最終関門
謎の声が出した最後の関門は実に奇妙なものであった。鉄仮面を求めてきたものに、対して所有者になるか、ならないかと問いただしてきたのだ。
ミラーの腹は、当然ひとつに定まっている。
「YESと答えるに決まっているだろう」
「それでいいのかな? 本当にそれでいいのか?」
「どういうことだ。オレはそのためにここまできたんだ」
「鉄仮面をかぶって、君に幸せが訪れるかを、もう一度よく考えてろ。時間はたっぷりと与える。何時間、いや何日かかってもいい」
「幸せになれる? 当然だろ。オレは鉄仮面に悪意を押し込み、想造魔銃剣士になって…」
「人から疎外される人生から脱したいと。鉄仮面をかぶれば、そのすべてを手に入れられると…」
「何が間違っているんだ…」
「本当にそうかな? なにせ鉄仮面の歴代所有者は破滅型が多くてね…。皆、君のように明るい未来を渇望していた若者だった…。だが、その多くは、希望する未来が見れぬまま、鉄仮面に溺れ、不幸な人生を送っていった。鉄仮面は便利すぎる代物でね。いいことにも悪いことにも利用できるから…。だからといって、なにも君が必ず不幸になるといいたいわけではない。鉄仮面はきっかけを与えるのにすぎない。これをどう人生に役立てるかは、君次第だ」
猪突猛進に突き進んできたミラーであるが、さすがにためらいを見せる。
鉄仮面とはそれほど人生に影響を与える代物なのか?
心を制御できる、ただの道具ではないのか?
不幸になったものがいる? それはなぜ? 心を自由に制御できるなら、どんな難事も切り抜けれるはずだ。
いや待てよ。それ以前に、悪意を押し込み想造魔銃剣士になったとしたら、悪意を利したパワーを発揮できなくなる…。素質の大半を占める悪意を捨てて、想造魔銃剣士になりうるだろうか。
自分の才能におごりすぎてはいないか。
ミラーは、色々な可能性を考えあぐねた。
三十分ほどこうして悩み苦しんだあと、ミラーは、答えを出した。
「が、こんな怪物だの化け物といわれて裏道を歩く人生とはおさらばしたい。そしてオレは想造魔銃剣士になり、オレに唯一心を許してくれたフアンズと同じ舞台に立ちたい。それで不幸になるのなら、それまでだ。YESだ…」
「そうか、君がそう決めたのなら反論の意見を挟むのはよそう。よし、関門突破だ。みっつの関門を突破した君を、鉄仮面の所有者として認めよう」
謎の声がそういうと、ミラーのいた部屋は消えて、気がつくと、彼は草っ原にいた。
目の前には鉄仮面だけが残っていた。
「…この部屋も幻影だったとは…いやはや鉄仮面の作り出した世界は凄まじい。オレの幻影。部屋、そして案内役の声まで…」
鉄仮面を手にとると、すかさずミラーは、それをかぶった…。
「フアンズ、君が待つ頂にようやくいける! 持っててくれよ!」
そして、ミラーの目標になっているのは知らずのんきなフアンズは…。
「へへーんだ。何が公務員だ!! 安定しあ道に逃げ隠れやがって! オレは想造魔銃剣士になるんだもん! ちまちま働くノラスコなんて、上から見てやる」
これがあれほどの実力者であるミラーが評価するフアンズなの?
何か思い違いじゃないの?
「よし! 降りてこい。フアンズ。久々に勝負だ」
「あら、あたしの取り合いで決闘。まあ美少女も罪づくりねえ」
「いや、誰も君を求めて争っていないから」




