおかげかもねぇ」


トシキ「いや、あの人は何の役にも立たなかった」


シゲミ「……父に伝えておくわ。二度と恋について語るなって」



<恋の助言者-完->

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