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本物の心霊愛好家②

PM 7:56

埼玉県某所

 県内最恐の心霊スポットと称される廃団地の前にやって来た心霊同好会の4人とヤマト。団地は7階建てで、壁面の至るところに落書きがされている。ネットに書かれていたとおり周辺に建物はなく更地にポツンと建っており、最も近い隣家まで500m以上離れている。


 それぞれ肩にかけたスクールバッグから懐中電灯を取り出し、団地の中に足を踏み入れた。もう何年も入居者がおらず、中は枯れ葉やペットボトルなどのゴミが散乱している。



ヤマト「降霊術をやるなら広い場所がいい。屋上に行きましょう」



 ヤマトが先導し、団地の外階段を上がる。屋上に到着。夜空の三日月が見えるだけで、ここにも人はいない。


 ヤマトは降霊術の準備を始めた。ひらがなと「はい」「いいえ」が書かれた紙を床に置き、上に10円玉を乗せる。その左隣には持参したウィジャボード。紙とボードの前であぐらをかくヤマト。その様子をシゲミたちは5mほど離れて正面から見つめる。



ヤマト「では始めますよ……刮目(かつもく)せよ!」



 ヤマトは右手で紙の上に乗せた10円玉を、左手でウィジャボードのプランシェットを激しく動かす。その動作はまるでターンテーブルを操作するDJのようだ。



カズヒロ「……なぁトシキ、コックリさんとウィジャボードってあれでやったことになるのかー? シャカシャカと無意味に動かしてるだけにしか見えないけどよー」


トシキ「さぁ? でも本物の心霊愛好家がやってるんだから、間違いないんじゃない?」


サエ「なんか虫みたいな動きでウケる〜。動画撮っておこ〜」


シゲミ「……」



 およそ3分間、DJのような、虫のような動きを続けたヤマトは突如手を止める。



ヤマト「これでフィニッシュだ! よぉ〜おっ!」



 10円玉とプランシェットから手を離し、左右の甲を合わせて裏拍手を5回したヤマト。そして立ち上がる。



ヤマト「……どうです? これが本物の心霊愛好家の底力ですよ。同じことができますか?」


カズヒロ「いや、すごさが全然わからないし、恥ずかしくてある意味真似できないわ」


ヤマト「ならば僕のことを認めたも同然! 今すぐ! この場で! 心霊同好会の解散を宣言してください!」


サエ「すごさがわからないって言ってんの! 全く認めてないから〜!」


ヤマト「強情な人たちだ……ならばもっとすごい降霊術を」


???「誰だぁ? オレを呼び出したのはぁ?」



 5人のものではない男性の低い声が混じる。声はヤマトの背後から響いた。ゆっくりと後ろを向くヤマト。全身真っ赤で服を着ていない、頭からヤギのような角、背中からコウモリのような羽が生えた男が立っていた。



ヤマト「……あのぉ……アナタは……?」


男「オレはデーモン。ここ日本に合わせて言うと悪魔だ。ウィジャボードをやった対価に術者の命をもらいに冥界から来た。術者はお前か?」



 デーモンはヤマトの眼前まで近寄り顔を指さす。その背はヤマトよりはるかに高く、2mをゆうに超えている。



ヤマト「い、いえぼぼぼぼ僕ではなくてですねその……」



 うろたえるヤマトの背後で、目を丸くするカズヒロたち。



カズヒロ「あれが悪魔か……角に羽……俺のイメージとピッタリ」


トシキ「ほ、本当に成功したんだ、ウィジャボード」



 デーモンはヤマトに向かって続ける。



デーモン「お前じゃないなら誰がやったんだ? こちとら苦手な日本語でわざわざしゃべってやってんだ! 早く言え! オレのボキャブラリーに限界が来ちまう!」


ヤマト「そそそそそそのですね……」


???「ケッヘッヘッヘッ……悪魔ってのは人間の命1つスムーズに奪うこともできねぇのかい」



 別の高い声が響く。声がした方向に顔を向ける心霊同好会の4人とヤマト、そしてデーモン。屋上の柵の上に白いキツネが座っていた。



デーモン「テメェか? オレのやり方にケチつけたのは?」


キツネ「ご名答。オイラはコックリ。アンタと同じく降霊術で呼び出されたが、術者の命に興味はねぇ。ちょいと脅してすぐ帰ろうと思っていたが……なんだか面白そうな展開になってるんで、いっちょかみしたくなっちまったよ」



 にらみ合うデーモンとコックリ。その隙にヤマトはシゲミたちのところへ駆け寄った。



デーモン「まずはテメェから消そうか? 生意気なクソギツネ」


コックリ「痛い目に合う前に祖国へ帰りなよ、悪魔ちゃん」



 デーモンとコックリが互いに飛びかかろうとした瞬間、夜空から髪の長い白装束を着た女が飛来し、2体の間にふわりと着地した。



デーモン「誰だぁ?」


女「……私の名前は貞枝(さだえ)。強さだけを求めて日本中を旅してる浮遊霊。裏拍手の音が聞こえたから来ちゃった」


コックリ「おいおい、何体の怪異が集まってんだよ。ここは霊界のコミケ会場か?」


貞枝「……アナタたち戦うつもり? なら私も混ぜてくれないかしら?」


デーモン「構わねぇが、成仏しても後悔するなよ?」


???「おーい、うるさいぞぉ」



 屋上の入口からスキンヘッドで灰色の和服を着た初老の男が歩いてくる。



男「人の家で何をドンパチやろうとしとるのよ? まったく……入居者にちまちま嫌がらせをして全員自殺させて、解体業者もみんな追っ払って平穏な暮らし手に入れたのに……騒がれちゃ困るんだよ!」


コックリ「アンタは?」


男「ワシはマサオ。明治時代からこの地に住んでる無職でバツ4の地縛霊だ」


デーモン「悪魔に動物霊、浮遊霊に地縛霊か……同じ場所にこれだけの怪異が集まることはまずねぇ。せっかくだから誰が強いか決めないか?」


コックリ「いいねぇ」


貞枝「……私は最初からそのつもりで来た」


マサオ「全員排除してやろう。生きた人間と違って怪異なら死体が出ないから後始末が楽だな」



 4体の怪異が放つ邪気が屋上を包む。



トシキ「シゲミちゃん……どうしよう……?」


シゲミ「みんなこの団地から出て遠くに避難して。少なくとも100mは離れてほしい」


カズヒロ「わかった」


ヤマト「ぼ、僕のせいだ……こんなことになるなんて……」


シゲミ「気にしないで。良いもの見せてもらった」


サエ「ここはシゲミに任せて、早く逃げよう!」



 カズヒロ、サエ、トシキ、ヤマトは、お互いに牽制し合う怪異の視界に入らないよう身をかがめて移動し、屋上から外階段を伝って団地の1階へと下りていった。


 4体の怪異に近づくシゲミ。



シゲミ「アナタたちの勝負に私も加えてもらえない?」


デーモン「テメェも怪異か? 名は?」


シゲミ「私は現代妖怪・ゲミーさん」

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