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JK組長③

PM 4:33

市目鯖(しめさば)高校

 浜栗(はまぐり) ミキホを先頭に、右斜め後ろにシゲミ、左斜め後ろに舎弟のマメオが続き、校舎内の廊下を歩く。



ミキホ「市目鯖にも怪異が出るんだろ? こうして歩いてりゃ、先にシゲミの仕事ぶりを見られるかもな」


シゲミ「かもしれないわね。でも、学校で仕事をすると生徒会がウルサいの」


ミキホ「生徒会か……なら久しぶりに、あのオールバック生徒会長に挨拶しとくか」


シゲミ「フミヤくんと顔見知りなの?」


マメオ「組長とフミヤは出身中学が同じなんだ。かれこれ5年近い付き合いがある」



 3人は階段を下り、1階にある生徒会室の前に到着。ミキホが扉を開けた。中で、オールバック生徒会長ことフミヤが1人、パイプ椅子に座りスマホをいじっている。扉が開いたことに気づき、立ち上がるフミヤ。「この部屋は生徒会以外は立ち入り禁止」とまで言いかけるが、ミキホの顔を見た途端に言葉を失う。



ミキホ「よぉ、生徒会長様。元気でやってるかぁ?」


フミヤ「ミミミミミミキホさんんん!?」



 フミヤは両手でごまをすりながら、ミキホに猛スピードで接近した。



フミヤ「どうなされたのですか、ミキホさん! 突然いらっしゃるなんて! ご一報いただければ、おもてなしの準備をしましたのに!」


ミキホ「ちょうど近くを通りかかったもんで。ちょっくら覗いていこうかと思ったんだ」


フミヤ「そうでしたか! いやもう、我が生徒会は絶好調でございます! それもこれも、全てミキホさんのおかげ! もし気に入らない校則などあれば、いつでも変更しますのでおっしゃってくださいねぇ!」


ミキホ「ならよぉ、オレの連れがもっと働きやすい学校にしてくれや」



 ミキホは親指で背後にいるシゲミを指さす。シゲミが視界に入り、フミヤは一瞬だけ険しい表情を浮かべた。



フミヤ「ば、爆弾魔シゲミ……」


ミキホ「シゲミのおかげでよぉ、怪異の危険から救われた生徒が大勢いるんだろ? その点をもうちょっと考慮してやってくれねぇかなぁ?」



 右腕をフミヤの首の後ろに回し、ぐいっと体を引き寄せるミキホ。フミヤの険しい表情が、天井から釣り糸で無理やり引っ張られているかのような歪んだ笑顔に変わった。



フミヤ「……わわわわかりました! 善処します!」


ミキホ「よろしく頼んだぜ、オールバックのお坊ちゃん」



 フミヤの頭を右手で軽く2回叩くミキホ。ジェルがついた手のひらを、フミヤのブレザーのジャケットにこすりつける。


 フミヤのごまをするスピードが高まった。



フミヤ「それと別件なのですが、1年生の書記が来期の生徒会選挙で会長に立候補するんです。よほどのことがない限り当選するとは思うものの、もし強力な対抗馬が現れた際は、僕のときと同じくミキホさんに手を回していただきたく……」


ミキホ「見返りは?」



 フミヤはミキホの左側頭部に顔を寄せて耳打ちした。フミヤのささやきを聞き、唇の隙間から歯を覗かせるミキホ。



ミキホ「悪くない。潰したい立候補者がいたら連絡しろ。クンロクを入れる(脅す)。殺さないほうがいいんだろ?」


フミヤ「はい。なるべく穏便に済ませたいので……」


ミキホ「任せときなよ」



 ミキホはフミヤの右肩を叩くと、高らかに笑いながら振り返り、生徒会室から出て行く。ミキホに向かって深々とお辞儀をするフミヤを一瞥し、シゲミとマメオも生徒会室から廊下に出た。



シゲミ「どういうこと?」


マメオ「浜栗組(はまぐりぐみ)は生徒会のケツモチをしている。フミヤが生徒会長になれたのは単なる選挙の結果じゃねぇ。組長の根回しがあったからこそ。だからフミヤは組長に頭が上がらねぇのさ」


シゲミ「フミヤくん……いつも偉そうにしてるけど、ミキホちゃんが擁立(ようりつ)した傀儡(かいらい)だったというわけね」


ミキホ「フミヤのヤツ、将来は政治家、ゆくゆくは総理大臣になりたいそうだ。だから、民衆の上に立つというのがどういうことか、早いうちに経験させてやろうと思ってな。なかなか見所があるぜ、アイツ。17歳の割にはおべっかを使うのが上手い。政治家に必須のスキルだ」



 ミキホを先頭に廊下を歩き始める3人。正面から道を塞ぐように6人の女子生徒が話ながら歩いてくる。女性生徒たちはミキホの顔を見ると、廊下の左右の壁に沿って3人ずつに分かれて道を空けた。全員、両手を腰の後ろに組んで背筋をピンと伸ばしている。



女子生徒「ミキホ組長、お疲れさまです!」



 女性生徒の1人が口火を切ると、他の5人も続けて一斉に「お疲れ様です!」と大声で挨拶をした。立ち止まるミキホ。



ミキホ「茶道部か。リオ the チェーンソーの容態はどうだ?」


女子生徒「明後日には退院できるそうで」


ミキホ「そうか。あの血に飢えた獣のことだ、殺しがしたくてウズウズしてるだろう」


女子生徒「リオちゃんが退院したら、最近市目鯖区で暴れてる半グレ集団を片付ける予定です。ただ……」


ミキホ「なんだ?」


女子生徒「そいつら、死軍鶏組(ししゃもぐみ)ってヤクザがバックについていると吹聴しているらしく……」


ミキホ「聞かねぇ組だな」



 マメオがズボンの右ポケットからスマートフォンを取り出し、死軍鶏組について検索する。



マメオ「半年くらい前にできたばかりの組っぽいっすね」


女子生徒「新興組織といえど、ヤクザがケツモチしてる連中に手を出すと、ミキホさんにご迷惑をおかけすると思いまして。今は泳がせているんです」


ミキホ「良い判断だ。だがもう消しちまってかまわない。もし死軍鶏組とかいうヤツらが出張ってきたら、浜栗組の名前を使っていい。それでも引かないなら、お前らで組ごと壊滅させろ。リオがいれば余裕だろう?」


女子生徒「げっへっへっへっ……その言葉を待ってましたよ」



 女性生徒たちはミキホに頭を下げると、(きびす)を返して歩き去った。



シゲミ「極悪茶道部のケツモチもしてるの?」


ミキホ「少し違う。茶道部は浜栗組の下部組織に近い。卒業したらアイツらを組に入れてやる代わりに、厄介者の始末を手伝ってもらっている。殺しの腕はプロ顔負け。特に部長のリオは逸材だ。言うことを聞かないのが玉に(きず)だけどな」


シゲミ「……リオちゃんを手懐けるのは無理ね」



−−−−−−−−−−



 2年H組の教室に向かい、階段を上がる3人。2階と3階の間の踊り場で、40代前半と見られる女性と鉢合わせた。



女性「すみません、8歳くらいの男の子を見ませんでしたか? 青いシャツを着た子で」


マメオ「お子さんですか? どこにいるんです? あやしますよ」


女性「それがわからないんです。下の子で、家に置いてくるのが心配だったので連れてきたのですが……少し目を離した隙にどこかへ行ってしまい……」


マメオ「もし良ければ、自分たちが探しましょう」


女性「あ、ありがとうござます! 私、この後すぐPTAの集会に参加しなければならなくて……代わりに探してもらえると」


マメオ「わかりまへボラァッ!」



 ミキホがマメオの顔面に裏拳を見舞う。鼻血を出して階段を転げ落ちるマメオ。



ミキホ「子供好きもいい加減にしろ。このロリコンブタ野郎が」



 ミキホは階下でひっくり返るマメオに向かって吐き捨てると、女性に顔を近づけた。



ミキホ「テメーのガキだろ? ならPTAの集会なんぞサボってテメーで探せ。オレらはヤクザだ。ふらついてるガキがいたらバラして臓物を売りさばく」


女性「ですが」


ミキホ「1つ良いことを教えてやろうか。今日の集会にはウチの組員が総会屋として乗り込むことになっている。先公どもに緊張感を持たせるためにな。場合によっては血を見ることになるかもしれねぇ。それがイヤならさっさとガキ見つけて失せなぁ!」



 ミキホは懐からバタフライナイフを取り出し、刃を女性の左頬に突きつける。女性は怯えた表情で「ひいぃっ!」と悲鳴を上げると、そそくさと階段を下って行った。女性と入れ替わるように、ゆっくりと階段を上がってくるマメオ。



マメオ「すみません組長。自分、子供のことになると、どうも甘くなっちまうタチで」


ミキホ「なら保育士にでもなるか? 指詰めて組を抜けてもらうことになるが」


マメオ「ご勘弁を! ただでさえ()()()6()()()()()()()()()()()から留年しまくって苦労してるんです! これ以上減ったら、さらに卒業が遠のいちまいますよ」



 両手を開き、目の前で振るマメオ。左右とも小指と薬指が根元で切断されている。



ミキホ「だったらせめてヤクザらしくしろ。カタギのパシりなんかして、浜栗組の格を落とすような真似するな」


マメオ「へい。肝に銘じておきます」



 親分から子分へ送るヤクザの流儀のレクチャーに、「あのぉ」とシゲミが割って入る。



シゲミ「ミキホちゃんの仕事はもう充分見せてもらったわ。私が言えたことじゃないけど、これ以上知るとドン引きしちゃいそう」


ミキホ「そうか。じゃあ次はシゲミ、お前の仕事を見せてくれ。マメオ、後のことは頼んだぞ」


マメオ「へい。組長、いってらっしゃいませ」


シゲミ「あら。怪異殺しは、そっちのチンピラくんに見せるものだと思ってた。組長が直々に教えを請うなんて」


ミキホ「『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』だ。新しいことを組織に取り入れるなら、まずはトップが習得し、部下に見せてやる。これが私のモットーだよ」

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