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追跡③

3日後 AM 2:37

東京都内某所

 長い茶髪にミニ丈の白いワンピース、高いハイヒールを履いた女性が涙目になりながら住宅街を走る。必死の形相で「助けてぇ!」と叫ぶが、周囲に立つ民家の住民たちは寝静まり、誰も反応しない。


 女性は細い路地に駆け込む。しかしその先は行き止まり。振り返った瞬間、首と腰が切断された。頭、胴体、足の3つに分かれた女性は、ボトボトと路上に落ちる。


 女性を切り裂いたのは、怪異・テケテケ。長い黒髪で顔の左半分を隠し、白いワイシャツを着て、両手で巨大な鎌を握る女。足はなく、上半身だけでフワフワと宙に浮いている。


 テケテケは鎌を振り、刃に付着した血液を払い落とす。その場を立ち去ろうと()を返すと、5mほど離れて、野球帽とサングラス、マスクで顔を隠した夜宮(やみや) シオンが立っていた。



シオン「アナタ……たしかテケテケって怪異だよねぇ〜?」


テケテケ「いかにも、()()がテケテケだ」


シオン「我々ぇ〜?」


テケテケ「テケテケとは、私個人を指す呼び名ではない。日本全国にいる同胞、およそ700体。その総称だ」


シオン「ふぅ〜ん。アナタみたいなブスがいっぱいいるってことぉ〜?」


テケテケ「……ブスだと?」



 シオンは帽子とサングラス、マスクを外し、地面に放り投げる。



シオン「どう? 私のルックスぅ〜? かわいいでしょ? 『かわいすぎるホラー作家』って言われててねぇ〜、この素敵な顔で冴えないマスかき男どもを魅了してるのぉ〜。アナタには絶対にできないことでしょ〜?」


テケテケ「……そんなことを自慢するため、私の前にやって来たのか?」



 テケテケは鎌を握る手に力を入れる。



シオン「い〜や、これはほんの挨拶代わりぃ〜。私はアナタの体が欲しいんだよねぇ〜。人間の体を簡単に真っ二つにできる大きな鎌を持っていてぇ、自由に空を飛べるぅ……実家に持っていくお土産を集めるのにピッタリぃ〜」


テケテケ「何を言っているのか、要領を得んな……だが、ムカつくヤツだということはよくわかった。お前のような、世の中を舐め腐った人間を殺すことこそ、我が使命!」


シオン「使命か……1つ聞いていい? それって仕事ぉ〜? 誰かに言われてやってるのぉ〜?」


テケテケ「自主的にやっているのだ! 我々はムカつくヤツを殺して回る『テケテケ』という怪異サークルだ!」


シオン「仕事じゃないならオッケぇ〜。アナタ、合格ぅ〜。点数は……67点」


テケテケ「どこまでもバカにしおって……必ず殺してやる。逃げても無駄だぞ。我々『テケテケ』は全員で思考を共有している。私から逃げられたとしても、仲間がお前を見つけ出す。700体のテケテケ包囲網から逃れることは不可能だ」


シオン「思考の共有ねぇ〜……ちょっと加点して、78点かなぁ〜」



 対峙するシオンとテケテケ。2人の死角、路地の曲がり角からヒョウ柄のシャツを着た若いチンピラが顔だけを出して覗く。右耳に当てているスマートフォンでかけた電話がつながった。相手は浜栗(はまぐり) ミキホ。



ミキホ「俺だ」


チンピラ「組長、夜宮 シオン先生を見つけました! 上半身だけの女と何やら話してます」


ミキホ「怪異と密談か……で、ソイツはシオンに間違いねぇのか」


チンピラ「はい。俺、シオン先生のファンなんで、顔はよく知ってます。ああいう、一見清楚だけど裏でスケベな同人誌を読みあさってそうな女の人とお付き合いしてぇなと思って、注目してたんす」


ミキホ「お前の女のタイプなぞどうでもいい。すぐに場所を伝え」


チンピラ「あっ!」



 チンピラは思わず声を上げる。テケテケが鎌でシオンの首を()ねたからだ。


 ペットボトルロケットのように、切り口から血を噴射しながら空へと飛び上がるシオンの頭。重力に従い、落下する。シオンの視線とテケテケの視線が重なった瞬間、シオンの左耳からネクロファグスが飛び出し、テケテケの右耳へと入り込む。


 ネクロファグスは鼓膜を突き破り、脳へと侵入。テケテケの体につながる神経をすべて自分のものにした。そしてテケテケの体を操り、路地から出ていく。チンピラは背後にあった電柱の陰に隠れながら、ミキホに情報を伝え続けた。



チンピラ「上半身だけの女が……鎌でシオン先生の首を斬り落としました……くそぉ……俺はこれから何を楽しみに生きていけば……」



 スマートフォンからミキホの怒声が響く。



ミキホ「早く場所を言え! この凡愚(ぼんぐ)!」


チンピラ「すいやせん! 散魔(さんま)駅から南西へ15分ほど歩いた住宅街です! 上半身だけの女は浮かびながら移動しています!」


ミキホ「すぐに向かう。お前は尾行を続けろ」


チンピラ「へい!」



−−−−−−−−−−



 ミキホは通話を終えてスマートフォンをズボンのの右ポケットにしまうと、左脇に抱えていたフルフェイスのヘルメットを被る。そして赤い車体の400ccバイクのエンジンをかけた。バイクの後部には、ミキホのものと同じヘルメットを被り、ブレザーを着たリオ the チェーンソーがまたがっている。もちろんリオの右手には、愛用のチェーンソー。


 ミキホはリオとニケツし、バイクを発進させた。

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