復活の時
いくぜフアンズ、いまこそ復活だ。頼みの綱はお前しかいないんだ。
例の野球小説はどうしたって? 露となって消えたさ。
ならば、ファミコン小説はどうしたって? 完結積みも埋もれて消えたも同然さ。
そうか、事情はつかめた。
微弱なる戦力であるフアンズが、エースをはらなければならないのか。
わかった、それならば努力しよう。努力が成果につながるように全力を振り絞ろう。
ところでだ、どこまでいったのか、肝心のフアンズはどこで投げ出されたのか?
ミラーが鉄仮面を手に入れて、重戦士ノラスコとの再会で、もう脈なしと打ち切り、しかも二度目の
宣告がなされたのか。
わかった、承知した。
ノラスコとフアンズポランココンビの対決を鮮やかに描けば、復活のファンファーレは高らかに
鳴り響くことになるのか。
さて、はじめようか、フアンズの封印を解き、窮地の筆者の救いの手にふさわしい内容になるべく、
物語の止まった時間を動かさそうか。
「フアンズとオレ、差がついたなあ、しかし」
にやにや笑いが止まらないノラスコ。それもそのはず、ノラスコは公務員と立派な社会的立場を獲得し、一方のフアンズは卒業後、職にもつかず、進学もできず、ニートのまま、昼間から徘徊しているのだから。
「くっそ、たかが公務員のくせに。給料安いだろうよ」
「安いが楽しいぜ、町を守るってのはな。警察とはまた違う責任感もあるんだ、この町の用心棒って仕事はな。町の秩序を乱すやつをとっちめるなら、殺人以外はなにしてもいいんだぜ、実際のところ。たとえばさ」
「なにがたとえばだよ」
フアンズがいいかえすと、ノラスコはにやにや笑いを押し殺し、真顔を作る。
「スピード違反、許せんなあ。紛争のない町は、世界一の交通安全を誇る町、死亡事故どころか、負傷事故もめったにないんだ。そんな町で、スピード出し放題の輩は重罪そのものだよなあ」
「ってオレのことかよ」
たしかに、フアンズが操縦していたビッグレッドマシンは道の法定速度を守っていたとはとてもいえないだろう。それどころか、瞬間最高速度は、高速道路でも違反扱いになるほど出ていたはずだ。
町の用心棒ノラスコが、フアンズを取り締まるのもむりはないだろう。
しかし、フアンズは納得いってない。
「ノラスコ、きみのいいたいこともわかる。だが、聞いて欲しい、このマシンは操縦不能」
「操縦不能? そうか、みたところ順当に運転してたようにみえるがね」
「そりゃ操縦は順調だったさ、意外とね。でもな、スピード違反と言われても困るんだ。僕には、このマシンのスピードをどうしようもできない。僕は舵取りが精一杯でスピードの方はマシンが勝手に…・…」
「いいわけ無用だぜ。スピード違反でとっちめれなくとも、運転免許不保持の線でいける。知ってるんだ、フアンズ、お前がまだ免許未習得だとな」
「おいおい、それこそ、このマシンは車であって車じゃない。免許うんぬんの問題じゃなかろうに」
必死の弁明を続けるフアンズだが、もうノラスコは聞き耳すら持っていない。
なんでもいいのだ、フアンズを取り締まる理由がつけれるのなら。理由さえあれば、紛争のない町のご法度である、力づくで相手をわからせる、つまり暴力行為がふるえるのだから。
「問答無用だ、フアンズ」
ノラスコは猛牛さながらにノラスコに襲いかかる。
「これまでのお前との通算成績2勝2敗の5分。つまりは決着のときだ」
あらら、ノラスコ、意外と負けてるのね、貧弱ニートのフアンズに重戦士とやらが。
さてさてどうなることやら、この久方ぶりの対決。




