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Panic 5. マコリン家は大騒ぎ

(ポワン、大人しくしてるかしら...)

マコリンは教室の窓を眺めながら、(うち)に帰ったポワンを心配していた。


あの後、マコリンは運転手に言いつけ、ポワンを自宅まで連れ帰ってもらうことにした。

そして、『この子は私付けのメイドとして雇うから、帰ったら、お風呂に入れて、メイド服に着替えさせなさい!』と命じたのだった。

『え~~~~!ポワン、マコリンと一緒がいい!!』

とごねたポワンだったが、

『ダメ!学校にはポワンは入れないの!』

マコリンはそう言って、ポワンをリムジンに押し込む。

『つまんな~~~い!!』

不満そうなポワンだったが、ふと何かに気づいたように口にした。

『そっか!そういうことだね!分かった!』

そして、素直に車に乗って、帰っていったのだった。


(物分かりが良くて助かったわ!...でも...)

マコリンは一抹の不安を拭えないでいた。

(どうも胸騒ぎがするのよね...って気のせい!気のせい!)

マコリンが心の中で首を振っていると、

「この問題、星乃宮(ほしのみや)さんが解いてくださる?」

前方から先生の声が聞こえる。

(いけない!今は授業中。集中しないと!)

「はい!」

模範となるような凛々しい声で返事をしたマコリンは、黒板へと向かう。

(今朝はいろいろあったわね!でも、やっといつもの日常に戻ったわ!)

「さすが真子(まこ)様!歩き方もお美しいですわ!」

耳に飛び込んでくるクラスメートの賛辞の声を聞きながら、いつしか不安は消え去っていた。


☆彡彡彡


ここは隣の家が見えないほど、大きな屋敷の厳重な門。

警備員が鋭い眼差しで辺りを見回していると、一台のリムジンがやってくる。

「お嬢様のお帰りだ!」

すると、門が左右へと開きだす。

「お帰りなさいませ!」

車が門を通り過ぎる時、警備員は敬礼をしてマコリンを迎えた。


しばらく、リムジンは広大な敷地をエントランスに向かって走る。

門から入口まで、車でも数分、かかる大きさだ。


「ポワン、待ってるわね!何してるのかしら...」

マコリンが独り言を言う。すると、

「あっ!マコリン、お帰り!!」

窓の外からポワンの声が聞こえた。

「あっ!ポワン!ただいま!...メイド服に着替えたのね!可愛いわよ!」

「へへへ!」

マコリンに褒められ、うれしそうなポワン。しかし、

「ん?」

マコリンが違和感に気づく。

「ちょっと待って!私、今、車の中...なんで同じ速さで動いてるの?」

そう口にしたマコリンは、慌てて窓の外を覗き込む。

「コドラン!!」

するとそこには、地面すれすれに低空飛行しているコドランの姿が見えた。

「ちょ、ちょっとポワン!!なんでコドランが?!」

マコリンが叫ぶと、

「コドランだけじゃないよ!みんな連れてきたよ!」

ポワンの声。

<ズシ~~~~ン!>

それに呼応するように大きな地響きがする。

遠くを目をやると、敷地の林の中に巨大なロボットが見えた。


「お嬢様!どうしましょう?」

困ったような運転手の声。

「とりあえず入口まで行って!後は私がなんとかするわ!」

マコリンはそう言いながらも、一人、頭を抱えていたのだった。


「ポワン!!」

リムジンから降りたマコリンは、ポワンを怒鳴りつける。

「遅かったね!みんなマコリンを待ってるよ!」

ポワンは、そんなマコリンの様子など気にしていないかのように、コドランから降りると、笑顔で迎えた。

「他のみんなは?」

マコリンが慌てて聞くと、

「中でお手伝いしてるよ!」

ポワンは相変わらずニコニコしている。

「大変!!」

マコリンは家の中に飛び込むのだった。


「ホッ!ホッ!」

「キャ~~~~!!その壺は数千万円するんですよ~~~!!」

コビトンたちが家の中を清掃していた。

その際、美術品が邪魔なのか、頭の上でバランスをとりながらほこりを払っている。

「わしらをなめてもらっちゃ困る!妖精族は器用なんじゃ!」

大声を上げているメイドに対し、気にする様子もなく答えるコビトン。


一方、キッチンからは、

「こら~~~~!!何しとる!それは今夜のメインの食材...」

「だから今のうちから下ごしらえをしとかんと...それくらいも分からんのか?」

料理長とオークックンとおぼしき口論が聞こえてきた。


そして、メイド室からは、

「勝手に何してる...って、もしかしてメイド服、作ってるんですか?」

「ええ!既製品はポワン様にはお胸が窮屈で...それにスカートの丈も長いですし...って!!...見ましたね?!」

メイドらしき若い女性とオリヅルンの会話。

「も、もしかして、見てはいけなかったのでは...」

メイドの緊張した声が聞こえるが、

「いいえ!隠れて機を織っているわけではないので、別に構いません!」

「紛らわしいこと言わないでくださ~~~い!!」

楽しそうな二人のやり取りだった。


「...思ったより平和ね...人間じゃないんだけど、そこは問題じゃないのかしら?」

少しホッとしたマコリンだったが、

「そうじゃなくて、ポワン!!」

一緒についてきたポワンを睨みつける。

「な~~~に?マコリン!」

ポワンはなぜ、怒っているのか理解していないようだ。

「なんで勝手にみんなを連れてきたの?!」

マコリンがポワンに詰め寄るが、

「えっ?!マコリンがポワンを先に帰したのは、『みんなを連れてこい』って意味だったんじゃないの?!」

ポワンはポカンとした顔をしている。

「そんなわけないでしょ!!」

(そっか...それで素直に帰って...胸騒ぎの原因はこれね!)

腑に落ちたマコリンだったが、問題はそこではない。

「家中、大混乱じゃない!!ここに来ていいのはポワンだけなの!!」

ポワンに説教するマコリン。しかし、

「そんな!!...あんなところに置いてきぼりなんて可愛そうじゃない!!」

ポワンはマコリンに食ってかかる。

「私が学校に行っている間に、ポワンは向こうに帰ったらいいじゃない!」

マコリンはそう言うが、

「イヤ!!みんな一緒なの!!」

ポワンは聞かない。


「もぉ~~~~!どうしよう...こんなとこお父様に見られたら...」

「見られたらどうなるんだい?」

マコリンが困った顔でぼやいていると、隣から男の人の声が聞こえてきた。

「きっと、大目玉...ってお父様!!」

マコリンは隣の人の顔を見ると、目も飛び出さんばかりに驚いた。

「ふむ...知らない間に使用人が増えているね...しかも少し変わった人たちばかりだ...」

お父様が屋敷内の様子を見ながら、つぶやいている。

「...どう見ても人じゃないでしょ!...ってごめんなさい!お父様相手に...これは...あの...その...」

マコリンが言葉に詰まっていると、

「『オトウサマ』?もしかしてマコリンのお父さん?...初めまして!あたし、ポワン!マコリンと一緒に暮らすことになったの!」

勝手にポワンが自己紹介をしている。

「ちょっとポワン!」

マコリンが止めようとするが、

「『マコリン』というのは真子のことだね!いい名だ!私もこれからそう呼ぶことにしよう!」

「そうでしょ!みんな『マコサマ』って呼ぶけど、そっちのほうが可愛いと思うんだ!」

お父様とポワンは、話がかみ合っているようだ。

「マコリン!いい子じゃないか!私はこの子が気に入ったよ!」

お父様までマコリンと言いだす有様。

「もう!お父様まで!」

マコリンは頬を膨らますが、

「それで、何か問題でも?私がマコリンを怒る理由は何一つないと思うが...」

不思議そうに首を傾げるお父様に、

「お父様ってこんな人だったのね...」

マコリンは呆れたように、そうつぶやくのだった。


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