新兵器
9日後 PM 10:27
歯砂間たちとの演習を終えて帰宅したシゲミ。自室の学習机の上にスクールバッグを置き、ブレザーを脱ごうとする。その直前、扉が外から3回ノックされ、母・トモミが「入りますよ」と声をかけてきた。
シゲミは「いいだろう」と促す。扉を開け、右肩に縦長の黒い革製バッグをかけたトモミが入室した。
シゲミ「何か用か? 母上」
トモミ「聞きましたよ。邪神・ポコポコにリベンジしようとしてると」
シゲミ「次こそは仕留める。そのための仲間も、作戦も用意した」
トモミ「……だとしてもシゲミが無事に戻って来られるかどうか心配です」
シゲミ「母上、私の除霊の腕を舐めてるのか?」
トモミ「殺し屋としてではなく母親として心配しているのです」
シゲミ「……」
トモミは肩のバッグを左手に持ち、チャックを開けてシゲミに手渡す。
トモミ「私なりに考え、今できることをやろうと思います。シゲミが助かる確率を少しでも上げるために」
バッグの中身を見て、目を丸くするシゲミ。
シゲミ「これは……」
トモミ「M79 グレネードランチャー。単発式の擲弾発射器です。有効射程は約150m。腕を使って投げるよりも擲弾、つまり手榴弾をより遠くまで素早く飛ばせる。私が若い頃に使っていた古いものですが、今でも問題なく動作します」
シゲミはバッグからグレネードランチャーを取り出し、眺める。両手で持ち運びできる、散弾銃と大砲をミックスしたような銃だ。
トモミ「今さら私がアナタたちの作戦に割り込んだところで混乱させるだけでしょう。私ができるのはこれくらい……でもグレネードランチャーを使うかはシゲミ次第」
シゲミ「……母上、恩に着る」
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翌日 AM 6:01
東京湾のとある埠頭に集まったシゲミ、歯砂間、皮崎、鷹見沢、キョウイチ。それぞれポコポコ打倒に必要な装備を用意してきた。
歯砂間「これより喉具呂島へ向かう。港に着き次第、作戦開始」
シゲミ「歯砂間さん、これで島まで行くんですか?」
5人の目の前には歯砂間が用意した釣り用の小舟が一艘、波の上にぷかぷかと浮かんでいる。5人乗るのが限界の非常に小さいものだ。
歯砂間「私の財力ではこの小舟を用意するのが限界だった。でも安心してくれ。エンジンがついてるからオールで漕ぐ必要はない。操縦は私がするから、喉具呂島までみんなの体力を温存できる」
鷹見沢「……頼もしいっすね」
歯砂間「今からヘッドセットを配る。作戦中は常にこれを装着し、いつでも相互に連絡が取れるようにすること」
歯砂間は各自にヘッドセットを渡す。シゲミたちは頭に装着した。
皮崎「ついに本番だと思うと緊張しますね」
歯砂間「ポコポコを倒せるのはキミたち4人だけだ。何としてでもヤツを仕留める。だが大前提として……4人とも絶対に死ぬな」
うなずくシゲミたち。ほぼ同時に「にゃあ」という猫の鳴き声が響いた。シゲミが左肩にかけているスクールバッグから飼い猫のキアヌが顔を出す。
シゲミ「キアヌ!? アナタ着いて来ちゃったのね」
キアヌ「のぉ〜ん」
歯砂間「……5人だったか」
シゲミ「バッグの中でおとなしくしてて」
小舟に乗り込むシゲミたち。歯砂間が最後尾のエンジンを操作し、小舟を発進させる。小舟は水飛沫を上げ、朝日が昇る水平線に向けて進み始めた。
歯砂間がヘッドセットのマイクを使って4人に呼びかける。
歯砂間「ただいまマイクのテスト中。全員聞こえる?」
4人は歯砂間に向かってサムズアップする。
歯砂間「テストのついでに言い忘れていたことを伝えておく。『魎』の要請で、喉具呂島から半径5kmの海域を海上保安庁の巡視船が監視している。その海域に接近すると警告され、無視したら発砲される。もちろん今回の作戦は私たちが独断で進めているもの。『魎』も海上保安庁も把握していない」
キョウイチ「……つまり?」
歯砂間「このまま喉具呂島に近づけば、私たちは撃ち殺されて海の藻屑になる可能性が高い」
シゲミ「何か対策はあるんですか?」
歯砂間「ある。巡視船が撃ってきた機銃弾や砲弾を全て避けて島に上陸する」
沈黙する4人。対照的に大声で笑う歯砂間。
歯砂間「安心しなよ。今日のためにボートの運転動画を200本は見てきた。私のボートテクニックで華麗にかわしてみせるさ」




