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おくりもの①

 学校終わりにシゲミは、古典の担当教師・山之辺(やまのべ) ユカリに声をかけられ、彼女の自宅マンションに行くことになった。自宅で起きている怪現象をシゲミに解決してほしいとのこと。


 1LDKの洋室で、白を基調にした女性らしい内装の部屋。リビングの中心に置かれた4人掛けのテーブルにつくシゲミ。山之辺はリビングの一角にあるキッチンの横に設置された冷蔵庫の中をあさる。



山之辺「飲み物、缶のドクターペッパーしかないんですけど、いいですか?」


シゲミ「構いません。むしろなぜドクターペッパーを常備しているのか」



 山之辺は両手に1つずつドクターペッパーの缶を持ってシゲミの目の前の席に座ると、左手に持った1つをシゲミに渡した。そして自分の缶を開け、一気飲みする。シゲミも缶を開けるが、一口だけ飲んでテーブルに置いた。



山之辺「生徒を自宅に呼ぶなんて好ましいことではありませんが、どうしてもシゲミさんに解決してもらいたいことがありまして。」


シゲミ「山之辺先生には彼氏がいるって学校中で有名ですから、性的なイタズラをされるなんて心配はしてませんよ」


山之辺「あらそうですか。でも恋人がいる同性だからって、女の子に手を出さないとは限りませんよ。シゲミさん、おとなしくてかわいらしいから、私のタイプです」


シゲミ「えっ?」


山之辺「ウソです。それに彼氏とは先日別れてしまって。しばらく恋愛はお休みしようと思ってます」


シゲミ「先生のことよく知らないので、ウソかどうかわかりにくいです」


山之辺「本当ですよ。ほら、そこの棚の上にある写真を見てください」



 シゲミは自身から見て右手の壁に沿って置かれた背の低い棚に目をやった。棚の上に額に入った写真が立てかけられている。写真は半分に折りたたまれ、右側に写る山之辺しか見えない。誰かとのツーショット写真だと思われるが、山之辺の隣に写っているであろう人物は見えないようになっている。



山之辺「元カレと撮った写真です。別れたときに飾るのをやめようと思ったんですが、私の写りがあまりにも良いので、元カレの顔が見えないように飾っているんです」



 山之辺は31歳で、市目鯖(しめさば)高校の教師の中ではかなり若い。その上、整った顔立ちをしているので男子生徒から人気だ。本人が言うように写真映えする美人で、卒業アルバムの中で山之辺がどの女子生徒よりもキレイにかわいく撮れていた年もある。



シゲミ「私は自慢話を聞きに来たわけではありません。相談内容を伺えますか?」


山之辺「そうですよね。失礼しました。4日前から毎晩、玄関の前に小包(こづつみ)が置かれているんです。夜の0時頃に誰かが来て、置いているようで」


シゲミ「……その誰かを見ましたか?」


山之辺「昨日の夜、0時になる前からドアモニターを起動して確認しました。メガネをかけた、30代くらいの男で。しかも小包を置いた後、3分くらいずっとカメラを見つめ続けていたんです。私が見ているとわかっていたのかも……」


シゲミ「ストーカーでは?」


山之辺「そうだと思って、音を立てないよう玄関に近づいて扉を開けました。でも外には誰もいなかったんです。さっきまで扉の前でカメラを見つめていた男が、ものの十数秒で消えてしまいました。走り去る足音さえ聞こえませんでした」


シゲミ「で、その男が幽霊ではないかと先生は考えている」


山之辺「ええ。そうとしか思えません。だからシゲミさんに相談しようと思いました」


シゲミ「ちなみに小包の中には何が?」


山之辺「指輪が入ってました。髪の毛が何本も巻きついた指輪が。他には何も入っていません。指輪が1つ、段ボール箱の中に入っているだけです」



 シゲミは左手をアゴに添える。



シゲミ「何かのメッセージか、単なる嫌がらせか……それに小包を置いている男が幽霊なのか、生きている人間なのかも先生の話だけでは判断できません。もし人間なら警察に相談したほうがいい。私じゃ殺すことしかできないので。人間を殺すと後始末が面倒なんですよね。だからやりたくない」


山之辺「幽霊に間違いありませんよ。私がこの目で確認しましたから。もし生きている人間だったとしても始末してもらったほうが安心です。シゲミさんは、人間は殺さないのですか?」


シゲミ「それ先生が言うことですかね? ……人間の殺しは極力やりません。巻き込んでしまうことはありますが」


山之辺「でもあの男は間違いなく幽霊です! お願い、シゲミさん! 力を貸してください……」



 山之辺は両手でシゲミの手を取り、涙目で訴えかける。



シゲミ「ではこうしましょう。今晩その男が来たとき、私が扉を開けて幽霊かどうか確認する。もし幽霊だという確証を得たら駆除のための対策を取ります。いかがですか?」



 今にも泣き出しそうだった山之辺の顔が、満面の笑顔に変わる。



山之辺「ありがとうございます! お願いします! そうと決まれば、まずは腹ごしらえといきましょう! 腹が減っては(いくさ)はできぬと言いますからね!」



 山之辺は席を立ってキッチンへ行く。



山之辺「私が手料理を振る舞いますよ! 何が食べたいですか?」


シゲミ「じゃあエビフライが良いです」


山之辺「わかりました。出前を取るのでちょっと待っててくださいね」


シゲミ「……先生が作るんじゃないんですか?」


山之辺「ええ。作るというのはウソです」

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