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先生を仲間にしよう①

東京都内某所

寒部利(かんぶり)ゼミナール 講義室

 大学受験を目指し、机に向かう高校生が約50人。だが全員机に突っ伏して寝ており、授業を聞いていない。


 教壇に立つ、スーツを着た男性講師が参考書を読み進める。その呂律は上手く回っておらず、黒板に書いた字もぐにゃぐにゃに曲がって日本語の形を成していない。



講師「であるからしてぇ、僕もやる気はありませんしぃ、皆さんはたぶん志望校には受からないでしょう……でもそれでいいよねぇ。受験なんて苦しいこと、みんなでやめちゃおうよぉ〜」



 講師は膝から床に崩れ落ちた。


 講義室の外、入口扉に掃除機を向ける清掃員の中年女性が1人。青い作業着を着て、頭に「必敗祈願」と書かれた白いハチマキを巻いている。掃除機は扉の隙間から放出される半透明な粒子を吸い込んでいた。



−−−−−−−−−−



市目鯖(しめさば)高校 2年C組教室

 休み時間中も1人で自席に座り、ノートを開くシゲミ。しかし授業の予習や復習をしているわけではない。どちらかといえば復讐。ポコポコを打倒するための仲間候補として誰が適任か、条件や候補者名を書き出している。


 シゲミの頭の中で1人は確定していた。空手部主将のキョウイチ。過去にシゲミはキョウイチが怪異と戦い勝利している姿を見ている。キョウイチの人間離れした体術なら、ポコポコと互角に渡り合えるかもしれない。少なくとも、ポコポコの強さを聞けばキョウイチ自ら「拳を交えたい」と言うことは容易に想像できる。


 ノートにキョウイチの名前を書くシゲミ。しかしポコポコの力は未知数な部分が多く、キョウイチを仲間にするだけでは心許(こころもと)ない。他に戦力になりそうな人物はいないか思案し続ける。


 授業開始を告げるチャイムが鳴り、黒板に近い教室の扉を開けて現代文の担当教師・皮崎(かわさき) リエが入室した。立っていた生徒たちがそれぞれの席に座る。


 シゲミはピューマのような目つきで皮崎を見つめた。皮崎は怪異と見間違うほど長い舌を持ち、自由自在に操る。その奇妙な様はシゲミすら嫌悪感を抱くほど。シゲミにとってはトラウマ的存在だが、それだけインパクトがある。もしかしたらポコポコも皮崎の舌使いを目の当たりにしたら気持ち悪さから致命的な隙を作るかもしれない。


 シゲミは皮崎を対ポコポコチームに引き入れるか、検討することにした。



−−−−−−−−−−



 授業終了と同時にシゲミは椅子から立ち上がり、教卓の上に置いた書類を整理する皮崎に歩み寄る。



シゲミ「皮崎先生」


皮崎「シゲミさん、もう体の調子は良さそうですね」


シゲミ「ええ。おかげさまで。実は先生にお願いしたいことが」


皮崎「なんでしょう?」


シゲミ「今夜、怪異の駆除を手伝ってもらいたいんです」


皮崎「手伝い……なぜ私が?」



 数秒考え込むシゲミ。仮にも教師と生徒という関係性。素直に「皮崎先生がポコポコと戦うに値する人か見極めるため」と生徒であるシゲミが言うのは、皮崎の教師としてのプライドを逆撫でしてしてしまう可能性がある。皮崎を納得させるための建前が必要だと考えた。



シゲミ「今回の駆除の依頼、私1人では達成が難しそうなんです。他の生徒に協力してもらおうかと思ったのですが、危険な目に巻き込むのは心苦しい……そこで、私が怪異専門の殺し屋であることを知っていて、かつ責任感が強そうな皮崎先生にお願いしようと思いました。生徒にリスクを背負わせるのは皮崎先生としても立場上好ましくないはず」


皮崎「たしかに生徒が危ない目に遭うくらいなら、私が代わりたいとは思いますが……」


シゲミ「もちろんタダでとは言いません。報酬は……」


???「その話、聞かせてもらったぞ!」



 シゲミの背後から男性の大きな声が響く。シゲミは振り返り、皮崎はシゲミの肩越しに声がしたほうを覗く。教室の入口から2人の生徒が入室した。先頭に立つのはオールバック生徒会長ことフミヤ。その後ろに暗い茶髪をポニーテールにした女子生徒が続く。除霊師一族の末裔で生徒会書記のコズエ。



フミヤ「シゲミィ! また我々生徒会に無断で除霊を行おうとしているようだな!」


シゲミ「……今回の依頼は市目鯖の生徒からのものじゃないわ。学校外での活動にまでアナタたちが首を突っ込む権限はないはず」


フミヤ「だな。キミの言うとおりだ。だから今回僕たちは『協力』という(てい)で関わらせてもらう。キミ1人では対処できない依頼なんだろう?」


シゲミ「ええ」


フミヤ「だったら皮崎先生ではなく、我が生徒会書記のコズエさんこそ適任! 以前の筋肉モリモリマッチョマンの幽霊事件からコズエさんは修行を積み、除霊のスキルアップに成功した」


コズエ「まぁ、ゲームでたとえたら10レベルくらい上がったんじゃないですかねぇ〜」


フミヤ「というわけで、コズエさんを同行させてもらう。もちろん僕も一緒にな」


シゲミ「わかった。でもコズエさんだけで手に負える相手かどうかわからないから、私が信頼している皮崎先生にも同伴してもらうってことで良いわね?」


フミヤ「……正直、皮崎先生にはご遠慮いただきたいが……」


シゲミ「皮崎先生、今回の成功報酬はフミヤくんの頭皮を舐める権利です」


フミヤ「なっ!?」



 皮崎はキレイな頭皮を舐めることを生きがいにしている。特にフミヤの頭皮は理想的らしく、ずっと舐める機会を伺っていた。口を開け、胸の辺りまで長い舌を露出させる皮崎。



皮崎「それはうれしい提案です……シゲミさん、私、やる気が出てきました」


フミヤ「僕に許可なく勝手に決めるな!」


シゲミ「あら、もしかして自信がない? 本当にコズエさんの腕を信頼してるなら、頭皮の1枚や2枚、賭けられると思うけど」


コズエ「会長、任せてくださいな」


フミヤ「……い、良いだろう。その代わり、怪異を見つけたらコズエさんが先に除霊する! その順番を守ることを約束しろ!」


シゲミ「わかったわ。交渉成立ね。授業が終わったら正門前で待ち合わせましょう」

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