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フリージア王国備忘録<特別話>   作者: 天壱
アニメ化記念

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135/144

《アニメ完走御礼‼︎》現代王女は集まり、

本編と一切関係はありません。


IFストーリー。

〝キミヒカの舞台が、現代学園物風だった場合〟


※あくまでIFです。

登場人物達は本編と同じような経過を経て同じような関係性を築いていますが、一部呼び方を含む関係性や親密性が本編と異なります。

本編で描かれる登場人物達の関係性は、あくまで本編の世界と舞台だからこそ成り立っているという作者の解釈です。

友人、師弟、主従、恋愛等においても本編と全く同じ感情の種類や強さとは限りません。


※現代をモデルにした、和洋折衷の世界観です。

特殊能力は存在せず、日本をベースに王族・騎士が存在します。年齢も違います。


※時間軸は第一作目解決後です。


※あくまでIFです。

簡単に現パロの感覚でお楽しみ下さい。

「わぁっ!すっごい広いお部屋ですねっ!!お姉様!兄様!」


扉を開いた途端、パッと目を輝かすティアラは一度そこで立ち止まってしまう。

学生としての休日を謳歌する今日、公務の用事もない身として遊びに出かけたが、今日は初めての試みの為始まる前からティアラは大興奮で飛び跳ねてしまう。「すごいっ!」とまたピョンッと両足を跳ねさせながら一歩分前へ進む。ステイルからも後が詰まっているぞと指摘されれば、そこでぱたぱたと駆け気味にソファーへと駆け込んだ。



生まれて初めてのカラオケ店に、興奮がそれでも収まらない。



今まで宿泊した部屋でカラオケ設備自体は経験したことがあるアイビー姉弟妹だが、専門のカラオケ店に入るのは今回が初めてだった。

特にティアラは友人や学校のクラスでそういった誘いやイベントの機会は何度もあったが、社交科とはいえ王族として安易に学生だけでのカラオケ店などは控えてきていた。だからといって自分だけが護衛を引き連れてのカラオケに友人達を巻き込むわけにもいかない。


護衛の有無によって学生らしい場所の立入もある程度許されている王族だが、密室空間というのはなかなか許されない。特に異性が含まれていれば余計にだ。

その為、今まで機会があっても何度も断っていたティアラにとっては特に今日は特別な日だった。

初めてのカラオケを、しかも店でも一番広く豪華な仕様の部屋で体験できることにティアラはマイクを握る前から小さな心臓までも跳ねさせる。そのままぽすんっと一番にソファーに腰掛けた。


「ここなら広々と歌えますねっ!」

「まぁ人数が人数だからな。それに俺達の立場も配慮された上での部屋だ、これくらいはするだろう。……そうだな?ジルベール」

「ええ、勿論です。信頼できる経営者の系列店ですので、監視カメラや盗聴器の心配もございません」

左右の部屋も空室にしてもらっております、と。ステイルからの問いかけににこやかに答えたのはジルベールだ。

部屋の豪華さを確認したプライドも僅かに顔が強ばりながら、流石ジルベールさんと心で唱える。前世ではカラオケ経験があるプライドだが、こんなに広くて豪華なカラオケ部屋など初めてだと思う。

見かけだけの豪華さではない、ティアラも満足するほどのソファー席からしてその質は保証付きだ。王族としてそれなりに上等な部屋には慣れていても、カラオケの部屋としての豪華さはまた違う迫力があった。


今回、プライド達王族がカラオケにこれた要因は複数ある。

その一つが、ティアラたっての頼みでジルベールが手配した信頼できるカラオケ店だった。

総理秘書を担っているジルベールにとって、系列店としてカラオケ店も扱っている経営者など珍しくもない。その中でジルベールの目でも信頼できる、そして王族が使うにも相応しい店の都合を開けさせることなど造作もない。普段滅多に我が儘は言わないティアラからの熱烈な頼みに、ジルベールが応えないわけがなかった。


「まさかティアラや姉君とならばまだしも、お前とだけはこういう場所にくることになると思わなかったがな」

「もうっ!兄様!ジルベールさんが監督してくれるという条件で父上にも許可貰えたんでしょ!!ジルベールさん折角のお休みなのに!」

フン、と鼻を鳴らすステイルに、ティアラが細い眉を吊り上げぷんすかと叱る。


今回、未成年だけのカラオケ店ということもあり、店を紹介したジルベール自らが彼らの付き添いを友人であるアルバートから任されていた。

立場としては監督そして保護者だが、プライドもこれには頭が上がらない。もう高校生にもなって保護者付きなのも恥ずかしさがあれば、学生の集団に押し込まれるジルベールも恥ずかしいのではと思えば申し訳なさがあった。

しかもカラオケとはいえ、結果的には休日出勤だ。今度マリアとステラちゃんにお詫びに美味しいものでも買っていこうと既にティアラとステイルとも約束している。


しかしジルベールからすれば細やかな肩身の狭さ以外は気にならない。せっかくのティアラ達学生の楽しみに自分が邪魔するのに心苦しさはあっても、彼女達が学生を謳歌しているのを眺めるのは純粋に楽しみでもある。カラオケなど、もう自分は接待以外では行く事もない。それと比べれば今はカラオケにしては楽しみなくらいだ。


「部屋用意して貰ってンだから文句言うな。嫌なら席離せば薄暗いし気になんねぇだろ」

来い。と、直後にはステイルの首に腕を回したアーサーがずりずりと扉から一番離れた奥へと向かう。そして端の席を前に、そこで一度立ち止まった。テーブルとの隙間が充分とはいえ、先に奥に入る人間を通さないとならない。


今回、プライド達に誘われたアーサーもまたカラオケに参加していた。

折角のカラオケに邪魔するのはと最初は遠慮したが、ジルベールも来るから問題ないと言われれば断れない。むしろステイルからはやや強引に誘われた。アーサーも連れて行くというステイル達からの提案に、ジルベールも「騎士部の主将がご一緒であれば護衛という意味でも宜しいかと」と快諾だった。むしろ、護衛という名目にするならばと。


「どうぞ、先輩達先に座って下さい。俺ら一番端座るンで」

そう、アーサーは礼と共に先輩騎士達へと席を促した。プライドとティアラが揃って真ん中に座った今、次に真ん中に近い席をステイルとアーサーに譲られる。

扉から順々に入ってきたのは、同じアーサーの所属する騎士部、その大学部に所属する先輩だ。

ジルベールから護衛という意味合いでの騎士部導入を提案された際、プライド達が提案したのが同じ高等部ではない大学部の先輩達だった。以前にブッフェでも一緒に遊びに歩いた面識のある彼らならばと、プライド達からの誘いに誰も断るわけがなかった。


ジルベールが端の席を望み、起立したまま先に騎士達へと着席を促す。

それを受け、最初にアランが遠慮無く奥へと進んだ。促されるままジルベールの前を抜け、プライドの隣に腰掛ける。更にアランへ続きカラム、そしてエリックが並び腰掛けた。

まさかプライド達とカラオケなどと、つい一週間前に誘われたことに未だにエリックは思考の整理がつかない。カラムに至っては、遠慮無く堂々とプライドの隣に一直線になるアランに若干頭が痛くなる。そこは別の人物に譲るべきだろう!と心の中では思うが、座ると同時にプライドと「最初のドリンクこれで注文だったよな?」とプライドとティアラとタブレットを覗きだすからもうどうしようもない。

二人に一つの割り当てで配備されたタブレットを手に、エリックも苦笑気味にカラムへ飲み物のページを差し出した。さらに自分の隣に腰掛ける相手の顔色も窺う。


「あ、ハリソン先輩はお飲み物どうされますか?」

「水で良い」

メニュー画面を見ようともせず即答するハリソンに、エリックはまた苦笑いが少し強張った。

わかりました……と、ミネラルウォーターを一つ追加で入れる。ハリソンがいること自体に文句はないエリックだが、何故来たのだろうと若干疑問は走る。

部活が休みだったこともあり、プライドとアーサーからの誘いに取り敢えず参加は決めたハリソンだったが、本人もまたカラオケに来るのは初めてだった。今まで興味を持ったこともない。

騎士部での打ち上げすら殆ど参加したことがないハリソンは、歌うだけの趣向しかないカラオケも当然行きたいと思ったこともなかった。今も、カラオケの部屋のどこがすごいのかもわからない。そもそもの基本がどういうものかも知らない為、部屋どころかこれからどういうことが行われるのかもあまりピンときていない。

視線を上げれば映画のような広々とした液晶に、誰がつけたのかもわからない謎の宣伝番組を凝視する。短い歌ですぐにまた違う歌に切り替わると思えば、また違う話題にコロコロ変わる画面に少し眉を寄せた。


タブレットで代わりに注文してくれるアランに、早速自分の飲みたいドリンクを伝えたティアラはそこで扉方向へ向けて手招きする。こっちこっち!と満面の笑みで、騎士達の後に続く彼らへ呼びかけた。


「ケメト!セフェクっ!真ん中の方が見やすいですよっ!どうぞこちらにっ!」

手招きの手で、次には自分の右隣の空席をぽんぽん叩く。

ステイルとアーサーも未だ立って待っている中、ティアラからの誘いに駆け足の二人がその前を横切り通った。

カラムからすればこの二人がアイビー姉妹を挟めば平和だったと思う、今回ティアラが誘ったセフェクとケメトだ。

貸し切りのカラオケに、代金は要らないからと食事と共にティアラが是非一緒に楽しみたいと熱望した相手だった。

家の事情でカラオケになかなかいけないティアラと同じく、カラオケには興味があっても今まで一度も行ったことがないセフェクとケメトとこれを期待に一緒に楽しみたかった。


ティアラの隣にセフェクそしてケメトがぽすんっと座る中、先にアーサーと自分の注文だけ済ませたステイルがドリンクページを開いた状態でタブレットをケメト達へ手渡した。「ありがとうございます!」と両手で受け取ったケメトが視線を上げる。


「ヴァル!ヴァルは飲み物何が良いですか?!」

「!ちょっと!ヴァルもこっち座らないの?!」

ケメトの声掛けに「酒」と低い声で一言返したヴァルを最後に、ジルベールが無言で扉を閉じた。これが、今回のカラオケで招かれた全員だ。


セフェクとケメトだけで行けと何度も言ったにもかかわらず、結局は二人に引き摺られてきてしまった。

部屋に入る最後の最後まで帰りたかったヴァルだが、仕方なく部屋の中に入ってはまた眉間に皺を込めた。カラオケに、しかもこの面々で、その上でケメトとセフェクが飛び込んだど真ん中に座りたくない。

扉の前に立ったまま動かないヴァルに、ジルベールが「本日は禁酒です」と断りを入れながら笑いかけた。

今回未成年が含まれている為、もしものスキャンダルにならないようにジルベールを含めた全員がアルコールなしとカラオケ店にも断りを入れている。


「テメェが先座れ。俺は端で良い」

「およおや。扉側の端は大変ですよ。時間終了の電話のみならず、飲み物や食事が来た際テーブルに配る役割も必然となりますが宜しいですか?」

ジルベールが狙う端席を取ろうとしたヴァルだが、途端に喉を反らす。この面々相手にそんなことは死んでもしてやりたくない。

そのまま優雅な動作で奥の席を勧めるジルベールに、ヴァルはうんざりと息を吐き仕方なく端から二番目に腰掛けようとし、……止まる。

ジルベールの隣に座るのもなかなか嫌だったが、更にその隣になるのがハリソンだ。騎士と隣というだけでも嫌なのに、しかもよりによってこの中では一番近くにいたくない相手である。

更にはそのハリソンまでも鋭く見開いた目で威嚇するかのようにヴァルを睨み凝視する。来るな、という意思表示が言葉以外の全てで語られていた。

広々としたソファーでは隣同士でもある程度余裕は開けられるが、それでも互いに袖すら触れ合いたくないといわんばかりの二人に嫌な沈黙が数秒流れた。


チッ!!と、最終的にはヴァルが舌を打つ。ジルベールの前をまた横切り戻り、テレビの前を横切りアーサーとステイルの前を通り抜けた。ケメトの提案通り、仕方なく真ん中に近いそこに腰を下ろすことになる。ハリソンとジルベールに挟まれるくらいならば百倍はマシだった。

脚を乱暴に組み幅を取るヴァルの隣に、間を取ってアーサーが腰を下ろす。そして最後の端にステイルが着席した。


注文し終えたドリンクが全員届くまで各自が曲目を探し始めれば、やっと空気も落ち着いた。しかし順番も何も決めていない中、曲を決めた者も互いが遠慮と牽制でドリンクが届くまで結局誰も曲を入れなかった。

全員分のドリンクが手元に届いてから、とうとう最初にティアラが「決めましたっ!」ときらきらした声で手を上げる。


「私っ、最初に歌ってみても宜しいですか??」


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