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先生を仲間にしよう③

 シゲミたちのやる気を奪ったことを確認し、中年女性は掃除機のスイッチを切った。講義室に吹いていた風が止む。



中年女性「人間のやる気を吸い込むことで、私はどんどん元気になる! さぁ、もう一仕事してから帰りましょうかねぇ!」



 中年女性は掃除機の床ブラシを外すと、尻ポケットから取り出したナイフをブラシの代わりに取り付けた。



中年女性「やる気のない人間(ゴミ)は全部掃除しなくちゃ」



 中年女性がシゲミたちのほうへ歩み寄ろうとする。直後、何かが中年女性に向かって飛来し、腕ごと上半身を絞め上げた。掃除機が中年女性の手から落ちる。



中年女性「なに!? なになになんなの!?」



 ピンク色の長い触手が中年女性の上半身にぐるぐると巻き付いていた。触手は仰向けに倒れる皮崎(かわさき)の口の中から伸びている。



中年女性「まさか……舌!? うぇ気持ち悪っ!」



 体を起こし、ひざまずく皮崎。



皮崎「私のやる気はすっかり奪われてしまいました……でもこの舌は私の意思とは関係なく、やる気のあるなしに関わらず本能のままに動く。報酬であるフミヤくんの頭皮を舐める権利……それを得るために」



 シゲミは両手で体を持ち上げ、戦況を確認する。およそ15mも伸びる皮崎の舌を見て、背筋に冷たいものを感じた。


 皮崎の舌はさらに伸び、中年女性をきつく絞め上げる。そして舌先が蛇の頭ように動き、中年女性の眼前で止まった。



中年女性「なんなのよ……」



 皮崎の舌先が花のように8つに割れた。割れた舌の内側には小さくて鋭利な歯らしきものが何本も生えている。



中年女性「なにこれぇぇぇっ!? いや!? やめて! 来ないでぇぇぇっ!」



 ゆっくりと中年女性の顔へ迫る舌先。あと数センチというところで、窓ガラスにヒビが入る音がし、中年女性の体が塵のように消えた。獲物を失い、宙をさまよう皮崎の舌。



皮崎「あら……? 一体何が……?」



 シゲミは窓ガラスの1つに空いた穴を見つける。



シゲミ「狙撃!? みんな伏せて!」


フミヤ「言われなくても伏せてる」



 やる気と気力を失って床で伸びる皮崎、フミヤ、コズエ。シゲミは石のように重く感じる体とスクールバッグを引きずり、窓際まで移動してしゃがみ込んだ。そしてスクールバッグから手鏡を取り出し、鏡の反射で窓の外を確認する。隣のビルの屋上、およそ2階層上で何者かが講義室に狙いを定めライフルを構えているのが見えた。



シゲミ「みんな、私が良いと言うまで動かないで。狙撃手がいる」


コズエ「し、しばらく動けそうにないっす」



 屋上にいる狙撃手がライフルを仕舞う。シゲミは狙撃手が自分たちを狙っているわけではないことを察する。



シゲミ「……大丈夫そう。念のため匍匐前進(ほふくぜんしん)でこの部屋から」



 シゲミの言葉を無視するように、皮崎の舌が窓ガラスを突き破って狙撃手目がけて伸びる。屋上から逃げようとする狙撃手を追跡する舌。狙撃手はビルの外階段を伝って駆け足で下りるが、皮崎の舌はピッタリと後を追い続ける。1階にたどり着く寸前、舌はピタリと動きを止め、するすると後戻りを始めた。


 舌先が講義室まで戻り、仰向けに倒れる皮崎の口の中に収納される。



皮崎「さっきも言ったとおり、私の舌は本能のままに動きます……獲物を横取りした狙撃手を捕食しようとしたのでしょう。しかし射程範囲に逃げられてしまいました」


シゲミ「皮崎先生……アナタもう人間じゃありませんよ。怪異です。でもそんな先生だからこそ依頼したいことがあります」


皮崎「なんでしょう?」


シゲミ「私が入院する原因となった邪神・ポコポコ。ソイツを倒すために仲間を集めています。先生には私の仲間になって一緒に戦ってもらいたい。いや、ポコポコの頭皮を舐めてもらいたい」


皮崎「……ポコポコという人の頭皮、キレイでしたか?」


シゲミ「わかりません。ですが神を名乗る存在の頭皮を舐められる機会は今後一切ないと思います」


皮崎「たしかに。ぜひ仲間に加えてください」



 シゲミはスクールバッグからノートとシャープペンシルを取り出し、「皮崎 リエ」と名前を書く。2人のやり取りを聞いていたフミヤとコズエが上体を起こし、床に尻をついた。



フミヤ「今回も僕らの負けのようだな……」


コズエ「すみません会長」


フミヤ「だが()()()()()怪異を仕留められなかったのも事実。僕の頭皮を舐めるのはやめていただきたい」


皮崎「……仕方ありませんね。約束ですから」



 フミヤは振り絞れるだけの力を全て込めてガッツポーズをした。



皮崎「それにしても、何者だったのでしょう? 怪異を狙撃した人」


シゲミ「私と同じ怪異専門の殺し屋かもしれません……数は多くありませんが、私たち家族以外にも怪異の駆除を生業(なりわい)とする人はいます」



 シゲミは立ち上がり、中年女性の幽霊がいた黒板付近に歩み寄る。そして懐中電灯で辺りを照らした。壁にめり込んだ弾頭を発見し、指でつまみ出す。



シゲミ「これは三八式実包(さんぱちしきじっぽう)の弾頭……日露戦争から太平洋戦争まで使われた三八式歩兵銃さんぱちしきほへいじゅう用の弾丸。銃自体かなり古いもので、所持してる人は限られる」



 左手のひらに弾頭を置き、まじまじと見つめるシゲミ。



シゲミ「強い邪気をまとっている。弾にこんな細工をしてまで怪異を狙撃する人物はもっと絞られるはず。()()()に頼めば特定できるかも」



<先生を仲間にしよう-完->

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