表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリージア王国備忘録<特別話>   作者: 天壱
重版感謝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/144

箱を開き、



「おや、ステイル様とティアラ様もご一緒で宜しいのですか?先に王宮の方に行かれても……」


クリスマスプレゼント部屋へと足を運ぶプライドは思わず顔が笑ってしまう。

いつもならばそのままの足でそれぞれ摂政業務の補佐と王配業務の補佐へ早めに向かう筈のステイルとティアラが今はまだ自分と一緒にいる。……正確には、自分が付いて行っているジルべールと共に。

公務前に、ジルベールが自分の分のプレゼントを回収に訪れたと従者から報告を受けたのは、ちょうど朝食を終えた後だった。

各自で回収、とは言われていてもプライド達の企画である以上従者に報告だけ頼んだジルベールだったが、結果プライド達の宮殿に到着した時にはちょうど部屋前で三人に待ち構えられた。いつもは早めに補佐へ向かうステイルとティアラも、やはりジルベールがどのようなものを引き当てるのか気になって仕方がない。


問題ない、大丈夫ですっ!と言葉を返す二人にジルベールもプライドと目を合わせてから切れ長な目が笑んだ。

ティアラから催しに誘われた時も驚いたが、思った以上に彼女達もクリスマスを楽しんでいるようだと理解する。ステイルまでも自分が何を引くか気になっているということも楽しい。最後に三つ選ぶというプライド達を待たせない為にも仕事前に早速選びに来たジルベールだったが、ステイルまでこうして付き合ってくれるのならばやはりこの時間帯を選んで正解だったと思う。

部屋に入り、箱を選ぶ。ジルベールでも中身が全く読めない箱に、ステイルが横から「わかっているだろうが持つのも禁止だ。中身を読むな」と釘を刺された。わかってますとも、と言葉を返しながら、手早く一つを選ぶ。

箱を開き、また二歩手前で立ち止まったプライド達に自分が用意した物ではないことを最初に告げる。中身を確認したジルベールは、僅かに丸くした目でなだらかな声を口にした。


「……なかなか大当たりのようですねぇ」


ぐいっ、と両手で最初に取り出したのは、巨大なクマのぬいぐるみだった。

首にリボンのついたテディベアは、揃えられた大きな箱内に座りお辞儀する体勢でちょうど収まった大きさだった。小柄なケメトと同じかそれよりも大きいかもしれない巨大なぬいぐるみに、ティアラは思わず声を上げて手を叩いた。

可愛いですっ‼︎と金色の瞳を水晶にして映したぬいぐるみは、自分の部屋にすらない大きさだ。毛並みも良さそうで、うっかり抱き着きたくなる。あまりに可愛いプレゼントに、ステイルは寸前で顔を逸らしたがそこでククッと笑いを溢した。

プライドも、父親と年齢に大差はない大人男性であるジルベールには可愛すぎるプレゼントに口がヒクつくように笑ったまま固まってしまう。ぬいぐるみを一度床に座らせたジルベールは、再び背中を丸め箱の中へ手を伸ばす。続いて出てきたのは、二本の葡萄酒だ。


「ステラが喜ぶでしょう。葡萄酒も今夜家族で美味しく頂きます」

巨大なクマを小脇に確保するように抱え、そして反対の腕で葡萄酒を抱えるジルベールはそこでにっこり笑んだ。

娘であるステラ、にという発言にプライドもジルベールが「大当たり」と言った理由を理解する。彼にとっては自分に嬉しい物よりも、可愛い娘が喜ぶ物の方が嬉しいに決まっている。

それは素敵ですねっ!と声を跳ねさせたティアラに言葉を返した後、ジルベールは、「素敵な機会をありがとうございました」と三人に深々礼をした。では失礼致しますと、業務へ戻るべく速やかに退室を決めればその後にステイルとティアラも続いた。二人もまた、行く先は一緒だ。


「あのっ、ジルベール宰相!宜しければお部屋まで私がその子を運ばせて貰ってもいいですかっ……?」

「宜しいのですか?少々見かけよりも重いですが」

「ティアラに賛成だ。お前が抱えていても誘拐犯か不審者にしか見えない」

いってらっしゃい、とプライドが見送る中、クマのぬいぐるみを抱き締めたいティアラの本音にジルベールも察した上でくすりと笑んだ。

ジルベールの荷物を一つも持ってやるつもりのないステイルも腕を組みながら嫌味を投げれば、ジルベールも素直に応じた。「クマの誘拐ですか」と、ステイルの冗談とも聞こえる言葉を敢えてそのまま返しながら子どもを預けるようにティアラへそっと手渡した。

意気込んでいた以上に重いクマの重量とのしかかる巨大さに「ふわっ⁈」と声を上げたティアラを、ステイルが腕を伸ばし背中を支えながら進むことになる。

ある意味幸せな重さとモコモコを王配執務室までティアラは堪能し続けた。


愛着が湧いたあまり、つい執務室にいる父親に「父上は〝マカロン〟と〝ミルフィー〟どちらが宜しいと思いますか⁈」とバトラー家の一員になるまでの仮名を投げかけてしまうのは、扉を開けてすぐのことだった。


当然、最終命名権はステラである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ