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最後の質問

「悪意に体を占領された者の怖さを忘れたか?」

「それがなんだ。悪の手を借りたとして、想造魔銃剣士に勝てるわけがない」

「怪物と疎まれた屈辱を忘れた、その甘さに漬け込ませてもらう」

 そういうと実体のあるミラーは、突然、自分で自分の首を締め始めた。

「どうした? 自分の無力さを憂い、自害の道を選んだのか?」

「ぐぐぐ…。違うよ…その方法すら忘却したか…。いつもは、首の辺りに固まっている悪意を体全体に流し込んいるんだ。それによって。オレは悪魔に体を売り払う…」

 実体のあるミラーの顔つきが変わった。髪の毛が逆立ち、目がつり上がり、顔は真っ青に硬直している。

 そして、全身に駆け巡った悪意は、実体のあるミラーの素質にブレーキをかけていたタガを外した。

 これによって、尋常でないスピードとパワーを獲得した実体のあるミラーを捕まえると、まばたきよりも早いリズムでパンチとキックの雨を食らわせる。

 想造魔銃剣士たる幻影のミラーも、この攻撃の速さにはなすすべがない。

「はあはあ、鉄仮面に悪意を押し込んで、想造魔銃剣士になったオレの幻影…。これがお前の捨てた力のヤバさだ…。ぐぐぐ」

 実体のあるミラーは悪魔に乗っ取られる寸前だ。

「まずい、このままこの状態を続けると…。元のオレに戻れない…」

 最後の魔力を振り絞り、

「火炎魔法ボルケス」

 を自らの全身に唱えて、悪意を燃やし尽くした。焼かれた悪意は、一点にとどまることができず、拡散した状態から元の一点に戻っていた。

「はあはあ。しかし、全身に振りまいた悪意を戻す度に、全身を焼き払う必要があるなんて、骨の折れる話だ…」

 実体のあるミラーは、幻影のミラーの息を確認する。鼻と口に手のひらをあてると、まだ呼吸をしていることが分かる。

「今のオレは想造魔銃剣士じゃない。お前のように回復魔法をかけて、逆転を許されるなど、馬鹿なマネはしない…」

 幻影のミラーの腹を蹴り上げると、その反動で浮いた幻影のミラーの首を手刀ではねる。

「首と胴体を分離すれば、回復魔法どころじゃないだろう」

 絶命させるだけでは気がすまず、首をはねるこの非情さ、しかも自分自身の幻影の首である。

 これがミラーに出会うものすべてが感じる、どす黒い悪意の正体だ。彼にまとわりつく悪意は、目的遂行に手段など選ばない。

 

 首と胴体が分離された幻影が霧に包まれて消える。

「さあ、オレの勝利だ。最後の関門をよこせ」

「これが君の眠れる素質の正体か。この力を捨ててまで、想造魔銃剣士になりたいのか?」

 謎の声の詰問にミラーは即答する。

「ああ、死ぬまで、疎外感に悩まされるなんて、まっぴらごめんだ。オレは想造魔銃剣士になって、まっとうな人生を送りたいんだ」

「そうか。怪物だの化け物だのいわれる日々はさぞつらかろう…。だが、それも最後の関門をクリアできたらの話だ…。さあミラー君、君は第三の関門をくぐり抜けれるかなな?」

 第一関門は巨大妖獣。第二関門は想造魔銃剣士になった自分自身。

 最後の関門となれば、これ以上の難関が待ち受けているはずだ。

 ミラーもその覚悟ができている。

「さて、今度は何を繰り出してくれるのか。楽しみでもあり恐怖も感じるぜ。なにせ、こっちは魔力が尽きて、悪意に体を売るという最終兵器も披露済みだからな…」

 しかし、ミラーは肩透かしを喰らう。謎の声が用意した最後の関門の正体は…。

「安心してくれ。最後の関門は体力も魔力も使わない」

「なんだって? 頭でも使わせる気か?」

「そんなようなものかな」

「知能テストか?」

「いやいや心理テスト、いや適性テストの一種とでもいおうか」

「適性テスト?」

「それも二択。君に用意された選択肢は、YESかNOのいずれかだ」

「確率は五割か…。これは最後の関門にしちゃあ高い確率だな」

「いや十割かな…。ミラー君は、YESと答えるだけで、確実に関門を突破、念願の鉄仮面の保有者となる」

「まわりくどい言い方しやがって…。ひっかけか何かだろ? 罠があるはずだ」

「いやそこには何の裏も仕掛けもない。鉄仮面が欲しいのなら、君はイエスと答えるだけでいいんだ」

「分かったよ。四の五の言わず、その質問とやらをしてみろ。それからじっくと判断してやる」

「ならいくよ。第三の関門…。『あたなは、鉄仮面の保有者になりたいですか?』 『なりたいならYES。それ以外ならNOとお答えください』…」



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