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フリージア王国備忘録<特別話>   作者: 天壱
コミカライズ記念

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〈コミカライズ決定‼︎感謝話〉卑怯王女は怯え、

この度、ゼロサムオンラインでコミカライズをして頂けることになりました…‼︎

3月19日からスタートです。

少しでも感謝をお伝えしたく、急ぎ書き下ろさせて頂きました。

163後の感謝話「卑怯王女は遊び、そして勝者は笑う」の延長IFストーリーです。

本編と一応関係はありません。

IFストーリー。

〝もし、彼らがポーカーをしてみたら〟

時間軸は〝無関心王女と知らない話〟辺りです。

皆様本当にありがとうございます。


「お、エリックも戻らねぇのか?」

「流石に気になりますから……。」

「アラン。私達は護衛中であることを忘れるな。」


近衛騎士三人の言葉を背中で聞きながら、私は苦笑いを禁じ得なかった。

目の前の状況にアハハ……と枯れた笑いを零しながら、一緒にテーブルを囲む彼らを見回した。既にどう考えても不穏としか感じられない空気に満ちた空間で、早々にドロップアウトしたくて仕方がない。

言葉も出ない私と違い、不穏な空気の発生源である彼らはまるでそれに気付いてすらいないかのように平然と口を動かしていた。


「なァ、ステイル。……これ、やっぱ色々ずるくねぇか?」

「問題ない。ちゃんと全員が承諾したルールの範疇だ。……ですよね?セドリック王弟殿下。」

「は、……はい。私に出来ることであれば。」

先ず、ここが怖いし。


「ちょっとヴァル!もう一回やり方説明して!」

「あー?今教えたら他の連中に手の内もバレちまうだろうが。」

「セフェク!大丈夫ですよ、僕はちゃんと覚えてますから!」

「折角だし、好きに楽しんでみると良いよ。その為のゲームなんだから」

ね?と滑らかにヴァルに笑い掛けるレオンはどことなく不敵だし。


「わくわくしちゃいますねっ!お姉様!」

「私も陰ながらお手伝いさせて頂きますので。」

きらきらにっこにこのティアラと、優雅に彼女へ椅子を引いてくれるジルベール宰相もなんか今だけは怖い。それでも楽しそうな二人に、私は一音だけを返す。


ことの始まりは、ヴァル達が定期訪問に来てくれたレオンと一緒に我が城に訪れたことから始まった。

また前夜に晩酌をしていたらしいヴァルの特殊能力で予定よりも早く訪れてくれたレオンを歓迎した後、ヴァルの配達受け取りと報酬の受け渡しで客間に皆で一度集まった。ちょうど国際郵便機関の相談で我が国に訪れていたランス国王とヨアン国王が母上との話し合い中で、暇をしていたセドリックと私達でお茶をしていたところだったのでそのままセドリックも折角なら一緒にと皆でテーブルを囲むことになった。

報酬を受け取ったヴァルはセドリックとの同席は嫌だとすぐ報酬を受け取った後に去ろうとしたけれど、そこでジルベール宰相とステイルまで客間に訪れた。

ステイルの方はレオンが来たということで、仕事の区切りもいいからとヴェスト叔父様が休息時間を与えてくれたらしく、ジルベール宰相の方はなんでもヴァルにいつもの情報屋へ特定の情報を調べてほしい旨を書いた書状を届けて欲しいということだった。ジルベール宰相曰く「裏稼業だけでなく一定以上の権力者についての黒い噂も積極的に集めようかと思いまして」らしい。つい最近もどこかの下級貴族の不正が見つかって母上に裁判にかけられたりもしていたから、その関係もあるのだろう。

そうして片眉を上げたヴァルが無言でその書状を懐に入れ、今度こそ去ろうとした時だった。


『ちょっと待ってよ!折角人がいるのに‼︎』


先ず、セフェクがヴァルの腕を引っ張った。

アァ⁈と、今すぐにでもこの場から離れたかったヴァルが唸ったけれど、すぐにケメトが応戦するように私へ声を上げた。


『主!前のお願い覚えてくれていますか⁇』

約束、と言われて正直パッとは浮かび上がらなかった私だけれど、その後にケメトが服の中から出してくれた物を見た瞬間にすぐ理解した。「!ああ」と納得した直後、……もしや今ここでと思えばちょっとだけ冷や汗も伝った。

二人の要望を理解したヴァルは、面々が面々だったからか最初はふざけんな、テメェらでやれ、俺はやんねぇぞの一点張りだったけれど、そうしている間にもアーサーとエリック副隊長の交代にアラン隊長とカラム隊長まで合流にきてしまった。

しかも、ジルベール宰相もまんざらではないように部屋を去らずことの成り行きを見守っているものだから、仕事は良いのかと尋ねれば「ちょうど〝私用〟の為に王配殿下より休息時間を頂いたところでしたので」とまさかのジャストタイミングだった。〝私用〟というのはヴァルへのさっきの情報屋依頼のことだろうけれども、まさかこのままディエル大会に参戦してくれるつもりだった。ティアラも「楽しそうですねっ!」と目を星空みたいに輝かせるし、レオンも前のめりだったしヴァルも二人に押されて最終的に私も何も言えなくなった。


第二回トランプ大会開催を。


しかもセフェクとケメトの話によると、二人とも最近はポーカーに興味を持ったらしく、それをやってみたいとのことだった。

前回のババ抜きと違い一つ大人のトランプ希望だ。二人もあの頃より大きくなったし、一つ大人になったんだなぁと思う。何でも、ヴァルと行きつけの酒場の店主さんがポーカーをしているのを見て羨ましくなったらしい。まぁババ抜きとかは全く付き合ってくれないヴァルがポーカーならやってくれるとわかったら、覚えたくもなるだろう。

ただ、ルールを聞いても一対一の勝負だと見ていてもしっくり来ないこともあり、またジルベール宰相に教えて貰いつつ、私達の勝負を観察したいとか。

よってジルベール宰相による簡単なルール説明から入った。ただ、セフェクとケメトもこればかりは役を覚えるので精一杯で戦術や駆け引きポーカーフェイスとか他のルールまで即記憶は難しそうなので、ある程度簡略化させたルールをジルベール宰相が作ってくれた。

始めて覚えるセフェク達にも優しく、そして突如ルール変更された私達にも順応しやすいルールだ。お陰で本番に近く、取り敢えずは役さえ覚えていれば何とかなる流れで自由度も上がった。簡単に言えばカード配って賭けて交換して最後に勝負だ。これなら確かにわかりやすい。

その間にステイルがお金代わりのチップも手配してくれた。トランプはケメトのがあるけれど、お遊びだし悪戯にお金を賭けるわけにもいかない。三人一組もわりとすんなり決まって、私は前回の約束通りにティアラとジルベール宰相。セフェクとケメトは一纏めで、ヴァルとレオンの四人。そしてステイルとアーサー、そしてセドリックの三人だ。

正直、ステイルがセドリックを誘ったのはちょっぴり意外だったけれど、本人はなかなか嬉しそうだった。ステイルも「ではセドリック王弟殿下は僕らと」と流れるように仲間に入れてくれたし。まさか可愛い妹であるティアラと同じチームにしない為の策だったとかじゃないと良いけれどと少し邪推してしまう。……でも実際、ステイルがこのポーカー大会開催に前のめりになったのって、ティアラから前回同様にまた優勝チームが最下位チームに一つ命令できることにしましょうと提案した直後なんだけれど。

ティアラがジルベール宰相に声をかけるよりも先にアーサーを捕まえてセドリックをリクルートしていたステイルは既に目が本気だった。

しかもそうしてチームが平和に決まった途端にステイルから提案まで上げられた。主に、ヴァルに対してだろうけれど。


『イカサマしても構わないぞ。ただし代わりにチーム内での協力や相談も有りにする』


構いませんよね?と後出しで私やレオン、セドリックにも確認が入ったけれど、私はそれに頷きながらもう嫌な予感しかしなかった。

早々に腹黒策士ステイルの掌で踊らされているような気さえする。ヴァルとしてもイカサマ承認は渡りに船だったらしく、ステイルからの言葉に文句一つなかった。まさかの王族が五人もいるのにイカサマ承認っていいのかしらとは思ったけれど……まぁお遊びだからアリということにしよう。

それにチーム内で協力相談有りは私もありがたい。だって私とティアラはルールは知っていても、実際にやったことはないのだから。大人で教え上手なジルベール宰相に教えを請えるのは勝てる可能性も引き上げられる。

それに今回のポーカーはチーム代表の交換は一人一回までだから、前にでなくてもお互い補填し合えるのは強い。

最終的にジルベール宰相とステイル、そしてアーサーの休息時間も鑑みて制限時間までに一番多くチップを稼いだチームの勝ちということになった。相談可能、協力可能、イカサマ可能と……既にセフェクとケメトの見たかった普通のポーカーとは離れ始めてる気はしたけれど。でもまぁ本人達はヴァルと一緒のチームで嬉しそうだし良いかと飲み込んだ。


こうして、あきらかに穏やかではないポーカー勝負の火蓋が切って落とされた。


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