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漂流者

喉具呂(のどぐろ)島 港町

 先日『(りょう)』によって行われたポコポコ奇襲作戦により、建物の大半が瓦礫と化している。


 残った数少ない民家の1つ、その内側から玄関扉を蹴破り外に出るポコポコ。黒地で白いハイビスカスがプリントされたアロハシャツに、ベージュのチノパン姿。



ポコポコ「ずっと甚平(じんべい)ってのもジジ臭いからなぁ。南国の若者らしいファッションにしてみた。どうやろ?」



 民家の前にいた筆見(ふでみ) サツキが呆れた表情で口を開く。



サツキ「南国の若者ってより、チンピラっぽいよその格好。しかも一昔前のチンピラ」


ポコポコ「でも甚平より現代に近づいたやろ? それにオレ、チンピラみたいなもんやし」


サツキ「まぁね」


ポコポコ「んじゃ、早朝の浜辺散歩といこかー」


サツキ「……なんかさぁ、喉具呂島に来てから毎日何もしてない気がするんだけど」


ポコポコ「そうか? メシ食って昼寝して、夜通し飲み会してるやん」


サツキ「そうじゃなくて! もっと人に褒められるような生産性のあることがやりたいの! ポコポコくんも神様なら人の役に立とうとか思わないの!?」


ポコポコ「神様ってのは何もしないもんなんや。人間が勝手に何かしてくれると思い込んでるだけ」


サツキ「……なんか釈然としないなぁ」


ポコポコ「モヤモヤするときこそ散歩や散歩! 朝飯も獲ってきたるわ。ホオジロザメ食おうぜ」



 浜辺へ向かい歩き出すポコポコ。その数歩後ろを着いていこうとするサツキだが、ポコポコに右腕で制される。



サツキ「あれ? どうしたのポコポコくん?」


ポコポコ「……浜辺に変なのがおるなぁ。ここから700mくらい離れとるが、邪気を感じる。なかなかの量や」



 ポコポコはしゃがむと大きくジャンプし、2階建ての民家の屋根に乗る。サツキはポコポコが乗った民家の玄関から中に入り2階へと上り、ベランダに出た。ポコポコがサツキに手を差し伸べ、屋根の上へと引き上げる。



ポコポコ「サツキちゃんの視力で見えるか? 砂浜に打ち上げられとるあの漂流者」



 サツキはズボンの右ポケットからスマートフォンを取り出し、ポコポコが指さしたほうをカメラでズームする。波打ち際に全裸の男性がうつ伏せで倒れているのが見えた。ぶくぶくに膨れ上がった色白の体に、ショートカットの金髪。おそらく日本人ではない。



サツキ「ほんとだ……助けないと!」


ポコポコ「アカン。さっき言った変なヤツってのがアレや。おびただしい邪気を放っとる。オレならともかく、サツキちゃんが近寄ったらひとたまりもないで」


サツキ「だけど」


ポコポコ「心配せんでええ。アレは人間の見た目をした怪異や。漂流者を装って人間を誘き出し、殺そうとしとる」


サツキ「人間の見た目をした怪異……漂流者を装う……まさか」



 サツキはスマートフォンのカメラアプリを閉じ、検索エンジン開いて文字を入力する。検索してたどり着いたのは、サツキがライターを務めるオカルト雑誌『パラノーマル・スクープ』のオンラインページ。



サツキ「多分これだ……前に特集記事を書いた『漂流死体ジョン・ドウ』。何百年も前から世界中の海を流れているという男性の水死体で、ごく稀にどこかの陸地に漂着する。そしてその地に災いをもたらし、近くに住む人々や海辺の魚、鳥が大量死する……」


ポコポコ「全部アイツの強過ぎる邪気が原因やな。邪気は生き物にとって毒ガス同然。オレも本気を出せば邪気だけで近くの生き物を殺せる。ジョン・ドウってヤツは邪気を垂れ流す、まさに毒ガス兵器や。アイツとは友達にならんほうがええなぁ」



 屋根から地面に飛び降りるポコポコ。



ポコポコ「オレはジョン・ドウを何とかするから、サツキちゃんはここで待っててなぁ。絶対に浜辺に近寄ったらアカンでぇ」



 ポコポコは猛スピードで駆け出した。



−−−−−−−−−



喉具呂島 浜辺

 水面に魚が何百匹も浮かび、空を飛んでいたカモメが海に落下する。打ち上げられた全裸の男、ジョン・ドウを中心に、まるで環境汚染が急速に進んだかのような光景が広がっていた。


 ポケットに両手を突っ込みながらジョン・ドウに歩み寄るポコポコ。



ポコポコ「おーい、兄ちゃんよぉ。日焼けなら別のビーチでやってくれんかねぇ? 迷惑なんだわ」


ジョン「……」


ポコポコ「シカトすんなや。意識はあるんやろ? それにオレがただの人間やないこともわかってるはずや。お前に接近して普通にしてる人間、今までにおったか?」



 砂の上に伏せていたジョンの頭がぐるりと回転し、顔がポコポコのほうを向く。眼球に黒目がなく、顔の穴という穴から水が流れ出ている。



ジョン「助けて……くれ……何日も海を漂い……飲まず食わずで……」


ポコポコ「演技しても無駄や。お前の正体も魂胆もわかっとる。オレには通用せぇへん。そもそもお前を助ける気なんて全くないで。おとなしくここから立ち去ってくれたら、手荒なことはせん」



 ジョンは数秒沈黙すると、大きく口を開けた。ジョンの体からドス黒い邪気が大量に放出され、開いた口の前に集まる。そしてボーリングの球くらいの大きさに凝縮された。



ポコポコ「何を」



 凝縮された邪気がレーザー光線のように射出され、ポコポコの右頬をかすめた。邪気は港町にある2階建ての旅館に当たり、2階の部分だけを削り取るように消し去った。



ポコポコ「ほう……」



 再びジョンの口元に邪気が球状に集まり、ポコポコ目がけて射出される。今度はポコポコの足下に着弾し、大きな砂煙を上げた。ポコポコはバック宙を3回して後退し、爆風をかわす。



ポコポコ「動かずに攻撃するとは横着なヤツやなぁ。でもオモロイ邪気の使い方するやん。どうやってやるん?」



 邪気を口に集め、3発目を放つジョン。ポコポコの腹部を目がけて飛ぶ。ポコポコも邪気を体に鎧のようにまとい、邪気のレーザー光線が当たる寸前で軌道を90度真上に逸らした。邪気のレーザー光線が通過した上空の雲が霧散する。



ポコポコ「うむ。やり方は概ね理解した。こんな感じやろ?」



 ポコポコはジョンのほうに顔を向け、大きく縦に口を開く。ポコポコの体を覆っていた邪気が口の前に集まり、ドス黒い球体を形成した。


 球体から邪気のレーザー光線が放射される。ジョンが放ったものより何倍も太く速い。ポコポコが放った邪気のレーザー光線はジョンの体を飲み込み、海の水を(えぐ)りながら5km先の沖合まで到達。停泊していた海上保安庁の巡視船艇(じゅんしせんてい)右舷(うげん)に当たり、船体を爆破させた。


 ポコポコが放った邪気が消失する。ジョンの体も肉片1つ残らず消えていた。



ポコポコ「……迷惑なヤツやったけど、ええ技見せてもらったわ」



<漂流者-完->

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