表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

ポランコさん登場

 順調に発進されたフアンズであるが、ワースの目が届かなぬ場所までいくと、急に暴れ馬を調教しきれなくなる。

「うわ!!!! そっちじゃないって!!!」

 ビレドマシンを動かすコツは、強く念じることだけ。操縦者が右と念じれば、ハンドルが左を切っていても、右にいく。操縦者の意思が薄弱ならば、制御不能。

「右だって!!!」

 口で行っても効かない。必要なのは、強い信念なのだから。

「そっちじゃない。うわー!!」

 どかーん。

 フアンズは民家のブロック塀に正面から突っ込む。出しすぎのスピードから考えて、マシンは大破。民家に多大なら損害賠償請求…。のはずなのだが…。

「あれ?」

 どうしてか、マシンも塀も無傷。

 なら、フアンズも無傷のはずであるが、そううまくことは運ばない。

 頭から流血。だらだらと流れる血を右手で拭うと、フアンズ悲鳴をあげる。

「うぎゃああ!!! 血だよ、血~~」

 血の流れる量のわりに、痛みがないのが、不幸中の幸いか。

「しかし、変だなあ~。マシンも塀も無事でオレだけ負傷って…。まあいいや考えようによっちゃあ。賠償もいらないし、マシンを修理する必要もない。オレだけで済んだと思うことにしとこ」

 フアンズは、ネガティブな性格に思われがちだが、時に前を向いて倒れるのだ。

「痛いのにはかわりがないなあ…。誰か回復魔法使える奴いないかなあ」

 回復魔法『ホランド』は初期の基本的魔法である。フアンズのように総合高校を卒業したならば、できて当然。というか、できなければ、卒業単位が降りない必修科目なのである。

 一応卒業証書を持っているフアンズ。本来なら、当たり前の顔をして、ホランドくらい唱えて当然なのである。

「オレ、ホランドの試験どうやって通ったんだっけ…」

 一応、試験は突破したようであるが。

「久しぶりに唱えてみるか、いけ、ホランド!! オレの傷を直せ」

 フアンズは、ちょっと恥ずかしそうにホランドを唱えたが、結果は出ない。

「おかしいな。どうして、こんなオレに単位をくれたんだ。保健の先生…」

 日本人が英語をしゃべれなくとも、点数と出席満たせば、英語の単位がおりると同じ。ホランドを唱えられなくても、ホランドの単位がおりる仕組みなんじゃないか?

「出席も足りないし…。保健の授業、昼過ぎだから、昼飯食うと、眠くなっちゃって、そのまま寝過ごして、気づいたら、授業終わってた、このパターンが多かったのに」

 何? それじゃあ、どうしてホランドの単位がおりたんだ?

「補習に呼ばれて、それでもオレだけどうしたって、ホランドができずに、つに教室にはオレと先生の二人きり」

 おやまあ、またフアンズの触れられたくない古傷をえぐちゃった?

「先生がカワイイからさ。それも悪い思いでじゃないけど」

 なんだい、けっこう嬉しいシュチュエーションじゃないか。

「いつまでたってもできない劣等生のオレに、真剣に向きあってくれた先生の目が、またオレの胸をしめつけた。うるんだあの大きい瞳が…はあ」

 いたせり尽くせりの展開じゃないか。それでどう切り抜けた?

「先生手首切っちゃったんだ…。オレは唖然としたけど、「フアンズくん。あなたのホランドで私の流血を止めて!!」なんて、いわれたらさあ…こっちだって…」

 そうか。先生の文字通りの体当たりの教育が、フアンズの能力を引き出したのか。

「でもいくらやってもできないんだ」

 あれ? 違うのか。

「先生もこれ以上の流血は命が危ないからさ、自分でホランド唱えちゃったんだよね」

 なんだ、結局、できてないんだよね。

「ここまでしてできないなら、仕方がない。努力に免じて単位をあげるわってなんとか切り抜けたんだっけ…。あの先生…元気かな…。もうすぐ40だっけ…」

 40歳? 口ぶりからすると、着任したての若い先生を想像したのに、君は熟女好きなのか。


 ホランドさえできず、痛みに頭を抱えるフアンズに救世主が現れた。

「あら、フアンズじゃないの…」

 どこからもなくかわいらしい声がする。

「げ!」

 その声の主に若干引き気味のフアンズ。何があった?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ