焼け跡の誓い
~12/8~
あの試練を乗り越えたはずなのに、心はまるで解放された気がしない。むしろ、何かが重くのしかかっている感じがする。覚醒した力を自分のものにするには、まだまだ時間がかかるだろう。少なくとも、俺の手のひらに感じる熱と痛みを思い出すたびに、何かが震え上がる。
あの炎の力。暴走しそうになったあの瞬間、何かが俺を飲み込んだ気がした。リリスの言う通り、この力を完全に使いこなせるようになるためには、まだ多くの試練を乗り越えなければならない。自分の中で何が変わっていくのか、怖くてたまらない。力を使うことが、こんなにも恐ろしいとは思わなかった。
試練の中で、俺が初めて力を使おうとしたとき、炎が俺の体を包み込んだ瞬間、目の前が真っ赤に燃え上がった。最初はただの熱気だと思っていたけれど、その熱さはすぐに体を焦がし始め、心臓が狂ったように速く打ち出すのが分かった。力が暴れだし、意識が遠くなるのを感じた。その時、リリスが冷静に言った言葉が俺の耳に響いた。
「自分の中の力を恐れず、受け入れなさい。それが、力を使いこなす第一歩だ。」
その言葉が、まるで耳元で囁かれたように聞こえた。最初はどうしていいか分からなかった。炎は俺を飲み込むように、どんどん強くなっていく。でも、俺は必死でその力に耐えた。炎が手のひらを包むたびに、まるで体が焼けるような痛みが走った。でも、やっと、少しだけその力を制御できる感覚を得た。炎が小さくなり、激しさが収まった。少なくとも、自分の中にあった暴力的な力を少しだけでも感じられたことは、まだ希望が持てるという証拠だと思った。
でも、その後すぐに頭に強烈な痛みが走った。まるで何かが俺の脳内を引き裂いているような感覚に襲われて、立っていることさえできなかった。目の前が真っ暗になり、ふらついた。吐き気もする。力を使った代償、こんなにも身体が反応するのか、と驚いた。
リリスはその様子を冷静に見守りながら、何も言わずに手を差し伸べてくれた。俺はその手を取ることもできず、ただ膝をついてしまった。リリスが言った言葉が浮かぶ。
「力を使うたびに、あなたの中で何かが失われていく。」
その言葉が恐怖のように俺の心に重くのしかかる。力を使うたびに自分が消耗していく。父親が遺した力は、こんなにも代償を伴うものだったのか。俺はまだ、その代償を完全に理解していない。けれど、ひとつ確かなことがある。力を使うことができても、それがどうしても重く、恐ろしいものだということだ。
リリスはその後、少しの間黙っていた。そして、ゆっくりと語り始めた。
「ケイ、あなたはもう普通の人間じゃない。父親が遺した力を引き継いだ時点で、あなたの運命は変わった。普通の大学生として、普通の生活を送ることはできない。それが、この力の宿命だ。」
俺はその言葉をどう受け止めるべきかわからなかった。確かに、普通の生活が戻ってくるとは思えない。だって、もう一度あの力を使う覚悟を決めた時点で、俺は普通じゃなくなったんだろう。リリスが言う通り、俺の運命は変わった。そのことを受け入れなければならないのだろうけど、どうしてもその現実を受け入れることが怖かった。
「でも、力を使いこなせるようになるためには、まだ多くの試練が必要だ。それは覚悟しておいて。」
リリスが続けて言ったその言葉も、また俺を重く圧倒する。試練。それは恐らく、俺が今まで想像もできなかったようなものだろう。今の俺ではその試練を乗り越えられる自信が全くない。ただ、力を使うことすらもこんなに怖いのに、もっと強い力を引き出さなければならないなんて。
でも、引き受けなければならない。それが、俺が父親の死の真相を解き明かすために必要な道だから。俺がこの力を使って、過去の謎を解かなければならない。力を受け継いだ以上、それは避けられない運命だと思う。
ただ、今はその覚悟ができるかどうか、自分でも分からない。力を使うたびに、何かを失うのは嫌だ。失いたくないものがあるから。それでも、進まなければならない。進んで、力を完全に制御し、父親の死の真相を解き明かさなければならない。リリスはそれを促すように言う。
「これからお前を試す者たちが現れる。お前はその者たちを倒し、力を制御できるようにならなければならない。」
その言葉が、俺にさらに重い決意を求めている気がする。倒さなければならない者たち、つまり、これから俺の前に立ちはだかる者たちが何者なのか、それを知ることはできない。でも、彼らを倒し、力を使いこなせるようになるためには、全力で戦わなければならないのだろう。それが、父親が俺に託した使命だということを、今はまだ完全に理解できていないけれど。
でも、力を制御しきることができれば、きっと全てが変わる。過去の謎も、父親が残したものも、全てが明らかになるだろう。俺はそのために進んでいくしかない。
今、目の前には大きな壁がある。試練を乗り越えることができるのか、その壁を突破できるのか、俺には分からない。でも、進むしかない。