第2関門
「さあてと、どんな攻撃を見せてくれるかな」
実体のあるミラーは、補助魔法の選択に苦慮してた。
「相手は、なにせ、オレの幻影だ。幻影に、スピードを鈍らせる魔法や目をくらます魔法が聞くか? 霧のように突き抜けたら、魔力の無駄だ。ならばこれしかない」
「どうした仕掛けてこないのか」
「四次元魔法『マルダ』」
実体のあるミラーは、マルダを唱えた。この魔法は、唱えたモノを四次元世界に誘うものだ。四次元にいるものは、空間を歪めて進めることができる。
例えば、三次元の世界にいるものは、AからCに行くまで、Bを通過する必要があるが、四次元に誘われたモノは、Bを通らずも、Cに行くことができる。
つまり三次元にいるものに比べて、四次元に誘われたものは、素早く空間を移動できるわけだ。
幻影のミラーに比べて、レベルが落ち、しかも手負いの実体のあるミラーは、これで五分の動きができるようになったのだ。
実体のあるミラーは、さらなる補助魔法を重ねる。
「二次元魔法『ジト』」
さらに、幻影のミラーに対して、二次元魔法をかけた。四次元魔法が、空間を自由に動きが取れる魔法なら、この二次元魔法は、かけた相手を二次元上の動きに限定させる魔法。
つまり、かけられたモノは、平面上の動きに限定される。
「これで、五分どころか、手負いのオレの動きが上回る…」
幻影のミラーは、線上の動きに限られるため、自由に動ける実体のあるミラーを捉えきれない。
実体のあるミラーはぐるぐると回り、幻影のミラーを惑わし、必死に攻撃のしどころを伺う。
「後ろをとった。いまだ!!」
背後をとった実体のあるミラーは、残った魔力のすべてを注ぎ込み、魔法剣『ラローシュ』に火炎魔法『ボルケス』を重ねあわせて火炎魔法剣の合わせ技で、一気に形勢逆転を狙う。
動きに限られる幻影のミラーは、防御の遅れを取り、真っ向から火炎魔法剣の餌食になる。手応え十分。
「よしやった…!!」
背中を切られた幻影のミラーは、炎にまみれる。
「オレがオレを切るのは、気が引けるが、これも想造魔銃剣士のためだ。許せ…」
勝利を確信した実体のあるミラー。
しかし謎の声は、関門突破をアナウンスしない。
「どうした、オレは勝ったんだぞ」
「残念ながら、相手は想造魔銃剣士だ。まだわからないよ」
謎の声がいうように、幻影のミラーはま敗れ去ってはいなかった。
「エル・ホランド」
回復魔法の上位バージョンを唱えると、すべての傷が癒えて、幻影のミラーは何事もなかったかのように、立ち上がる。
「ふう…結構な手応えだった」
「くそ…。これが想造魔銃剣士の体力、魔力が…。一筋縄にいかないぜ」
「そうだ、君とオレとはレベルが違う」
これで魔力が底をついた実体のあるミラーは、もう為す術がない。
「一撃に止めをさせなかったのが、命取りだったね」
幻影のミラーは、手のひらを実体のあるミラーに向けた。
「想造魔銃剣士までになると、光の魔法『マクラウス』は目潰しじゃすまないんだ」
「何…」
「光の魔法上位バージョン『マクラウスプラッシュ』
手のひらから、部屋一面に広がる光が放たれる。四次元移動のできる実体のあるミラーもこれは逃げ切れない。
「光の量が違えば、当然、熱量も違う。君は、太陽につっこんだ特攻隊のように、熱さにほだされる」
まともに受けた実体のあるミラーは、致命的なダメージを受ける。
「これが君とオレとの差。死にやしないから、そこは安心してくれ…」
うつぶせになって倒れる実体のあるミラーであるが、幻影のミラーがいうとおり死んではいないようだ。
「た、助けてくれ…。く、苦しい。君は想造魔銃剣士だろ? 苦しんでいるものを放っておけるのか?」
「命乞いか…。他でもない自分の頼みだ…。聞いてやろうか。それも人々の上に立つ想造魔銃剣士の役目…。エル・ホランド」
回復魔法によって、実体のあるミラーはみるみるうちに回復していく。
「た、助かった…。が、その優しさが命取りだ。さっきもいった通り、戦場は悪いヤツが生き残る」
立ち上がった実体のあるミラーは諦めず、ファイティングポーズをとる。
「無駄だ。いくらやっても結果は同じ…」
「どうかな…。君は怪物であったかつての自分の恐ろしさを忘れている…」




