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神へのインタビュー②

 喉具呂(のどぐろ)島の港は静まり返り、誰一人としていない。港から見える町にも人がいる様子がない。テレビやネットのニュースで取り上げられていたとおり、島民全員がいなくなっている。サツキの目的は、島民失踪の原因を突き止めること。


 しかし島民がいないのだとしたら聞き込み調査ができないため、失踪の原因究明につながる痕跡を自力で見つけるしかない。サツキは船酔いで絶不調の体に(むち)を打ち、町を歩いて回ることにした。


 歩きながら、持参した一眼レフカメラで町内を撮影するサツキ。どの民家にも、商店にも人はいない。町だけを残して全員でどこかに引っ越してしまったかのようだ。一方で家具や商品などは残っている。島民は「移動した」のではなく「消えた」という表現のほうがしっくりくる。


 4時間ほどかけて町を一回りし、港に戻って来たサツキ。呆然と海を眺める。島民失踪の原因ははっきりとしなかった。残るは町の外、木々が生える森の中を調査することだが、そろそろ日が暮れる。小さな島の森とはいえ夜に入れば遭難し、自分も失踪しかねない。森の調査は明日に回し、寝泊まりできる場所を探すことにした。


 港から町へ戻ろうと振り向くと、3mほど前に少年が立っていた。黒い甚平を着て、生きたままのカツオを右手に持ち、かじりついている。



ポコポコ「なんや、まだ人おったんか」


サツキ「あの、島の方でしょうか!?」


ポコポコ「島の方……まぁそうやな。ここはオレの島や」


サツキ「私、オカルト雑誌でライターをやっていまして、喉具呂島の島民失踪事件について調査しに来たんです! ぜひお話を伺えませんか?」


ポコポコ「ええけど、その前にオレから質問してええか?」


サツキ「……はい、構いませ」



 サツキは心臓を握りしめられるような感覚に襲われた。呼吸が速くなり、めまいがし、立っていられなくなる。その場にしゃがみ込むサツキ。船酔いとは違う、何らかの異常が体に起きていた。



ポコポコ「ここの島民、みんなオレのこと殺そうとしてきてな。アンタもオレのこと殺す気で来たん?」


サツキ「……い、いいえ……私はただ……取材に……」


ポコポコ「じゃあ今のところオレの敵ではないっちゅーことでええな?」


サツキ「……はい……取材が終われば……おとなしく……帰ります……」



 サツキの体が軽くなる。胸の苦しみもめまいも突然消えた。ヨロヨロと立ち上がり、少年と向き合う。



ポコポコ「すまんね。ちょいとオレの邪気を放ったわ。アンタが敵やと言うなら、動きを止めて喰おうと思うてな」


サツキ「喰う……? 島民は、得たいの知れない何かに喰われたというウワサがあるのですが、まさかアナタが……?」



 ポコポコが左手の平をサツキに向けて、言葉を遮る。



ポコポコ「これってインタビューやろ? なら、回答するメリットがオレにないと答える気にならん。これから夜ご飯の準備せなアカンから、時間を無駄にしたくないねん」


サツキ「そ、そうですよね! 失礼しました! 謝礼はお支払いします」


ポコポコ「具体的には?」


サツキ「インタビュー30分につき5000円でいかがでしょう?」



 手に持ったカツオを丸呑みにし、頬張りながら腕を組んで考え込むポコポコ。



ポコポコ「う〜ん、金もええねんけど、それよりオレ友達が欲しいねんな。一緒に朝まで酒飲んでパーティする友達。でも島民とは馬が合わへんかった。アンタはどうやろ?オレと友達になる気、あらへん?」



 想定外の質問をされ、サツキは目を丸くする。



ポコポコ「メシはオレが獲ってくるから困らへん。これからどんどん友達の輪を広げていくつもりや。もっともっと楽しくなるでぇ。どうやろ? オレの最初の友達としてこの島に住まんか?」


サツキ「友達……ですか。アナタの友達の定義に当てはまるかわかりませんが、しばらく行動を一緒にさせてもらってもいいですか?アナタからは島民失踪について有力な情報を聞き出せそうですし、もし失踪の原因がアナタなら、私がこの島に来た目的を達成できますから」


ポコポコ「なるほど。ええやん。島民どもよりよっぽど賢い選択したでぇ。友達のお試し期間っちゅうやつやな」


サツキ「ええ。期間限定で。私は取材が終わったら本州に帰りますが」


ポコポコ「わかった。でもどうやって帰るん? この島、オレ以外には動物しかおらへんし、オレ、船の操縦なんてでけへんで」


サツキ「……ああっ! 見落としてたぁ〜、帰る手段がないぃぃ〜!」



 大声で笑うポコポコ。



ポコポコ「オモロい姉ちゃんやな〜! 後先考えず行動する精神、嫌いやないでぇ。これから長い付き合いになりそうやな。よろしゅう」


サツキ「……お世話になります……」


ポコポコ「名前はなんて言うん?」


サツキ「筆見(ふでみ) サツキです……私はアナタを何とお呼びすればいいでしょうか? 本名ではなく仮名でのインタビューもできますが」


ポコポコ「いや本名を出してくれてええで。オレ、ポコポコいいますねん。ほんじゃ、メシでも食いながらインタビュー始めよかー」

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