マシン上の相合傘?
「勝手でしょう。あたしが想造魔銃剣士試験受けにいっても」
「そら勝手だけどさあ」
「なら、一緒に行く」
「なぬ?」
「こんな美少女を連れ立って試験受けにいけば、他の受験生は、フアンズに一目置くかもしれないわよ」
「どうかなあ…。田舎町の中学のミスにもなれ子が、それほど聴衆の興味を引き立てるかなあ」
「うふふふ」
「なんだよ、含み笑い」
「ボルケス」
「え?」
何の脈絡もなくポランコ、火炎魔法ボルケスを唱えたぞ。さあいったいどういうことだあ!!
「あちちちちちち」
ポランコが火炎魔法を唱えた目的は、フアンズをとっちめることでなく操縦席を焼ききることにあった。
「あら、どうしてかしら広々したわあ」
元々二人乗りだったマシンは、ボルケスの炎でおよそ三人乗りになった。
いつのまにか、その席にポランコが座るというよりも…くつろいでいた。
「二人分だとゆったりとするわねえ」
「強硬手段にでなくとも…乗せてあげたのに」
火炎に焼かれたフアンズ。とはいえ、女子の攻撃魔法、それほどの炎の勢いではない。
「まったく…もう」
「だって、フアンズの隣に乗るのはいいけれど、よりそうような形になるの勘弁して欲しいから」
「だから、ムリヤリ焼ききって、操縦席を広げたのか」
つまり、ポランコにとって、同乗は許容範囲であるが、肌と肌の触れ合いは御免というわけだ。
狭い操縦席。ポランコとのラブラブモードを予想してたフアンズは肩透かし?
ポランコちゃんのマイペースぶりは、マシンに乗っても、相変わらず。
「右行ってね。ポストに手紙を出すから」
「そこ左。あけびが成っているから、収穫したいの」
フアンズは、なんの疑問も持たず、ほいほいとポランコさんの指示通りに動いたが、間抜けなこの男も、いつしか気づく。
「やってられっか」
「うふふふふ。ねえ、フアンズ」
「くそ、聞いてねえ。不満をぶちまけたんだから、それらしい態度を捕れよ」
「あんた、腹立たしい髪型しているわねえ」
「はあ? いきなりなんだよ。ダサいとか清潔感がないとか評されるならいざしらず、腹立たしいとは、どういう髪型よ」
「そういう髪型よ」
ポランコさんがそう表現する気持ちもよく分かる。ボザボサの髪型にみえて、その実、フアンズのいただけないセンスが垣間見られる、この髪型。たしかにどこか腹立たしい。
ポランコさんの表現力は、適当そうに見えて的確である。
「あたし、美容関係の資格を持っているよ。ちょっと手を加えてみていいかしら?」
「ほんと? 君が?」
ポランコに任せるには、ちょっと不安。センスが人とズレすぎているから、美的センスも…だ。
「やってあげるわ…」
「頼んでみるか…」
そろそろおしゃれに目覚めないと焦りだしていたフアンズ、承諾しちゃったが大丈夫?
「ちょっと変わった方法だけど」
ほら、早速雲いきが怪しいぞ。
「……ど、どうぞ」
髪をいじられるくらいなら、万が一妙なことされても、ダメージは少ないとファンズのコンピュータは弾き出したが…。
「爆発理容っていってねえ」
ほらみろ、いわんこっちゃない。名前からして怪しすぎる。
「火炎魔法を頭で爆発させて、自然にできた髪型をね…」
また火炎魔法ボルケスですか? さっきも食らいましたよ。フアンズ。でも、うむをいわせず、ポランコちゃんは火炎放射。
「はい、今日二度目の『ボルケス』どーん」
ばちばちばちと焼かれたフアンズの髪型は、古いコントの爆発したあとのよう。
「ふふふ、さっきよりよっぽど清々しい髪型になったわね」
「……」
自分が受け入れたんだから、文句は言えないな。
「ちょっと、ちょっと、フアンズ止まって、止まっれ。あれ、あれ私の聡明な弟」
「え?」
正面からやってきたのは、いかりも利発そうな少年。たしかにポランコに似てかわいらしい顔立ちをしている。
「あ、おねーちゃん!!!」
「やっほー」
弟と姉は爽やかに挨拶を交わしたが、フアンズ、少し気になるところがある。
「どう、私の自慢の弟。うだつが上がらず、未来も¥どころか、現在すらないどっかのあんたと違って、麗しい少年だったでしょ? あの子、これから市場に買い物に出かけ、火曜日はお風呂を沸かすの…」
「あ? 君の弟、虚ろ目な目で双六を繰り返しているんじゃなかった? 弟というか家族そろって」
「はい、なにいってるのあんた。頭大丈夫?」
ポランコちゃんのいったことだよ。多少、発言には責任持ちましょうね。




