表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/55

Panic 8. 侵入者の願い

「いけ!」

ポワンが命令する。

ゴレムンの映し出す映像の中では、盗賊に網が降りかかろうとしていた。

「やった!」

スペース的に逃げ出せる余地はない。

マコリンが喜んでいると、

「脱出!」

盗賊が特技名らしきものを口にする。

「あっ!」

マコリンが目を見張る。

次の瞬間、盗賊は網の範囲外に移動していた。

「そんな~~~!あんなの捕まりっこないじゃな~~~~い!」

マコリンはガッカリした顔をしているが、

「まだまだ!コビトン!」

ポワンはやる気健在だ。コビトンに指示を出す。

<ガサガサガサ!>

いつの間にか盗賊を取り囲んでいたコビトンが、一斉に飛びかかる。しかし、

「回避!」

また、盗賊は特技名を唱える。

<ゴン!>

コビトンの飛び込んだ場所には、盗賊は、もはやいなかった。

「あたた...」

お互いに頭をぶつけたコビトンたちが、痛そうに頭を押さえている。

「ど、どうしよう...」

マコリンが途方に暮れていると、ふと映像の中の盗賊と目が合った気がした。

「えっ?」

戸惑うマコリン。すると、

「あっ!盗賊がこっちに走ってきてるよ!もうじき遭遇する!」

ポワンが位置関係を示した映像を見て、声を上げる。

見ると、盗賊を表す赤い点が、こちらにまっすぐ向かってきていた。

「ど、ど、どうしよう!私たちに気づいて消すつもりじゃ...」

マコリンが真っ青になっていると、

「大丈夫!こっちにはゴレムンがいるから...いざとなったら、破壊光線で塵も残さず消えちゃうよ!」

ポワンが安心させるように、そう言ってきた。

「そ、そう...可愛そうだけど仕様がないわね!...来た!」

そんな会話をしているうちに、森の木の間から、盗賊が飛び出してくる。

「ゴレムン!やっちゃって!」

マコリンが命令するが、

「待ってくれ!俺の話を聞いてくれ!」

盗賊は慌てて声を上げると、武器を投げ捨てた。


☆彡彡彡


「なるほど...」

盗賊の話を聞いたマコリンは、納得の表情を浮かべていた。

「急に目の前に黒い渦が現れたから、入ってみたらここに来ちゃって、帰れなくなって困っていたのね!」

「そうなんだ!それにしてもここはどこなんだ?変なものがいっぱいで、人を見かけたら、俺を不審者だと言って、捕まえようとする!」

マコリンが要約すると、盗賊は肯定したが、続いて不満をぶちまけた。

「ここは異世界だよ!お兄さんが見た黒い渦は、異世界同士をつなぐゲートなの!」

そんな盗賊に、ポワンが状況を教えてあげる。

「でも、なんでそんなゲートが?ポワンが作ったんじゃないんでしょ?」

マコリンは首を傾げているが、

「ポワンの他にも召喚士はいるし、ごく稀にだけど、自然発生することもあるよ!」

ポワンが説明する。すると、

「やっぱり、あんた召喚士か!...実は、ここが異世界なのはなんとなく気づいていた!それで召喚士を探してたんだ!」

それを聞いた盗賊が、話に割って入ってきた。

「なんでポワンが召喚士だと分かったの?」

マコリンが聞くと、

「そりゃ、これだけの変な生き物を使役してるとしたら、それ以外、考えられないだろ!その...ゴーレム?らしきものの近くに、人の気配を感じたから来てみたんだ!」

盗賊はそう答えた。

「じゃあ、あなたは元の世界に帰るために...」

マコリンが口を開くと、

「ああ!随分、探したぜ!...それで...お前、どうなんだ?俺を元の世界に帰せるのか?」

盗賊はすがるような目で、ポワンを見つめてくる。それに対しポワンは、

「う~~~~ん...問題はお兄さんがどこの世界から来たかだね!...多分、『ファンタジーの世界』だと思うけど...」

すると盗賊は、

「『ファンタジー』?...どういうことだ?」

と首をひねっている。

「まあ、ファンタジーの世界の住人は、自分の世界が特別だとは思ってないわよね...」

マコリンがつぶやいていると、

「そうだ!お兄さん、どこでその黒い渦を見つけたの?」

ポワンは何かに気づいたように問いかける。

「えっ?ああ、『霧の森』の近くだが...」

盗賊は質問の意図が分からないようだったが、とりあえず答えた。すると、

「間違いない!『ファンタジーの世界』には『霧の森』と呼ばれる森が存在するの!...そこにゲートを開いたらいいんだね!」

ポワンはポンっと手を叩いた。

「できるのか?!頼む!!」

それを聞いた盗賊は、うれしそうに目を見開くと、ポワンに頭を下げてお願いしてきた。

「うん!もちろん!...これで問題解決だね!」

ポワンがマコリンに、にっこりと笑いかけた。

「ま、まあ、そうとも言うわね...」

決まり悪そうなマコリンだったが、

「じゃあ!」

ポワンは前へと両手を差し出し、魔法を詠唱した。

召喚(サモン)!」

目の前に現れた黒い渦。

「おお!」

盗賊が感動している。

「これをくぐったら『霧の森』だよ!じゃあね!」

「ありがとよ!」

ポワンの言葉に、盗賊は礼を言うと、渦の中に消えていった。



それからしばらく。

<ブン!>

盗賊が戻ってこないのを確認したポワンは、ゲートを閉じる。

「じゃあ、お父様に報告に行かなきゃね!きっと褒めてくれるよ!」

ポワンはうれしそうだ。

威勢よく、お父様の執務室に向かって歩きだす。

「そ、そうね...」

(でも、どう報告しよう...『異世界から来た人間を、元の世界に戻しました』?...そんなの信じてくれるかしら?)

マコリンは悩みながら、そんなポワンの後をついていくのだった。


☆彡彡彡


「おお!もう解決してしまったのか?!...さすがだ!!」

お父様は大興奮だ。

マコリンはどう説明しようか迷ったが、ポワンがありのままを話してしまった。

「...お父様は『異世界』を信じるのですか?」

マコリンが恐る恐る、尋ねると、

「ん?だって、ポワン君の仲間を見れば、そう考えざるを得ないだろう?」

お父様は当たり前のように言う。それを聞いたマコリンは、

(そういえばそうね!みんな、反応が普通すぎて気づかなかったわ!)

自分の考えが杞憂だったことに思い至った。

「他の使用人もそう思っているのでしょうか?」

マコリンが一応、確認をする。

「それが普通だと思うが...」

お父様の言葉に、

「普通ねぇ...」

異世界の生物に驚かなかったみんなのことを考えると、そうつぶやいてしまうマコリンだったが、

(でも、良かった!隠し事はしなくて済みそう!)

ホッと胸をなでおろしていると、


「では、これでマコリンも異論はないな?」

突然、お父様にそんなことを聞かれてしまう。

「えっ?」

マコリンが驚いていると、

「ポワンたちが問題を解決したら、『みんな一緒にここにいていい』って言ったじゃない!」

ポワンが頬を膨らませている。

(そういえば!!)

捕り物劇に気を取られ、すっかり忘れていたマコリン。

「ま、まあ、いいんじゃない!」

一緒に行動をともにしたからか、マコリンは不思議とイヤな気持ちはなくなっていた。

「やった~~~~~!!」

飛び上がって喜ぶポワン。

「わ~~~~い!良かった!良かった!」

見ると、お父様もポワンと手を取り合って喜んでいる。

「もう!お父様まで!!」

頬を膨らませたマコリンだったが、その目は怒っていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ